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ユーモレスク宮殿
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【十年前】
ドヴォルザーク帝国の皇帝陛下にして俺の親父、アントニンは俺と兄貴を連れて『エルフの国ボロディン』へ向かった。その理由は詳しくは分からなかったけど“聖女”には会えると聞いた。
金髪の可愛い少女だと耳にし、期待に胸を膨らませた。
船が港につくと、街並みは煉瓦の家が広まっていた。エルフ達が親父を歓迎し、俺も兄貴も背後へ続いた。
ボロディン最大の『ユーモレスク宮殿』へ入ると、そこには女性の大神官の姿が。やっぱり、金髪で綺麗な人だなって思った。
「遠路遥々ようこそ、陛下」
「うむ。今日は約束の日。“世界聖書”を譲り受けにきたのだ」
「そうでしたか。では、さっそく――おや、子供たちですか」
「そうだ。我が子たちも連れてきたのだ。第一皇子・ワーグナー、第二皇子・ブラームス、第三皇子・ラスティだ」
「なんと皇子と……では、子供達は、聖女スコル・ズロニツェと遊ぶと良いでしょう」
柱の陰に隠れている金髪の女の子。俺にはその子が視界に入っていた。でも、あまり興味はなかった。メンドクサイとさえ思った。俺は読書がしたいんだ。本の世界こそ、俺の居場所。――子供ながら、俺はそんな感じだった。
兄貴達が聖女の女の子を広場へ連れ出し、乱暴に扱った。その瞬間、俺はなんか急にムカムカした。他人なのにな。
「おい、コイツ、エルフだぞ!」
「耳が尖ってキモチわりぃー!!」
そう、兄貴二人はクズだった。
性格が破綻しており、ゴミだった。
子供とはいえ、皇子なんだ。一応、高水準の教育も受けて常識人のはずなんだが……所詮、ガキはガキだった。冷静すぎる俺が特殊すぎたのかもしれない。てか、本当に兄貴達は、俺の兄貴なのか。まるで性格も違うし、容姿だってちょっと異なる。
髪の色や目の色だって違うじゃないか。
そんな風に広場の隅で見守っていると、ワーグナーとブラームスは、エスカレート。あの少女をボコボコに蹴っていた。……おい! 国際問題ってレベルじゃねーぞ!! 無条件で戦争になっちまうだろうが!!
その子は聖女なんだろう!?
「うわぁぁぁぁん! だ、誰か助けて……なんで、わたしがこんな目にいいぃぃ……」
頭を抱え、女の子は大泣き。
クソ兄貴共……もう許せん。
「おい、ワーグナー、ブラームス!!」
「あぁん!?」
「んだよ、ラスティ。またブン殴るぞ」
「うるせえええええええッ!!!」
重量のある分厚い本をブン投げ、ブラームスの顔面にぶつけた。兄貴二号は、一撃で倒れ伸びていた。ざまぁねぇな!
「お、おい、ブラームス!! くそ、ラスティ……お前、生意気だぞ!! 兄貴に逆らうんじゃねえ!!」
「なーにが兄貴だ。おねしょワーグナーが!!」
「…………ラ、ラスティ、おま……」
俺は知っていた。
ワーグナーが毎晩のように、おねしょしていた事を。それをハッキリ言うと、ワーグナーは顔を真っ赤にし、激昂。
怒りのまま向かってきた。
「やべ……!」
「分かっているよな、ラスティ。この僕は“氷の加護”を受けているんだぞ。いずれは『氷帝』と言われる存在になるだろう。お前を氷漬けにしてやる……!」
手を向け、冷気を漂わせるワーグナー。まずい、アイツは生まれつき魔法に長けていた。この歳でもう大魔法に匹敵する力を持っていたんだ。そんなのを使われたら、ひとたまりもない。
……くそ、ここまでか。
――なんて諦めるわけないだろ!
「ワーグナー、お前の大魔法は詠唱に時間が掛かるって知ってるんだよおおおお!!」
「し、しまったああああああああああああ!!」
アホだ、コイツ!!
