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聖騎士②

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 ヨハネスは豪華な装飾がなされている『レイピア』を抜いた。そうだった、そういえば、速さを重視する為だとか言っていたな。

 こちらもゲイルチュールを向け、警戒した。ヨハネスの力は、一度見ている。それに、数々の活躍も耳にしている。甘く見れば、こちらがやられる。


「スコル、お前は家に戻れ」
「で、でも……」
「裸のままだろ、風邪を引く」
「分かりました。着替えたら直ぐに戻ります」


 家の中へ戻っていくスコルを見守り、俺はヨハネスと対峙する。


「この私に勝てると思っているのか、ラスティ」
「さぁな。対人は今日が初めてだ。やってみなくちゃ分からん」

「……そう、お前は実戦経験がない。だから弱い! その手足を痛めつけ、動けなくしてやる。そして、帝国へ連れ帰ってやる」


 地面を強く踏み、ヨハネスはレイピアを向けてくる。……なんてスピードだ! もう目の前に……ゲイルチュールで防御ガードしなければ……!

 ダメだ、間に合わない!
 あまりの速さに対応しれきない。

 防衛設備で対応しようとした時だった。いきなり、レイピアが弾かれ、ヨハネスの体さえも宙を舞っていた。

 ……なんだ、何が起きた?


 状況を把握していると、別の騎士が倒れていた。いつの間にかやられているじゃないか。ヨハネスは、なんとか地面に着地し、驚いていた。


「じゃ、邪魔が入った……誰だ!」


 土埃つちぼこりの中に誰かいる。
 あの影は……なッ!!


「アルフレッド……!」
「助けに参りました、ぼっちゃん」


 その手には、敵から奪った剣が握られていた。そうか、あの倒れている騎士を倒したのはアルフレッドか。……助かったぜ。


「あ、貴方様は……アルフレッド・スナイダー卿では……!」


 顔面蒼白でがくがく、ぶるぶる震えるヨハネス。あの男が、そこまで怯える相手なのか、アルフレッドは。


「いかにも。だが、私は皇帝陛下ではなく、ラスティ・ヴァーミリオン様に仕える執事。主をお守りするためならば、元部下であろうと倒す」


 凄まじい手捌てさばきで剣を構えるアルフレッドは、独特な構えでヨハネスをたかのように睨む。……カッコイイな。


「……くッ」


 アルフレッドの存在に弱腰になるヨハネス。おいおい、あんな威勢を張っていたくせに、ビビりすぎだろう。アルフレッドは、そんなにヤベェのか。俺は戦うところを見た事がないから、実力が分からないけど……。


「どうしますかな」
「……参った」


 レイピアを地面に放り投げ、手を上げるヨハネスは降参した。……は? はぁ!? 嘘だろ。どうして、そんなアッサリ負けを認めるんだ。


「お、おい……ヨハネス、素直に帝国へ帰るんだな」
「……ああ、スナイダー卿を相手に挑むなど無謀の極み。彼が現れた瞬間から、敗北は決定した。私は早々に立ち去ろう」

 ヨハネスは、落ちている騎士を拾い上げ、浜辺を目指す。そっちにも倒れているはずだ。まあ、さすがの俺も丸腰の相手を背中から切りつける真似はしない。

 てか、アルフレッドがここまで強敵認定されているとはな。俺はそんな凄い男を執事にしているのか。知らなかったな。

「ヨハネス! 親父に伝えておけ、俺は何とか生きてるってな!」

「……分かった。だが、ラスティ……ドヴォルザーク帝国はお前を諦めないだろう。次は騎士団長が来てもおかしくはない! 覚悟しておくんだな、ちくしょおおおお……!!」


 ちくしょうって……。
 めっちゃ悔しがってるな。

 それにしても『騎士団長』か。
 一度も会った事はないし、当然、顔も知らない。この島を知られてしまった以上は今後、攻めて来るだろうな。

 島の強化を急がねば……!
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