無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗

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平和な世界へ...

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 視界が晴れると、浜辺には全身がズタボロになった魔王アントニンの姿があった。手足はじれ、酷い有様だ。あの最強の魔法だったんだ、致命傷を与えられたようだな。


「……ぐふぁぁっ」


 血を吐き出し、今にも死にそうだ。
 あれだけの猛攻撃を受けたんだ……無事タダじゃ済まない。だが、まだ息はある。コイツの息の根を止めねば、世界は滅ぶ。だから……。


「おい……アントニン」
「……ラ、ラスティ。この父である私を殺すのか……?」
「ああ、殺す。お前はこの世界を滅ぼす魔王だからな。俺は、今のこの世界が気にっているんだ。それを破壊されては困るし、大切な人を奪うのは言語道断だ」

 吐血しながら、アントニンは愉快そうに笑う。まだそんな笑う余裕があるのか。

「い、いいのか……?」
「何がだ」
「この私を殺しても、次はお前の兄・ワーグナーやブラームス、大神官アルミダが……その次はまた別の誰かが世界を滅ぼそうとするだろう」

「その時は俺が止めるだけだ。……もう消えてくれ、魔王」

「く、クハハハ……。まあいい、中々楽しい皇帝生活だった。後は息子たちに任せよう。そうだ、私でなくとも誰かが世界の破壊を成す……! 世界聖書の運命が“滅亡”である以上な。……くくく。さらばだゴミ共…………!」


 トドメを刺す前にアントニンは絶命した。黒いちりとなり、肉体が消滅していく。こいつは本当に人間じゃなかったんだ。ただの怪物だ。同情も何もできない。

 全てが終わり、溜息ためいきを吐いていると――


「ラスティさん!!」


 スコルが飛び込んで来た。
 俺はぎゅっと抱きしめて迎えた。
 ああ、このぬくもりを待っていた。


「終わったよ、スコル。俺はもう島を離れない、スコルの前からもね。ゆっくり暮らそう」
「……はい。ずっと一緒です」


 抱きしめ合っていると、ルドミラ達が合流してきた。


「お熱いところ申し訳ないです。この度は、ご迷惑をお掛けしました」
「いや、いいんだ。俺としても親父……アントニンとは決着を付けたかった。まさか魔王そのものだとは思わなかったけどな」

「ですが、貴方の大切な執事が……」


 そうだ、アルフレッドがやられちまった。俺のせいなんだ……俺の。


 冷たくなったアルフレッドの元へ向かう。今はただ安らかに眠っている。立派な墓を作ろう。それが俺にできる唯一のとむらいだ。


 ◆


 一週間後。
 家や防衛設備を立て直し、島のレベルも一気に引き上げた。今や、一万人は余裕で暮らせる規模となってしまった。頑張ったな、俺。

「家がたくさん増えたなぁ。あの無人島だった場所に街並みができるなんて」
「そうですね、ラスティさん。ボロディンや他の国からの移住者も増えて……なんだか活気が増えました。ギルドとかアイテムショップもあんなに増えて、凄いです」

 そう、ボロディンや共和国、滅んだ連合国ニールセンの生存者たちを迎いれていた。そのせいか人口は一万人に迫る勢いになっていた。

 俺はついに、一国の主として構えていたのだ。

 信頼できる仲間も随分と増えた。

 スコル、ハヴァマール、ストレルカは当然として、聖魔伝説の人達であるルドミラとエドゥアルド、テオドールを迎えた。

 改めて島の事を考えていると、ハヴァマールは向かってきた。


「兄上、兄上、大変だ!」
「どうした、ハヴァマール」
「帝国で大革命が起きて……第一、第二皇子が捕らえられたそうだ! 理由は、連合国ニールセンへの戦争犯罪という事だ。一週間後には処刑されると風の噂が!」

「な、なんだって……まあ、魔王の息子と判明したんだ。そうなるわな」


 実の兄でもなかったわけだし、同情もできない。ヤツ等はやりすぎた。周辺諸国を巻き込み、やりたい放題やったツケが回ってきたんだ。

 これから、帝室を失った帝国がどうなっていくか見極める必要があるな。うんうんと納得していると、今度はルドミラがやって来た。


「ラスティくん、大変です!」
「君もか、ルドミラ」
「ええ、エルフの国・ボロディンです」
「ボロディンで何かあったの?」

「はい。ブラックアウル……『フクロウ』によれば、大神官アルミダが皇帝と繋がっていたと判明し、クロード共々失脚したようです」

 ――そうか、俺が流した情報が役立ったな。

 アントニンを倒した後、ボロディンに『アルミダと魔王』の情報を流しておいた。ユーモレスク宮殿の方はともかく、一般のエルフは結束力があり、団結力もあった。エルフは、裏切りを許さなかった。

 その結果、直ぐにアルミダは打倒されたようだ。帝国のアントニン皇帝と同じ、人々を騙した罪だ。秘密裏に繋がっていたのだから仕方ない。


「そうか、これでボロディンも平和を取り戻したわけだ」


 そうまとめると、スコルは安心していた。


「ありがとうございます、ラスティさん」
「お礼を言われるような事は何もしていないよ」
「いえ、情報を流してボロディンを救ってくれました。だから、ありがとうなんです」


 俺の手を取るスコルは、素敵な笑顔を向けてくれた。俺も同じように笑顔を返す。
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