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執事の新しい武器②

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 なんて武器、掃除用具だよ。
 庭から外のかなりの距離の地面がえぐれた。

「ア……アルフレッド、やりすぎた」
「も、申し訳ございません、ぼっちゃん! これほどの威力とは思わなかったので……これは“神器”クラスですぞ」

 嘘だろ!? 俺はそんなモンを簡単に作ってしまったのか。恐るべし、ワークテーブル。だが、これだけ強力ならダンジョン攻略や外敵に対応しやすいな。

 なんて思っていると、家の中からスコルとハヴァマールが飛び出てきた。


「ラスティさん!?」
「兄上、これはなんだ……」


「あー…、二人ともすまん。兵器を作ってしまったらしい」

「「兵器ぃ!?」」


 家に戻り、リビングで説明した。
 スコルもハヴァマールも驚き、納得した。


「――というわけなんだ、危険はない」


 スコルは、ホッとして「そうでしたか……」と胸をなでおろして、ハヴァマールは「やれやれ」とジト目を俺に向ける。迫力のない可愛い視線に俺は少し照れる。


「本当に申し訳ない、スコル様、ハヴァマール様。以後は気を付けますので」


 ぺこりと丁寧に謝るアルフレッドだが――どうやら、使った本人も予想外だったようで、全身ピクピク震えていた。めっちゃ動揺してんなぁ。


 ◆


 解散となり、各々の部屋に戻った。
 俺はひとりベッドへ――そうだ。このベッドもいい加減になんとかしないと! 毎日、背中がガチガチになって大変だ。


 横になっていると、扉をノックする音が。


「入ってくれ」
「お、お邪魔しますね」


 仰向けのまま俺は視線だけをスコルの目に合わせる。薄暗い部屋の中でも、その宝石のような緑の瞳が俺を見つめる。……明眸めいぼうだ。


「スコル……どうした――ってえッ」


 スコルは俺の方へ腰を下ろし、そのまま体を重ね合わせてきた。突然の出来事に、俺は激しく動揺。心臓ももれなく激しく鼓動。体が急速に加熱されていく。……なんだ、急にどうしたんだ。


「……このまま寝たいんです」
「な、なんで? 自分の部屋があるだろう」
「一緒がいいんです。……寂しくて」
「寂しいって、隣の部屋じゃないか。いつでも会えるよ」
「そうじゃないんです。この距離感でないとダメなんです」


 ぎゅっと手に力を入れているのが分かる。少し震え、頬を紅潮させていた。そういえば、人間ひとには“パーソナルスペース”というものがあり、それは他人に近づかれただけで感じる不快感であり、そういう空間を指すらしいが――俺とスコルの間には、そういう隔たりはないように思えた。


 今日だって共に行動し、共に笑い合い、今も床を共にしていた。


 俺にとってスコルという存在はなんだ……?



 宮殿で助けた少女?
 無人島に流れ着いたエルフの少女?
 俺に協力してくれる聖女?


 ――いや、そうではないのかも。



 今やスコルは俺にとって……かけがえのない存在となっている。スコルがいたからこそ、俺は今があるし、精神的に支えられている。彼女のコロコロ変わる可愛い表情も、柔らかい言葉も、何気ない仕草も好きだ。


 あぁ、そうだな。
 もう少し、自分に素直になろうかな。


 スコルの小さな体を“ぎゅっ”と抱きしめた――。
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