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金貨と謎の地図

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 拠点いえへ戻り、リビングへ。
 赤いスライムのクッションへアルフレッドを寝かせた。

「ここまでありがとうございました、ぼっちゃん」
「何って言っているんだ。当たり前だろう」

「……これで安心して私はいける。我が主の成長がおそばで見れた、それだけで幸せだった」


 弱々しい声でアルフレッドは、そんな遺言めいた事を言った。


「お、おい! アルフレッド、嘘だろ!」
「…………ぼっちゃん」


 ぱたっと脱力するアルフレッド。

 ……そんな深い傷を負っていたのか。

 スコルのヒールでは治らなかったのか。


「アルフレッド!!!」



「ぐごー…………」



「……は?」


 イビキをかくアルフレッドは、安眠していた。


「あの、ラスティさん。アルフレッドさん……寝てるみたいです」
「死んだんじゃないんかいッ!! 紛らわしい事しやがって!!」


 でも良かった。
 アルフレッドに死なれたら俺もみんなも困る。……あぁ、良かった。なんて心配していたら、お腹が減った。


「兄上、兄上。余もお腹が空いたのだ」


 涙目のハヴァマールが俺の袖を引っ張る。たまに、あざといなコイツ。


「そうだな。スコル、料理を頼めるか。ストレルカから貰った木箱の中に、シャーフ肉×10、パン×10、リンゴ×10、バナナ×10、赤ワイン×10、塩×10、胡椒こしょう×10があるはずだ」

「……あの方の」

「ん? どうした、スコル」
「い、いえ……なんでもありません! では、何か作ってきますね」


 一瞬、怖い顔をしていたような。う~ん、最近のスコルはどこかおかしいような気がする。とにかく、夕食は任せよう。


 ◆


 食事の前に、俺はひとりで温泉へ向かった。
 この前吹き飛ばされた“仕切り”も修理し、男湯と女湯で分けた。

「完璧じゃないか。さっそく掛け湯をして……入るか」

 ゆっくり肩まで浸かっていく。
 おぉ、今日の疲れが癒えていくようだ。
 肌もツヤツヤになる効果があるようで、スコルとハヴァマールには大好評。有料温泉にしたら、儲かりそうな気がする。


 ――儲かる。

 そうだ、今日は不思議な事があった。


 バーニングスライムから、ベルリオーズ金貨と謎の地図をドロップした。どちらも、無人島にあるとは思えない代物だ。どうして、あのスライムが?

 金貨一枚を摘まんで夜空にかざす。


 ベルリオーズ金貨。
 世界で流通する貨幣であり、ほぼ使えない所はない。他にも『ヴォルムゼル銀貨』と『アリアーガ銅貨』がある。これも同じく何処でも使用可能。

 だけど、この金貨は価値も高くて、こんな場所にあるとは思えなかった。ドヴォルザーク帝国から近いから? いやいや、無人島だったんだぞ、ここは。

 それとも何か。
 あのヨハネスの落とし物だったか。

 じゃあ、地図はいったい?


「兄上、その黄金に輝くコインはベルリオーズ金貨か」
「そうなんだよ、あのバーニングスライムが落とした――って、ハヴァマール!?」


 いつの間にか俺の隣には裸のハヴァマールがいた。いつの間に浸かっていたんだァ!? てか丸裸じゃないかー! 温泉だから当然だけど!!


「顔を赤くしてどうした、兄上」
「お、お、お前……ここは男湯だぞ!」
「兄妹の仲だ。問題はない」

「そうかもしれないけど……」
「なんだ、何か問題が?」

「ハヴァマール、お前は美人すぎるんだよ……」
「…………び、美人。兄上、妹をそういう対象で見てくれるのか。ヘンタイだな!」

「う、うっさいわ! てか、兄妹って言っても一週間そこそこの付き合いもないじゃないか。意識するなって方が無理だ」

「それは嬉しいかもしれんな。……フフフ」

 フフフ、って……。
 そもそも、義理の妹・・・・だ。
 意識するなって方が無理だ。
 あぁ、もうソワソワするし、ドキドキするなぁ……。どこを見ればいいんだ。ええい、誤魔化すぞ。


「ハヴァマール、どうして金貨がこの島にある」
「うーん、あの聖騎士共が落としていったか、過去に上陸した者がいるかだな」
「過去に?」

「あくまで仮説だが、ドヴォルザーク帝国の位置する『ルサルカ大陸』の海域は、海賊が多発すると聞く。恐らくだが、伝説の海賊・アルノルトがこの島に来ていたのかもしれない」

「海賊ぅ? そんなのがいたのか」
「おる。ただ、兄上も知っての通り、グリンブルスティやバーニングスライムなどボスモンスターが発生する島だ。仮にだが、海賊たちが宝を埋めに島へ来たとするなら、そんなモンスターに遭遇し、恐れて逃げ出したのだろうな」

「ま、まさか……この“謎の地図”は……」
「海賊の地図だな」


 俺以前に上陸していたヤツがいたとはな。それが海賊だったとは! お宝が眠っている可能性があるというわけか。こりゃ、ワクワクしてきたな。
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