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第一皇子の嘘

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 ロートスライムのクッションで眠るスコルの手を握る。

「それじゃあ、行ってくる。出来れば一緒に行きたかったけど……」

 今眠っているこの瞬間なら、スコルに触れてもいいかなって思って――俺は、金の髪に触れようとした……が。

 その瞬間、スコルは目をパチクリ開けた。
 復活したようだ。


「……ラスティさん。おはようございま――え」
「あー…ごめん。今、スコルの頭を撫でようとしたんだよ」

「きゅぅ~~~~~~…」


 目をクルクル回し、また気絶しちゃった!! もう今日は動けそうにないな。多分疲れているのだろう、たまには休息も必要だ。決めた。スコルには休養してもらう。


「アルフレッド、スコルを頼む。ハヴァマールもな」
「うけたまわりです。ラスティ様もお気をつけて」
「おう。いざとなったら『黄金の箒ゴルトブルーム』で敵を一掃してくれ」
「お任せください。どのような敵も、この最強の武器で倒してご覧にいれましょう」

 俺とアルフレッドは、サムズアップを交わした。上手く息が合ったところで――出発。さあ、ダンジョンへ行こう。


 ◆


 家を出て、エドゥアルドの方へ向き直った。髪からその爪先までほぼ“ライムグリーン”だ。肌は限りなく白く、まるで雪国の住人のような肌質をしていた。まあまあ暑いのに、汗ひとつ掻かず冷静に俺を見つめる。


「エドゥアルド、改めて名乗りたい」


 相手は大賢者だ。もし、伝説の人なら俺の事や世界の情勢にも詳しいはず。これから一緒にやっていくうえで、まずは敬意を表していこうと思った。

「分かりました。聞きましょう」

「知っているかもしれないけど、俺はドヴォルザーク帝国の元第三皇子ラスティ・ヴァーミリオンだ。無能で知られ、ここ数年は城で引き籠っていた。でも、親父……皇帝から追放されてな。散々だったけど、今は違う」

「このドヴォルザーク帝国の領海外にある無人島ですか」
「そうだ。領有権云々は置いておいて、俺は今、島開発に乗り出している。いずれは、帝国よりも堅固な島国を開国しようと考えている」

 理解を示すエドゥアルドは、やや微笑する。……お、これは手応えありだな。

「面白いですね。世界とは絶え間なく動き続け、変化するものです。歴史を一緒に作るのもいいかもですね」

「おぉ、分かってくれるか」

「ええ。ですが、ラスティ様は少し勘違いをなされている」
「ん? 勘違い?」

「はい、この無人島はドヴォルザーク帝国の『領海外・・・』です。先ほども、そう発言しました」


 え? えぇッ!?
 記憶を少し巻き戻してみる。

 すると、俺はエドゥアルドのセリフを流していた事実に気づく。確かに“このドヴォルザーク帝国の領海外にある無人島ですか”と言っていた……!


 マジィ!?


「待ってくれ。第一皇子の馬鹿兄貴ワーグナーは、ドヴォルザーク帝国の領海だと言っていたぞ。あれはウソか?」
「そうなりますね。ワーグナーは、そういう男です。ラスティ様が一番よく分かっているでしょう」

 そうだな、クソ兄貴は二人揃ってゴミだった。そうか、この島は誰の・・所有物でも・・・・・なかった・・・・んだ。にもかかわらず、あのワーグナーはドヴォルザーク帝国の領海と主張していた。勝手が過ぎるっていうか、横暴だ。


 俺から奪うために、平然とあんな嘘をついたんだ。クソすぎるぜ……ワーグナー。だけどな、真実が分かったから良かった。これから堂々と『俺の島』だと言ってやれる。

 それと、無人島のレベルを『1000』にして、さっさと開国しないとな。
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