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無詠唱の氷属性魔法

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 地面を蹴り、ワーグナーの懐へ入ろうとした。だが、ヤツは至って冷静にニヤリと笑うだけ。なんだ、なんでそんな余裕でいられる……?

 ――罠か?

 けれど、こいつの魔法は詠唱時間が長い。あれから成長しているとはいえ、まだ間に合うはずだ。

「これほど早く動けるとはな、もう俺の目の前か」
「ゲイルチュールで頭をブン殴ってて、気絶程度で勘弁してやるよ、ワーグナー!」


「なるほど、そのナマクラがお前の武器か。笑わせる……この愚か者がッ!!!」


 ドンッと痛みを伴う悪寒が頬を突く。……痛ェ、寒い。ワーグナーから冷気が漂って、それが氷塊となった。馬鹿な、こいつは詠唱に時間が掛かるんじゃなかったのか。
 大魔法ゆえに発動には時間が掛かると、子供のころは口癖のように言っていた。


 次第に猛吹雪に襲われ、俺は氷塊の雨によって吹き飛ばされる。なんて威力だ。


「くっ!!」
「これは『フリーザーストーム』という水属性魔法にして大魔法のひとつ。まあ、正確にいえば上位の氷属性なんだがな」


 俺はかなりの距離の吹き飛ばされた。だが、幸いにしてゲイルチュールでの防御ガードが間に合って無傷で済んだ。……いやそうでもないか。ゲイルチュールが凍結してしまった。


「教えろ、ワーグナー。お前には詠唱が必要だったはず」
「いつの話をしている。そんな欠点はとっくの昔に克服こくふくしているのだよ。今の俺は“無詠唱”を手に入れた。だから、詠唱なし・・・・で大魔法を発動できる」


 詠唱なし……だと。
 だから、さっきは直ぐに発動できたわけか。いつの間にそんな力を……だけど、隙はあるはずだ。もう一度攻撃を!

 俺は、回り込むように走っていく。ワーグナヤツーは一歩も動かずこちらを呆れるように見つめる。舐められているな。


「棒立ちで隙だらけじゃないか」

「そう思うか? なら、それはお前の勘違いだ、ラスティ。言っただろう、無詠唱で魔法が使えると!! お前の全身を凍らせてやる――フリーザーストーム!!」


 ごうっと全体が氷の嵐に見舞われる。なんて突風。それと大量の氷塊。凍結効果のある魔法だろうから、ヤツの言う通りまともに受ければ状態異常の【凍結】となり、氷の像になってしまうだろう。


 だが、ただやられる俺ではない。


 材料『石』を50個使い『石防壁』を生成。目の前に身長を優にを超える壁が出来て、敵の大魔法を防いだ。しかし、直ぐに耐久値を失い、崩壊。さすが大魔法か。だけど一瞬だけでも持ちこたえてくれた。十分防御に使えると判明した。


 ワーグナーは、突然地面から生えてきた『石防壁』に仰天していた。その隙に、ヤツの周りに『落とし穴』を設置。アイテムボックスから石を大量に取り出し、投石した。


「うおらあああああッ!!」


 全力で投げて散弾させた。
 大量の石がワーグナーに激突。
 額やら腕にダメージを負ったようだ。


「ぐおッ……! ラ、ラスティお前……小癪こしゃくな真似を!! くそう、こんな子供ガキのような石投げ攻撃、避けてしまえば――ぬあああああああああ!!」


 避けようとしてワーグナーは『落とし穴』に落ちた。だけど、直ぐにい上がってきた。諦めの悪い……!


「中々しつこいな」
「く……くそ。何だこの不気味な力! ラスティ、お前はいったい何のスキルを習得しているんだ。こんな力は聞いた事がない!!」

「教える義理はねぇよ。もういいだろう、この島から去って貰うぞ」
「図に乗るな。お前を止める方法などいくつでもある。ヨハネスから聞いたぞ。お前、ボロディンの聖女エルフに随分とれ込んでいるとな」

「何が言いたい」

「いいか、聖女という存在は常に高い魔力を持つ。故に、気配を察知されやすいのだよ」

 ギロッとワーグナーは、林の方をにらむ。
 ま、まさか、コイツ!


「ワーグナー! スコルに手を出したら、たとえお前でも許さん」
「いいさ、許さなくても。まずはお前の大切な女を凍らせてやる」


 俺の方にも、スコル達のいるの方角にも『フリーザーストーム』を放つ。そして、ワーグナーは、俺に背を向けスコルの方へ走り出す。


「逃がすか!!」
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