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はじめての船旅

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 着替えを終えたスコルが戻って来た。
 なんだか、いつもと雰囲気が違う。当然だ、プレゼントしたワンピースを着ているのだから、印象もガラリと変わった。

 なんて清楚せいそ
 なんて可愛らしい。

 花柄のワンピースが女の子らしさを引き立てていた。なんて可憐。天使。エルフの民族衣装もそりゃあ可愛かったけど、これは段違い。


「…………おぉ」


 俺は思わず感嘆かんたんする。
 更に、万感ばんかんの思いで拍手をした。

「これは……素晴らしい。一輪の花のようで、同性である余ですら胸がキュンキュンするのだ」

 ハヴァマールもスコルの姿に目を輝かせていた。それはまるで羨望の眼差し。もしかして、ハヴァマールもああいう女の子らしい格好をしたいのだろうか。


「な、なんだか恥ずかしいですね」
「いや、似合っているよ、スコル。うん、最強に可愛い」
「えへへ……。ラスティさん、そんな褒めないで下さい。照れちゃいます」

 既に照れているスコル。うん、これは作った甲斐かいがあったなぁ。ハヴァマールの裁縫スキルにも感謝だ。


 ◆


 さて、ようやく全員集合。
 朝食を済ませ、リビングに全員を集めた。

「みんな、今日は出発の日だ。はじめての船旅だ。予定通り、俺とスコル、ハヴァマールでエルフの国へ向かう。ブレアは共和国へ連れていく。なので、残ったアルフレッドとエドゥは島の留守番を頼む」

 まずは俺は、残留組のアルフレッドとエドゥにお願いした。

「ええ、もちろんです。何があろうとも島を守り抜きます」
「頼んだぞ、アルフレッド。一応、防衛設備の権限を付与しておく」


 島の防衛設備に関して、特定のメンバーに発動権限を譲渡・付与が出来た。俺が認めた者は、防衛設備が扱えるようになるのだ。例えば、ボウガンだ。あれを他人も扱えるようになる。今回は、一番信頼できるアルフレッドに一任した。


「ありがとうございます、ラスティ様。大賢者エドゥアルド様のお力も拝借はいしゃくしますので、ご期待には添えられるかと」
「ああ。そういうわけだ、エドゥ」

 俺は視線をエドゥに移す。

「そうでした。わたしには“結界”の力もあるんです」
「結界?」
「ええ、大出力故に三日間しか持たないですが、しばらくは外敵から島を守れますよ」
「すげぇな、それ。つまり、バリアか」

 こくっとエドゥはうなずく。


 [ルミナス][Lv.7]
 [補助スキル]
 [効果]
  一定の範囲を指定して結界を展開する。物理・魔法攻撃から守護する。認定した敵、モンスターからの侵入を阻む効果もある。ルミナスの耐久値を超えた場合、このスキルは消失する。基本耐久値は30000。発動後、三日間のクールタイムが存在する。


 Level.1 :耐久値 +10000
 Level.2 :耐久値 +10000
 Level.3 :耐久値 +10000
 Level.4 :耐久値 +10000
 Level.5 :耐久値 +10000
 Level.6 :耐久値 +10000
 Level.7 :耐久値 +10000


 そんなスキルまであるとはなぁ。
 ただし、三日か。それまでに戻れればいいんだけど、期限を超える可能性はある。ここからエルフの国まで何日掛かるのかも分かっていないし。けれど、ないよりはマシ。エドゥの力を頼ろう。

「わたしもお守りしますので、ご安心を」
「いつもすまないな」


 二人に島を任せ、俺はスコル達の方へ。


「スコル、ハヴァマール、ブレア、出発だ」


「はい、ラスティさん。ついにボロディンへ行けるんですねっ」

 すっかりワンピース姿が馴染んだスコルは、胸を弾ませる。物理的にも……!


「久しぶりの異国、楽しみだ。ボロディンは料理も美味しいと聞くし」

 珍しくテンションの高いハヴァマールは、猫耳を世話しなく動かしていた。俺もだけど、ハヴァマールも島を出るのは初めて。浮かれる気持ちも理解できる。


「すまないが、グラズノフ共和国ヘ寄っては貰えるんだろうか……」

 そうだった。ブレアの件も片付けないとな。彼女を共和国へ送り届けねば。もちろん、その後は協力関係になってくれるはず。

「もちろんだ、ブレア。君を送るようストレルカに交渉する」
「ありがとう。感謝する」

 普段は毅然きぜんした態度だけど、今のブレアはお姫様っぽい口調で華やかだった。へぇ、ああいう顔も出来るんだな。


 アルフレッドとエドゥに見送られ、家を後にした。最後まで手を振り、しばしの別れとなった。……少しだけ寂しいな。


 浜辺を歩き、ストレルカのテテュス号が停泊しているがけを目指す。モンスターとの遭遇もなく、無事に到着。なんだか順調すぎて逆に怖いな。


「さあ、着いた。後はこの渡橋を行く。スコル、手を」
「ラ、ラスティさん。いいんですかぁ!?」
「え、いいよ。だって転倒したら海へ真っ逆さまだし」
「……は、はい。それでも嬉しいですっ」


 スコルの手を繋ぎ、ついにテテュス号へ乗り込んだ――!
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