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上級騎士のエルフ

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 街に向かって歩き出すと、クロードが行く手をはばむ。しつこいな。

「ま……待て!」
「なんだ、俺たちは忙しいんだ。そこをどいてくれ」
「そうはいかない! そもそも、貴様の名前も聞いていない。教えろ」

「……俺はラスティ。もういいか」


 面倒すぎて俺は先を急ぎたかった。周りのエルフ達も何事かと集まっているしな。元々大騒ぎなのに、更に大事になろうとしていた。


「そうか、ラスティ! 貴様に決闘を申し込む!!」
「はぁ? 決闘だって?」
「そうだ、スコル様を賭けて勝負しろ! こっちは金貨を百枚出す!」

 あー、だるい。
 スコルを賞品にするとか最低なヤツだ。金貨も百枚じゃ、たかだか一千万ベル。釣り合ってもいないし、釣り合う額などこの世に存在しない。


「やなこった。俺は勝負とか興味ないし、スコルの意思を尊重している」
「ラスティさん……嬉しいっ」


 そうだ、勝負とか金の問題ではない。スコルは俺の大切な仲間。駆け引きの道具とかじゃない。そんな安易に提案してくるクロードを軽蔑けいべつする。


「馬鹿な! 金貨百枚だぞ!」
「お前、本気で言ってるのか。周りを見てみろ」

「なんだと……? ん? え? な、なんでそんな白い目で俺を見る!! 悪いのはこのラスティだろうが!! コイツは、スコル様を誘拐し連れ去った重罪人! 対して俺はユーモレスク宮殿に仕える上級騎士だぞ。俺の方が正しいんだぞ!!」


 し~ん、と場は静まり返っていた。空気が重苦しい。ほとんどのエルフがクロードの態度に呆れかえっていた。分かるよ、その気持ち。それに、大方のエルフは常識人だった。となると、このクロードが民衆を煽っていた――と。


「もう諦めろ、クロード」
「ふ、ふざけるな! ならば力づくで奪い取るまでだ!」

 敵意を剥きだし、剣を向けてくるクロード。それがスコルに向けられていると同義と受け取られ、周囲の反感を買ってしまった。


「おい、クロード!!」「何してやがる!!」「スコル様にケガさせたらぶっ殺すぞ!」「許せねえ!!」「聖女様を傷つける気か!!」「この罰当たりが!!」「国の象徴だぞ!!」「なにが上級騎士だ!!」「やっちまええ!!」


 ん!?

 急にブチギレたエルフ達がクロードに群がる。そして、殴るわ蹴るわでボコボコにされていた。……あ~あ。

 もう止められない。
 激しい砂埃が舞うほど、徹底的にボコられたクロードはズタボロになって倒れていた。身ぐるみもがされて……無惨。ピクピクと痙攣けいれんし、死にかけている。……アホだ、こいつ。


「…………ぐ、ぉ」


「じゃあな、クロード」


 合掌して、俺はこの場を去った。


 ◆


 街を歩くと、なぜか美人の女性エルフから声を掛けられまくった。


「ラスティ様ですよね!」「さきほど、あのクロードを倒したという」「かっこいいー!」「あのクロードって嫌な奴だったんです」「アイツ、十人以上の女性と関係を持っていたんですって」「うわ、サイテー」「クズよクズ」「それに比べて、ラスティ様はスコル様を身を呈して守られていました」「ま、まだチャンスありますよね!?」


 ど、どうしよう……囲まれて動けないや。幸い、スコルだけは俺に抱きついている状況。ていうか、スコルがいるのにお構いなしか! ちょっと嬉しいけど。

 それにしても、どうしてこんなモテモテな状況に? とにかく、これでは宿屋にすら辿り着けない。ハヴァマールやストレルカにも悪いし、脱出しよう。


「悪い、君達。俺はボロディンを回りたいから、また今度ね」


「は、はい……!」「そ、そうですね、お邪魔しちゃ悪いですよね」「絶対、ラスティ様を振り向かせて見せます」「よければ、私が案内しますよ?」「お姉さんが良い事を教えてあげるからね~」「またね、ラスティ様ぁ~」


 俺は、手を振って女の子達と別れた。こんな状況だったにも関わらず、スコルは余裕の笑み。良かった、不機嫌になっていなくて。


「スコル、怒ってない?」
「はい、怒っていないですよ。あ~、女の子に話しかけられていた事ですか? 構いませんよ、それくらい。だって、それほどラスティさんが魅力的って事ですもん。むしろ、誇らしいです」

 めっちゃ良い笑顔で言っていた。かたわらで聞いていたハヴァマールがギョッとしていたけど。

「良かったな、兄上」
「な、なにがだ?」
「あー…。そうだった……兄上は、超どころか極鈍感だった」

 よく分からんけど先へ進み、宮殿を目指そう。
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