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魔王アントニン

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 魔王アントニンは、俺の聖槍をあの魔王の手で受け止めた。だが、本気で投げたので凄まじい威力で手を破壊。そのままアントニンへ激突しようとしたが、本が防御ガードした。厄介な。


「おのれ、ラスティ! ここまでやるとはな。だが、ドヴォルザークの魔手は何度でも再生召喚可能だ。この世界聖書――いや“破壊の書”がある限りな!!」

「面倒な手だな」

 警戒していると『破壊の書』からまた腕が現れた。あの本が本体・・だ。潰さないと何度でも出て来るわけか――!!

 ならば本を潰すしか……いや、あの狂暴な手をどう掻い潜る? 近づけば、一瞬で握りつぶされるだろう。どうする? 手方を伺っていると、ルドミラが声を掛けてきた。

「前衛は任せて下さい、ラスティくん。勇者としてこの私が魔王を止めましょう。それに、そもそもの責務です。ですから、隙があれば、聖槍を投げて欲しいのです」

「ルドミラ……分かった、頼む」

 お願いすると、剣を抜いてルドミラは駆けだして行った。あの桃色の剣はいったい……。宝石のように美しいな。まるで神秘がそのまま具現化したような武器だった。

「ついに始まってしまいましたか」
「エドゥ、傷は大丈夫か」
「ええ、猛攻撃を食らい、エインヘリャルの再生速度が追い付いていなかったんです。今は、スコル様からヒールを受けて回復しました」

「良かった、無事そうで」

「ええ、それより、テオドールも久しぶりですね」

 ゆっくりと視線を移すエドゥ。
 そんな淡い眼差しを向けられ、テオドールは少々焦っていた。

「おいおい、エドゥ。君、性格が変わりすぎだろう。以前は、キャピキャピしていたじゃないか」

「なんの事ですか? 自分はずっとこんな感じです」
「そ、そうか。まあいい、それより魔王をここで抑え込まねば、世界が滅亡する。私のペットたちを召喚しよう」

 指を鳴らすテオドール。すると、地面からイノシシモンスターの『セーフリームニル』が百体以上現れた。マジかよ! 凄い数だな。

 セーフリームニルが一気に突撃を始める。一方、ルドミラは『破壊の書』から現れる魔王の手を何度何度も切り刻んでいた。しかし、際限なく召喚される。あの書物の魔力は無限大か!?


「無駄だ、ルドミラ! その手を何度潰しても蘇る。本を破壊しない限り永久にな!」
「そんな事は承知の上だ。だが、テオドールの召喚したセーフリームニルが魔王おまえを襲う」

「――なにッ!? こ、このイノシシ共はいったい!!」


 猪突ちょとつ猛進もうしんしていくイノシシの群れ。この数を相手にできまい。


「ラスティさん、今しかないんじゃないですか!」
「スコル、そうだな。これが最大のチャンスだ」


 俺は聖槍を、スコルは大魔法を準備した。


「お待ち下さい、スコルさん」
「ストレルカさん、どうしたんですか」
「確か、スコルさん……大魔法を使えるようになったのですよね?」
「ええ」
「その中には水属性魔法も?」
「はい、あります」
「なら、わたくしと手を繋ぎなさい。水属性魔法に限り、オケアノスの力で十倍に引き上げられますから」


 なんと、そんな方法があったのか!


「それなら、余も同じ力を持つ。余の場合は風属性だけどな」


 ハヴァマールにもそんな力があったのかよ!


「ハヴァマール、ストレルカも頼む」
「ええ、あの男だけは止めなばなりません。力をお貸ししますわ」


 スコルは、ハヴァマールとストレルカと手を繋いだ。


「一緒に参りましょう、ラスティさん」
「ああ、力を合わせれば魔王を滅ぼせる」


 一歩前へ出て、スコルは火属性『ソーラーフレア』、水属性『メイルシュトローム』、風属性『テンペスト』、地属性『アースクエイク』を放った。続いて俺は聖槍・グングニルを最後の力を振り絞って投げた――。


「馬鹿な、こんな雑魚共に負けるのか、私はあああああああああ……!!!」


 一斉砲撃に魔王アントニンはひるむ。ついに魔力の塊がヤツへ到達。世界聖書――いや、破壊の書共々巻き込み、大爆発を起こした。


「これが俺たちの力だ」
「クソ、クソォォオオオオオオオオオオ……!!!」


 浜辺はまぶしいほどの白い光に包まれた。なにも、見えない。視界ゼロ。膨大な魔力がずっと続いて、真っ白な世界になった――。
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