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戻ってこないお前が悪い

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 そろそろ食事の時間。
 スコルの様子を見に行こうと台所へ向かうと、アルフレッドが俺を呼び留めた。

「大変です、ラスティ様」
「どうした、なんだか顔色が悪いぞ」
「ええ、気配を感じるのです」
「……そう言われると俺も違和感を感じていた。敵襲か」
「ええ、例の海賊達が戻ってきたのでは?」

 可能性はあるな。ブレアは海賊を雇っていただけのようだし、信頼関係は金貨で担保されていた程度。海賊はやっぱり海賊であり、略奪者なのだろう。

「外の様子を見に行ってくる。アルフレッドは家で待機だ」
「了解しました」


 玄関へ向かうと、ブレアが現れた。


「何かあったのか、ラスティ」
「……多分だが、海賊が再びやって来たようだ」
「なに? 分かるのか?」
「島の主だからな。それに敵の気配に敏感な執事もいる」
「そうか。なら、私も向かおう」
「そうしてくれ。可能なら説得を頼む」


 ブレアを連れ、俺は家から出た。
 頼むから穏便に済むといいんだけどなぁ。


 ◆


 浜辺に着くと、そこには既に上陸した海賊が十五名いた。その中から掻き分けてくるように見覚えのある顔が現れて、俺はビックリした。


「邪魔だ、海賊共! この僕を通せ……! おぉ、いたいた。ラスティ、久しぶりだな」

 金髪のデブっちょの男が俺の名を呼ぶ。身なりは明らかに皇族で、豪華なデザインをしたソンブレロ帽子を被っていた。あんな帽子、どこで手に入れたんだか。

「第二皇子ブラームス……いや、ゴミ兄貴じゃないか」

「だ、誰がゴミだ!! ラスティ、貴様こそ無能の落ちこぼれではないか! このような無人島に追放されて平民よりも劣悪な環境で過ごしているようだな。お前にお似合いだよ、わはははは!!」


 こちらを見下し、馬鹿笑いするブラームス。さすが敬愛すべきゴミ兄貴だ。絶対に泣かす。


「それでワーグナーの仕返しに来たのか」

「それもある。ワーグナーは、お前にボコられてから、すっかり自信を失ってしまった……しかも婚約者も失い、心神喪失。これはラスティお前のせいだ! お前が素直に帝国に戻ってこないから、こうなったのだ。全部、お前のせいだ!」

「戻る気はない。お前もとっとと帰れ」
「そうはいかない! 偶然拿捕だほした海賊共から聞いたぞ。どうやら、赤髪の女船長がこの無人島に宝箱を埋めたとな。あれは僕の金だぞ!! 金貨を返してもらおうか!」


 なるほど、タイミング良くブラームスの艦隊が航海中だったわけか。金貨を必死に探し回っていたようだな。それで逃げ惑う海賊共を捕らえて――情報を聞き出してこの島に来たわけか。


「知っているぞ、ゴミ兄貴。あの金貨は、元はと言えば連合国にある村とか街を襲って手に入れたものだろう。それだけじゃない、帝国民に重税を課してしぼり取っているとも聞いている。どこまでお前はゴミなんだ」

「ラ、ラスティ……貴様ァ! 兄に対する数々の侮辱ぶじょく……許さんぞ!!」


 本当の事を言われ、怒りに震えるブラームス。だが、ヤツはワーグナーと違って魔法を使えないはずだし、たいした能力はなかったはず。余裕で勝てるはずだが、なんだあの自信のある顔……何かあるな。
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