80 / 432
第一皇子の嘘
しおりを挟む
ロートスライムのクッションで眠るスコルの手を握る。
「それじゃあ、行ってくる。出来れば一緒に行きたかったけど……」
今眠っているこの瞬間なら、スコルに触れてもいいかなって思って――俺は、金の髪に触れようとした……が。
その瞬間、スコルは目をパチクリ開けた。
復活したようだ。
「……ラスティさん。おはようございま――え」
「あー…ごめん。今、スコルの頭を撫でようとしたんだよ」
「きゅぅ~~~~~~…」
目をクルクル回し、また気絶しちゃった!! もう今日は動けそうにないな。多分疲れているのだろう、たまには休息も必要だ。決めた。スコルには休養してもらう。
「アルフレッド、スコルを頼む。ハヴァマールもな」
「うけたまわりです。ラスティ様もお気をつけて」
「おう。いざとなったら『黄金の箒』で敵を一掃してくれ」
「お任せください。どのような敵も、この最強の武器で倒してご覧にいれましょう」
俺とアルフレッドは、サムズアップを交わした。上手く息が合ったところで――出発。さあ、ダンジョンへ行こう。
◆
家を出て、エドゥアルドの方へ向き直った。髪からその爪先までほぼ“ライムグリーン”だ。肌は限りなく白く、まるで雪国の住人のような肌質をしていた。まあまあ暑いのに、汗ひとつ掻かず冷静に俺を見つめる。
「エドゥアルド、改めて名乗りたい」
相手は大賢者だ。もし、伝説の人なら俺の事や世界の情勢にも詳しいはず。これから一緒にやっていくうえで、まずは敬意を表していこうと思った。
「分かりました。聞きましょう」
「知っているかもしれないけど、俺はドヴォルザーク帝国の元第三皇子ラスティ・ヴァーミリオンだ。無能で知られ、ここ数年は城で引き籠っていた。でも、親父……皇帝から追放されてな。散々だったけど、今は違う」
「このドヴォルザーク帝国の領海外にある無人島ですか」
「そうだ。領有権云々は置いておいて、俺は今、島開発に乗り出している。いずれは、帝国よりも堅固な島国を開国しようと考えている」
理解を示すエドゥアルドは、やや微笑する。……お、これは手応えありだな。
「面白いですね。世界とは絶え間なく動き続け、変化するものです。歴史を一緒に作るのもいいかもですね」
「おぉ、分かってくれるか」
「ええ。ですが、ラスティ様は少し勘違いをなされている」
「ん? 勘違い?」
「はい、この無人島はドヴォルザーク帝国の『領海外』です。先ほども、そう発言しました」
え? えぇッ!?
記憶を少し巻き戻してみる。
すると、俺はエドゥアルドのセリフを流していた事実に気づく。確かに“このドヴォルザーク帝国の領海外にある無人島ですか”と言っていた……!
マジィ!?
「待ってくれ。第一皇子の馬鹿兄貴ワーグナーは、ドヴォルザーク帝国の領海だと言っていたぞ。あれはウソか?」
「そうなりますね。ワーグナーは、そういう男です。ラスティ様が一番よく分かっているでしょう」
そうだな、クソ兄貴は二人揃ってゴミだった。そうか、この島は誰の所有物でもなかったんだ。にも拘わらず、あのワーグナーはドヴォルザーク帝国の領海と主張していた。勝手が過ぎるっていうか、横暴だ。
俺から奪うために、平然とあんな嘘をついたんだ。クソすぎるぜ……ワーグナー。だけどな、真実が分かったから良かった。これから堂々と『俺の島』だと言ってやれる。
それと、無人島のレベルを『1000』にして、さっさと開国しないとな。
「それじゃあ、行ってくる。出来れば一緒に行きたかったけど……」
今眠っているこの瞬間なら、スコルに触れてもいいかなって思って――俺は、金の髪に触れようとした……が。
その瞬間、スコルは目をパチクリ開けた。
復活したようだ。
「……ラスティさん。おはようございま――え」
「あー…ごめん。今、スコルの頭を撫でようとしたんだよ」
「きゅぅ~~~~~~…」
目をクルクル回し、また気絶しちゃった!! もう今日は動けそうにないな。多分疲れているのだろう、たまには休息も必要だ。決めた。スコルには休養してもらう。
「アルフレッド、スコルを頼む。ハヴァマールもな」
「うけたまわりです。ラスティ様もお気をつけて」
「おう。いざとなったら『黄金の箒』で敵を一掃してくれ」
「お任せください。どのような敵も、この最強の武器で倒してご覧にいれましょう」
俺とアルフレッドは、サムズアップを交わした。上手く息が合ったところで――出発。さあ、ダンジョンへ行こう。
◆
家を出て、エドゥアルドの方へ向き直った。髪からその爪先までほぼ“ライムグリーン”だ。肌は限りなく白く、まるで雪国の住人のような肌質をしていた。まあまあ暑いのに、汗ひとつ掻かず冷静に俺を見つめる。
「エドゥアルド、改めて名乗りたい」
相手は大賢者だ。もし、伝説の人なら俺の事や世界の情勢にも詳しいはず。これから一緒にやっていくうえで、まずは敬意を表していこうと思った。
「分かりました。聞きましょう」
「知っているかもしれないけど、俺はドヴォルザーク帝国の元第三皇子ラスティ・ヴァーミリオンだ。無能で知られ、ここ数年は城で引き籠っていた。でも、親父……皇帝から追放されてな。散々だったけど、今は違う」
「このドヴォルザーク帝国の領海外にある無人島ですか」
「そうだ。領有権云々は置いておいて、俺は今、島開発に乗り出している。いずれは、帝国よりも堅固な島国を開国しようと考えている」
理解を示すエドゥアルドは、やや微笑する。……お、これは手応えありだな。
「面白いですね。世界とは絶え間なく動き続け、変化するものです。歴史を一緒に作るのもいいかもですね」
「おぉ、分かってくれるか」
「ええ。ですが、ラスティ様は少し勘違いをなされている」
「ん? 勘違い?」
「はい、この無人島はドヴォルザーク帝国の『領海外』です。先ほども、そう発言しました」
え? えぇッ!?
記憶を少し巻き戻してみる。
すると、俺はエドゥアルドのセリフを流していた事実に気づく。確かに“このドヴォルザーク帝国の領海外にある無人島ですか”と言っていた……!
マジィ!?
「待ってくれ。第一皇子の馬鹿兄貴ワーグナーは、ドヴォルザーク帝国の領海だと言っていたぞ。あれはウソか?」
「そうなりますね。ワーグナーは、そういう男です。ラスティ様が一番よく分かっているでしょう」
そうだな、クソ兄貴は二人揃ってゴミだった。そうか、この島は誰の所有物でもなかったんだ。にも拘わらず、あのワーグナーはドヴォルザーク帝国の領海と主張していた。勝手が過ぎるっていうか、横暴だ。
俺から奪うために、平然とあんな嘘をついたんだ。クソすぎるぜ……ワーグナー。だけどな、真実が分かったから良かった。これから堂々と『俺の島』だと言ってやれる。
それと、無人島のレベルを『1000』にして、さっさと開国しないとな。
0
お気に入りに追加
491
あなたにおすすめの小説
無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~
桜井正宗
ファンタジー
元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。
仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。
気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります
桜井正宗
ファンタジー
無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。
突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。
銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。
聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。
大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?
小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」
勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。
ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。
そんなある日のこと。
何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。
『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』
どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。
……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?
私がその可能性に思い至った頃。
勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。
そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる