上 下
61 / 436

スキルレベル、アップ!!

しおりを挟む
「その全身が水で出来ている男は、精霊か?」

「そうですよ、ラスティ様。大精霊・オケアノスです。わたくしの家系は代々、水の精霊に愛されているんです。ご先祖様が高い魔力を持つ女性召喚士サモナーだったようで、大精霊と恋に落ちたとか」

 へぇ、召喚士サモナーなんだな。
 聞いた事がある。世界には精霊や英霊と契約し、戦う者達がいるとか。そういう冒険者や専門のギルドも存在するようだ。

 しかし、貴族が召喚士サモナーとはな――いや、あり得ない話ではないか。召喚士サモナーではないが、俺の兄貴……第一皇子・ワーグナーも『氷帝』の異名を持つ魔法の天才。

「助けてくれてありがとう、ストレルカ。じゃあ、俺たちは行くね」
「ちょ、それだけですか!?」
「あー、うん。俺とスコルは今日、二人きりの約束だから」

「――なッ」

 口をパクパクさせるストレルカ。
 次第に表情を変え、恨めしそうにスコルを睨む。一方のスコルは、なんか知らんが可愛いドヤ顔。……おいおい、また火花を散らす気か。まったく、仲良くやって欲しいものだ。


「すまない。でも、近々船にはお邪魔したい。約束するよ」
「ラスティ様~♪ はい、首を長くしてお待ちしております」

 ご機嫌になるストレルカは、改めてスコルを見下す。

「な、なんですか……こっちを見ないで下さい、ストレルカさん」

「エルフだか聖女だか知りませんけれど、半端者である貴女の安っぽい恋路なんて簡単に塞いで差し上げますわ! オホホホホ!!」


 上品に高笑いしてストレルカは去っていく。その後ろ姿を「ムキー!」とか
言って、スコルは怒っていた。……可愛い。

「まあまあ、落ち着いて」
「お、落ち着いてなんていられないですよぉ……! ラスティさんが取られちゃうかもしれないんですよ!?」

「それはないと思うけど。まあ、仲良くね?」
「わたしだって喧嘩はしたくないですよ。でも、あのストレルカさんが……」

 俺は、スコルが言い切る前に右手を取り、上に挙げた。

「スコル、みんな仲良くいこう!」
「うぅ……分かりました。努力します」

 諦めたのか、スコルは渋々納得してくれた。もしかしたら、ストレルカだってこの島の住人になるかもしれないし、そうなれば貴重な戦力になるだろう。あの“大精霊”は魅力的だ。


 ◆


 ――さっきの戦闘でスコルのスキルレベルがアップしたらしい。……でも、おかしいな。倒したのはストレルカだ。俺ではないし、どうなっているんだ。


 [キリエ][Lv.3]
 [スキル]
 [効果]
  自身か対象に支援魔法を掛ける。
  全ステータスに +3% の補正を与える。更に、幸運LUKを上昇させる。レベル『1』上がる毎に補正が +3% 上昇する。スキルの最大レベルは『10』。


 [グローリア][Lv.3]
 [スキル]
 [効果]
  自身か対象の攻撃・移動速度を 3% アップする。レベル『1』上がる毎に補正が +3% 上昇する。スキルの最大レベルは『10』。



 なんと、レベル3に上昇していた。あの大量のグリューンゴブリンを倒したからっぽいけど、普通は上がらないだろう。あとでハヴァマールに詳しく聞いてみるか。


 不思議なレベルアップに首を傾げながら洞窟へ入る。オケアノスの放った水属性魔法で洞窟内は水没していなかった。どうやら、時間が経過して消えたみたいだな。水や氷、岩などを魔法で作り出し攻撃した場合、一定時間が経つと自然消滅する。

 魔力マナを借りているだけだから、そういうモノらしい。でも、中には半永久的に残る魔法もある。それこそ大魔法を超える奇跡・・だけど。


 時間がもうないので、ゲイルチュールでサクサクっと『鉄鉱石』を確保。


 鉄鉱石×67


 こんなところだろう。
 収集を終え、後は少しだけダンジョンを覗こうと思った。しかし、洞窟の奥は暗闇で、たいまつを灯しても奥が見えない深淵。

 あの中から、モンスターが出現しているのだとすれば、ダンジョンは確かにあそこに存在するに違いない。

「行くぞ、スコル」
「えっ……奥へ、行くんですか?」
「大丈夫。俺が守ってやる。でも、怖いのなら外で待ってくれていてもいいよ」
「嫌です。わたしは、ラスティさんと一緒じゃないと泣いちゃいます」


 そう涙目で不安そうにスコルは、俺の左腕を抱えた。……や、柔らかいモノが――いや、今は意識するな。前にだけ集中だ。前進あるのみ――。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗
ファンタジー
 元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。  仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。  気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