俺は先回りし、ワーグナーの背後に回った。
そして、カンチョーをお見舞いしてやった。
「うおらあああああああああああああああああああ…………!!!」
「ギョエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ~~~~~~ッッ!!!!!」
ワーグナー、撃沈。
泡を吹いてぶっ倒れ、ピクピクと無様に痙攣していた。……ふっ、アルフレッドから護身術を習っておいて良かったぜ。
ドヴォルザーク帝国の皇帝陛下にして俺の親父、アントニンは俺と兄貴を連れて『エルフの国ボロディン』へ向かった。その理由は詳しくは分からなかったけど“聖女”には会えると聞いた。
金髪の可愛い少女だと耳にし、期待に胸を膨らませた。
船が港につくと、街並みは煉瓦の家が広まっていた。エルフ達が親父を歓迎し、俺も兄貴も背後へ続いた。
ボロディン最大の『ユーモレスク宮殿』へ入ると、そこには女性の大神官の姿が。やっぱり、金髪で綺麗な人だなって思った。
「遠路遥々ようこそ、陛下」
「うむ。今日は約束の日。“世界聖書”を譲り受けにきたのだ」
「そうでしたか。では、さっそく――おや、子供たちですか」
「そうだ。我が子たちも連れてきたのだ。第一皇子・ワーグナー、第二皇子・ブラームス、第三皇子・ラスティだ」
「なんと皇子と……では、子供達は、聖女スコル・ズロニツェと遊ぶと良いでしょう」
柱の陰に隠れている金髪の女の子。俺にはその子が視界に入っていた。でも、あまり興味はなかった。メンドクサイとさえ思った。俺は読書がしたいんだ。本の世界こそ、俺の居場所。――子供ながら、俺はそんな感じだった。
兄貴達が聖女の女の子を広場へ連れ出し、乱暴に扱った。その瞬間、俺はなんか急にムカムカした。他人なのにな。
「おい、コイツ、エルフだぞ!」
「耳が尖ってキモチわりぃー!!」
そう、兄貴二人はクズだった。
性格が破綻しており、ゴミだった。
子供とはいえ、皇子なんだ。一応、高水準の教育も受けて常識人のはずなんだが……所詮、ガキはガキだった。冷静すぎる俺が特殊すぎたのかもしれない。てか、本当に兄貴達は、俺の兄貴なのか。まるで性格も違うし、容姿だってちょっと異なる。
髪の色や目の色だって違うじゃないか。
そんな風に広場の隅で見守っていると、ワーグナーとブラームスは、エスカレート。あの少女をボコボコに蹴っていた。……おい! 国際問題ってレベルじゃねーぞ!! 無条件で戦争になっちまうだろうが!!
その子は聖女なんだろう!?
「うわぁぁぁぁん! だ、誰か助けて……なんで、わたしがこんな目にいいぃぃ……」
頭を抱え、女の子は大泣き。
クソ兄貴共……もう許せん。
「おい、ワーグナー、ブラームス!!」
「あぁん!?」
「んだよ、ラスティ。またブン殴るぞ」
「うるせえええええええッ!!!」
重量のある分厚い本をブン投げ、ブラームスの顔面にぶつけた。兄貴二号は、一撃で倒れ伸びていた。ざまぁねぇな!
「お、おい、ブラームス!! くそ、ラスティ……お前、生意気だぞ!! 兄貴に逆らうんじゃねえ!!」
「なーにが兄貴だ。おねしょワーグナーが!!」
「…………ラ、ラスティ、おま……」
俺は知っていた。
ワーグナーが毎晩のように、おねしょしていた事を。それをハッキリ言うと、ワーグナーは顔を真っ赤にし、激昂。
怒りのまま向かってきた。
「やべ……!」
「分かっているよな、ラスティ。この僕は“氷の加護”を受けているんだぞ。いずれは『氷帝』と言われる存在になるだろう。お前を氷漬けにしてやる……!」
手を向け、冷気を漂わせるワーグナー。まずい、アイツは生まれつき魔法に長けていた。この歳でもう大魔法に匹敵する力を持っていたんだ。そんなのを使われたら、ひとたまりもない。
……くそ、ここまでか。
――なんて諦めるわけないだろ!
「ワーグナー、お前の大魔法は詠唱に時間が掛かるって知ってるんだよおおおお!!」
「し、しまったああああああああああああ!!」
アホだ、コイツ!!
俺は先回りし、ワーグナーの背後に回った。
そして、カンチョーをお見舞いしてやった。
「うおらあああああああああああああああああああ…………!!!」
「ギョエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ~~~~~~ッッ!!!!!」
ワーグナー、撃沈。
泡を吹いてぶっ倒れ、ピクピクと無様に痙攣していた。……ふっ、アルフレッドから護身術を習っておいて良かったぜ。
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