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第415話 クァンタムの街:居酒屋

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「どういうことだ。教えろ」
「そ、それは……」

 魔物の話によれば――。
 ファインマン・ダイアグラム自体は、聖地コンスタンティンの貴族らしい。
 死にかけていたところを魔物は乗り移り、体を得たのだという。そして、このクァンタムに逃れて悪さを働いていたというわけだ。

 だが、結果はこの惨状。
 連れ去った女性達は気と欲が強すぎて、魔物でも手を焼いているようだ。

「ふむ。じゃあ、どうする」
「……だから連れ帰ってくれ。もしくは街の連中を連れてきて説得を頼みたい」
「マジかよ。もう解決じゃん」

 戦うまでもなかったのか。
 いや、こうなっては戦っても無意味だ。
 フォルも呆れていた。

「兄様。街へ戻りましょう」
「そうだな。女性達は動く気無さそうだし」


 いったん撤退し、クァンタムの街へ。
 俺たちは依頼主であるジイさんたちに事情を説明した。


「――というわけだ、ジイさん。パリティ高原の向こうの洞窟で娘たちは生きてるし、連れ戻せるぞ」
「おぉ! ありがとうございます!!


 娘をさらわれた街の人たちは、洞窟へ向かった。だが、それでも娘たちは戻らなかったらしい……。
 それほどのあの洞窟が居心地よくなっちまったんだな。


 後の事は任せ、俺とフォルはメサイアたちを待つことに。


 クァンタムの街を歩いて飲食店を探した。ぐるぐる歩いてようやく酒場を発見。そこへ入った。


「ここしかないとはな」
「ほとんどの方が娘さんたちを迎えに行ってしまったようです。空いている店がここしかないとか」

 未だに交渉が続いているとかなんとか。大変だねえ。

 酒場のマスターに酒とドラゴン肉を注文。
 しばらくしてテーブルに品が届いた。

「ご注文のバーボンとレッドドラゴン肉だ」

 久しぶりの酒。
 それと高級肉と名高いレッドドラゴンのステーキ。贅沢だねえ。


「兄様、こんな贅沢をいいのですか!?」
「たまにはいいだろ。ほら、どうせメサイア達がまだ来ないし」
「そ、それもそうですね……!」

 まだ到着まで掛かるようだし、それまでこの街でまったりしていよう。

 酒と肉を楽しみ、幸せを感じている俺。
 仕事をしたあとの飯は格別だ。
 美味い、美味すぎる……!

 フォルも酒に酔ってきたのか、顔を赤くしていた。
 聖女が飲酒しちゃっていいのか疑問だったが、もう過去に何度も飲んでいるし今更だった。
 それにこんな幸せそうな表情を見せられてはな。

「どうだ、美味いか」
「はい~。兄様の顔がグニャグニャしていますけれど……えへへ」
「酔い過ぎだろ」

 ちなみに俺は酒にめっぽう強い。
 神属性になってから、ほとんど酔わなくなった。

「兄様~…」
「おいおい」

 ゆっくりと酒を嗜んでいると、後ろの席から声がした。


「……ふぅ。ようやく落ち着けました。ここだけですよ、ひとりで過ごせる場所は」
「ん? ――って、ファインマン・ダイアグラム! なんでいるんだよ!」


 なぜかファインマン・ダイアグラムが酒を飲んでいた。いつの間に!


「なぜって? もう終わったからです。私はゆっくりしたい……」
「なんだか切実だな」
「それにしても、あなたはなぜ聖女と共に旅を?」

「仲間とはぐれてしまってね。合流して聖地へ向かうところだった」

「……ほう。聖地へ……ですか」

「邪魔すんなよ。お前、一応魔物だからな。フォルに浄化されても知らねえぞ」
「……そ、それは困りますね」

 フォルを見てゾッとするファインマン・ダイアグラム。まあ、コイツは一応人さらいだからな。俺が監視しておくか。
 不審な動きを見せれば容赦しない。

 それから、時間を潰していると――酒場の扉が開いた。

 そこには見知った顔がいた。

 ……ついに来たか!


「サトル!」
「……待っていたぜ、メサイア!」


 ようやく再開の時だ……!
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