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オーディンの子
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目の前に現れた黒髪の男。
学者――というか、錬金術師の服装が目立つ。細身高身長の糸目。……あれ、見えているのかな。
どうやら、ハーフエルフのようだな。
「テオドール様ではありませんか」
「どうも、スコル様。風の噂で戻られたと聞き及んでおりますが、本当だったとは」
「はい、ラスティさんに助けられたおかげです」
「ほう、第三皇子の助けと。それはそれは運命ですかな」
細い目で俺を見るテオドール。
「テオドールさん、俺は農業とか学びに来たんです。頼れそうな人が貴方だったんですが……ルドミラとエドゥアルドの仲間ですよね」
「おぉ、彼女たちを御存知とは! 二人とも元気ですか?」
「エドゥは、俺の島にいるんです。ルドミラは来る予定ですね」
「なんと! そんな話になっていたとは……世界聖書に動きが見られるようですね。今や、世界は傾きつつありますし、悪い方向に向かっている。世界は再び滅びの道へ向かうでしょう」
何気にとんでもない事を言っているな、この人。伝説の人物だけあって説得力があるな。本当っぽいぞ。
「破滅を選んでいるのは『帝国』だ。ならば、ルドミラ、エドゥ、テオドールで止めんかい!」
話を近くで聞いていたハヴァマールが介入してくる。……って、いいのかよ。一応、魔王なんだろ。――いや、今更か。
「おや、猫耳の可愛いお嬢さん。む……? これはこれは、驚きました。三百年振りじゃないですか! 我が宿敵、オーディン殿!」
「にゃ! 手、手を握るな気色悪い!!」
テオドールは、ハヴァマールの手をがっつり握っていた。お~い、敵対関係はどこいった!? てか、なんか距離感近くないか。
――って、オーディン?
初めて聞く名称だな。
「オーディン殿、再び聖魔大戦を始めるのですか!?」
「手を放せ、馬鹿者! 余は、ハヴァマールの名を父・オーディンから受け継いだだけ! 父はとっくにこの世から消えとるわいッ」
「おや……そうでしたか。それは非常に残念です。貴女の父も、同じような外見をしておられましたし――しかし、娘がいたとは」
「兄妹だ」
「はい?」
「余とラスティこそがオーディンの子だ。その昔、父は帝国に裏切られ……子を奪われ、魔王の名を着せられた。それが真実だ!」
そ、そうだったのか。俺ってオーディンの息子だったの!? ていうか、オーディンって誰だよ! ……ああ、そうか道理でクソ兄貴達と似てないわけだわ。性格とか。
なんとなく、聖魔大戦の全容が見えて来たかもしれない。
「ええ、かつてのオーディンは世界を豊かにした。ひとつの国を作り、人類の王だった。ですが、それは昔の話。人々は独立を選択し、ドヴォルザーク帝国など数々の国を誕生させた。その時点で神は不要になった……。だから、オーディンは魔王になった。そうして現在があるのです」
「よし、よく分かった。貴様を倒す」
珍しく怒るハヴァマールは、聖槍・グングニルを生成して構えていた。おいおい、ブチギレているじゃないか。これは兄として止めないと。
「やめんかい、ハヴァマール」
脳天にチョップを食らわせた。
「うにゃ……! あ、兄上……コヤツは敵だぞ」
「いや、俺にはそうは思えないな。エドゥやルドミラに敵対心がないし、テオドールもそうだ。まったく敵意を感じない。お前を煽って楽しんでいるだけだ」
「がっ……」
ふにゃーんと肩を落とすハヴァマール。気持ちは分からんでもないが。とにかく、今は聖魔大戦がどうとか置いておく。島の発展には、テオドールの力が必要だ。
学者――というか、錬金術師の服装が目立つ。細身高身長の糸目。……あれ、見えているのかな。
どうやら、ハーフエルフのようだな。
「テオドール様ではありませんか」
「どうも、スコル様。風の噂で戻られたと聞き及んでおりますが、本当だったとは」
「はい、ラスティさんに助けられたおかげです」
「ほう、第三皇子の助けと。それはそれは運命ですかな」
細い目で俺を見るテオドール。
「テオドールさん、俺は農業とか学びに来たんです。頼れそうな人が貴方だったんですが……ルドミラとエドゥアルドの仲間ですよね」
「おぉ、彼女たちを御存知とは! 二人とも元気ですか?」
「エドゥは、俺の島にいるんです。ルドミラは来る予定ですね」
「なんと! そんな話になっていたとは……世界聖書に動きが見られるようですね。今や、世界は傾きつつありますし、悪い方向に向かっている。世界は再び滅びの道へ向かうでしょう」
何気にとんでもない事を言っているな、この人。伝説の人物だけあって説得力があるな。本当っぽいぞ。
「破滅を選んでいるのは『帝国』だ。ならば、ルドミラ、エドゥ、テオドールで止めんかい!」
話を近くで聞いていたハヴァマールが介入してくる。……って、いいのかよ。一応、魔王なんだろ。――いや、今更か。
「おや、猫耳の可愛いお嬢さん。む……? これはこれは、驚きました。三百年振りじゃないですか! 我が宿敵、オーディン殿!」
「にゃ! 手、手を握るな気色悪い!!」
テオドールは、ハヴァマールの手をがっつり握っていた。お~い、敵対関係はどこいった!? てか、なんか距離感近くないか。
――って、オーディン?
初めて聞く名称だな。
「オーディン殿、再び聖魔大戦を始めるのですか!?」
「手を放せ、馬鹿者! 余は、ハヴァマールの名を父・オーディンから受け継いだだけ! 父はとっくにこの世から消えとるわいッ」
「おや……そうでしたか。それは非常に残念です。貴女の父も、同じような外見をしておられましたし――しかし、娘がいたとは」
「兄妹だ」
「はい?」
「余とラスティこそがオーディンの子だ。その昔、父は帝国に裏切られ……子を奪われ、魔王の名を着せられた。それが真実だ!」
そ、そうだったのか。俺ってオーディンの息子だったの!? ていうか、オーディンって誰だよ! ……ああ、そうか道理でクソ兄貴達と似てないわけだわ。性格とか。
なんとなく、聖魔大戦の全容が見えて来たかもしれない。
「ええ、かつてのオーディンは世界を豊かにした。ひとつの国を作り、人類の王だった。ですが、それは昔の話。人々は独立を選択し、ドヴォルザーク帝国など数々の国を誕生させた。その時点で神は不要になった……。だから、オーディンは魔王になった。そうして現在があるのです」
「よし、よく分かった。貴様を倒す」
珍しく怒るハヴァマールは、聖槍・グングニルを生成して構えていた。おいおい、ブチギレているじゃないか。これは兄として止めないと。
「やめんかい、ハヴァマール」
脳天にチョップを食らわせた。
「うにゃ……! あ、兄上……コヤツは敵だぞ」
「いや、俺にはそうは思えないな。エドゥやルドミラに敵対心がないし、テオドールもそうだ。まったく敵意を感じない。お前を煽って楽しんでいるだけだ」
「がっ……」
ふにゃーんと肩を落とすハヴァマール。気持ちは分からんでもないが。とにかく、今は聖魔大戦がどうとか置いておく。島の発展には、テオドールの力が必要だ。
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