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世界を滅ぼす『世界聖書』

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 ストレルカの船を降り、スコルを連れてそのまま拠点へ向かう。ここから、そこそこ距離があるから、急いで向かわないと――。


「いったい何が……」
「そうだ! ラスティさん、支援魔法のキリエとグローリアを掛けますね。これでステータスと移動速度がアップしますから」

 手を向け、魔法を掛けてくれるスコル。光に包まれると、能力値と共に移動速度も上がった。よし、これなら直ぐに辿たどり着けるぞ。


 走って向かうと、拠点が見えてきた。


 家は破壊され、滅茶苦茶になっていた。……くそ、一体誰がこんな酷い事を!


「……アルフレッド! エドゥ!」


 返事はない。こんな瓦礫がれきの山では、生存の有無も確認しようがない。どうすればいい……! 


 焦っていると、浜の方角に複数の気配を感じた。向こうか。


 慎重に進んでいくと、そこには恐ろしい光景が広がっていた。


「ラスティさん……あれって……」
「……なっ!」


 浜に倒れているアルフレッド。血塗れで瀕死ひんしじゃないか。アルフレッドを守るようにエドゥは、バリアのような魔法を展開していたが、ギリギリで持ちこたえていた。


「アルフレッドさんが酷い事に! わたし、治療しに行ってきます」
「ま、待て。今飛び出すのは危険だ」
「で、でも」


 俺は慌てるスコルを止める。


 いったい、誰がこんな事を……!


 視線を移すと、そこには――


「――なッ。嘘だろ……なぜこんな所に親父・・が……!!」


 あの無駄に筋肉質の白髪男は皇帝陛下・アントニンで相違ない。だが、周囲に船らしきものはない。護衛もつけず、たった一人で攻め込んできたっていうのかよ。馬鹿な……!

 親父の周囲には、一冊の本が浮遊していた。その本から、大魔法が飛び出てはアルフレッドとエドゥを狙っていた。しかし、エドゥのバリアが辛うじて防御。いつまで持つか分からないな。


「どうしましょう、ラスティさん」
「俺がいく。スコルは、二人の回復を頼む」
「は、はい……分かりました」


 俺は飛び出て、親父の前に立つ。


「おい、親父! 何をしてやがる!!」
「……姿を見せないと思ったら、ようやく現れたか我が息子よ」

「ちょうど出掛けていたんだよ。ていうか、人様の島を襲っているんじゃねぇよ!!」


 親父は険しい表情のまま俺をにらむ。いちいち、目つきが悪いな。

「お前の島? 貴様は何を勘違いしているのだ。この島は、我が『ドヴォルザーク帝国』のものだ」
「なわけねぇだろボケ!! つーか、とっとと帰れ」

「そうはいかん。ラスティ、貴様を連れ帰り、ドヴォルザーク帝国に栄光をもたらす。帝国は絶対なのだ。ヒエラルキーの頂点でなければならない。故にラスティ、貴様の存在が必要だ。手足を潰してでも連れ帰る」


 殺意を俺に向ける親父。
 ふざけやがって……!!

 しかも、アルフレッドをあんなに傷つけて……絶対に許さねえ!!


「親父、アルフレッドに何をした」
「あのゴミか。ああ、しつこいでな……我が『世界聖書』で痛めつけてやった。なぁに、元右腕だ……寛大な慈悲じひは与えたつもりだぞ。フハハハハ!!」


 親父は、血の通わない笑い声を上げる。こいつは……悪魔だ。


「最後に聞かせろ。なんでたった一人で直接攻めてきた」

「第一皇子ワーグナー、第二皇子ブラームスも使えない息子だった。貴様と同じ、無能だった・・・・・のだよ。さすがに呆れ果てた……ならば、もう直接、私が出向くしかなかろうて。幸い、連合国ニールセンを滅ぼしたところ。
 覚醒には至っておらんが、十分な力を持つ。恐らく、この島の破壊なら容易たやすいだろう」


「世界を……滅ぼす気か!!」


「そうだとも。私の目的はただひとつ。破壊と再生だ!! 世界は、ドヴォルザーク帝国の支配下にあるべきなのだ。だから、エルフの国ボロディンの大神官アルミダと手を組み、ニールセンを滅ぼした」

「なんだと……」

「残るは、共和国とエルフの国……アルミダには悪いと思うが、エルフの国も消えて貰う」


「親父、てめええええッ!!!」



 俺は、もうブチ切れた。親父を生かしちゃだめだ。こいつだけは俺が倒さなければならない敵だ。帝国がある以上、世界は不幸になる。

 絶対に、ぶっ潰してやる……!!
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