金貨増殖バグが止まらないので、そのまま快適なスローライフを送ります

桜井正宗
ファンタジー
 無能の落ちこぼれと認定された『ギルド職員』兼『ぷちドラゴン』使いの『ぷちテイマー』のヘンリーは、職員をクビとなり、国さえも追放されてしまう。  突然、空から女の子が降ってくると、キャッチしきれず女の子を地面へ激突させてしまう。それが聖女との出会いだった。  銀髪の自称聖女から『ギフト』を貰い、ヘンリーは、両手に持てない程の金貨を大量に手に入れた。これで一生遊んで暮らせると思いきや、金貨はどんどん増えていく。増殖が止まらない金貨。どんどん増えていってしまった。  聖女によれば“金貨増殖バグ”だという。幸い、元ギルド職員の権限でアイテムボックス量は無駄に多く持っていたので、そこへ保管しまくった。  大金持ちになったヘンリーは、とりあえず念願だった屋敷を買い……スローライフを始めていく!?

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

国外追放者、聖女の護衛となって祖国に舞い戻る

はにわ
ファンタジー
ランドール王国最東端のルード地方。そこは敵国や魔族領と隣接する危険区域。 そのルードを治めるルーデル辺境伯家の嫡男ショウは、一年後に成人を迎えるとともに先立った父の跡を継ぎ、辺境伯の椅子に就くことが決定していた。幼い頃からランドール最強とされる『黒の騎士団』こと辺境騎士団に混ざり生活し、団員からの支持も厚く、若大将として武勇を轟かせるショウは、若くして国の英雄扱いであった。 幼馴染の婚約者もおり、将来は約束された身だった。 だが、ショウと不仲だった王太子と実兄達の謀略により冤罪をかけられ、彼は廃嫡と婚約者との婚約破棄、そして国外追放を余儀なくされてしまう。彼の将来は真っ暗になった。 はずだったが、2年後・・・ショウは隣国で得意の剣術で日銭を稼ぎ、自由気ままに暮らしていた。だが、そんな彼はひょんなことから、旅をしている聖女と呼ばれる世界的要人である少女の命を助けることになる。 彼女の目的地は祖国のランドール王国であり、またその命を狙ったのもランドールの手の者であることを悟ったショウ。 いつの間にか彼は聖女の護衛をさせられることになり、それについて思うこともあったが、祖国の現状について気になることもあり、再び祖国ランドールの地に足を踏み入れることを決意した。

二人分働いてたのに、「聖女はもう時代遅れ。これからはヒーラーの時代」と言われてクビにされました。でも、ヒーラーは防御魔法を使えませんよ?

小平ニコ
ファンタジー
「ディーナ。お前には今日で、俺たちのパーティーを抜けてもらう。異論は受け付けない」  勇者ラジアスはそう言い、私をパーティーから追放した。……異論がないわけではなかったが、もうずっと前に僧侶と戦士がパーティーを離脱し、必死になって彼らの抜けた穴を埋めていた私としては、自分から頭を下げてまでパーティーに残りたいとは思わなかった。  ほとんど喧嘩別れのような形で勇者パーティーを脱退した私は、故郷には帰らず、戦闘もこなせる武闘派聖女としての力を活かし、賞金首狩りをして生活費を稼いでいた。  そんなある日のこと。  何気なく見た新聞の一面に、驚くべき記事が載っていた。 『勇者パーティー、またも敗走! 魔王軍四天王の前に、なすすべなし!』  どうやら、私がいなくなった後の勇者パーティーは、うまく機能していないらしい。最新の回復職である『ヒーラー』を仲間に加えるって言ってたから、心配ないと思ってたのに。  ……あれ、もしかして『ヒーラー』って、完全に回復に特化した職業で、聖女みたいに、防御の結界を張ることはできないのかしら?  私がその可能性に思い至った頃。  勇者ラジアスもまた、自分の判断が間違っていたことに気がついた。  そして勇者ラジアスは、再び私の前に姿を現したのだった……

芋くさ聖女は捨てられた先で冷徹公爵に拾われました ~後になって私の力に気付いたってもう遅い! 私は新しい居場所を見つけました~

日之影ソラ
ファンタジー
アルカンティア王国の聖女として務めを果たしてたヘスティアは、突然国王から追放勧告を受けてしまう。ヘスティアの言葉は国王には届かず、王女が新しい聖女となってしまったことで用済みとされてしまった。 田舎生まれで地位や権力に関わらず平等に力を振るう彼女を快く思っておらず、民衆からの支持がこれ以上増える前に追い出してしまいたかったようだ。 成すすべなく追い出されることになったヘスティアは、荷物をまとめて大聖堂を出ようとする。そこへ現れたのは、冷徹で有名な公爵様だった。 「行くところがないならうちにこないか? 君の力が必要なんだ」 彼の一声に頷き、冷徹公爵の領地へ赴くことに。どんなことをされるのかと内心緊張していたが、実際に話してみると優しい人で…… 一方王都では、真の聖女であるヘスティアがいなくなったことで、少しずつ歯車がズレ始めていた。 国王や王女は気づいていない。 自分たちが失った者の大きさと、手に入れてしまった力の正体に。 小説家になろうでも短編として投稿してます。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

処理中です...