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第399話 神聖国ネポムセイノ

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 目を開けると――そこは見知らぬ土地だった。
 しかも、なぜか俺とフォルだけという状況……。メサイアは? リースは? ベルはどこへ消えた!!

「……つーか、ここどこ?」
「あ、兄様……メサイアさんたちが見当たりません!!」
「ああ……お前のグロリアステレポートで飛んだら、バラバラに飛ばされちまったのか」
「そ、そんなはずは――うぅ。そうですね、はじめて使うスキルでしたし、あまりに強力でした。まだ使いこなせなかったっぽいです」

 ショボンと肩を落とすフォル。
 まあ、そもそも“小さき魔法使い”が使っていた特殊なスキルだ。聖女であるフォルが直ぐに使える代物スキルではないということかね。


 結果、俺たちはバラバラになってしまった――と。


「やれやれ。メサイアやリース、ベルを探さないとな」
「はい……」
「そんな責任を感じる必要はないよ、フォル。そもそも、ここはどこだ?」

「えっと……この華やかな風景、街並みは……って、まさか」


 口元を上品に押さえてハッと驚くフォル。俺も周囲を見てみるが、レメディオスよりは発展した国だなぁとは思った。

 だが。


「どうした、ここはどこなんだ?」
「わたくし、何度か訪れたことがあるんです。というか、ここって前に敵対した国ですよ。ほら、あの時の……『神聖国ネポムセイノ』です!」

「神聖国ネポムセイノ? ――って、ギガントゴーレムMARK85を放ってきたヤベェ国じゃん。なんてところに来たんだよ。俺たちはアーサーのいる国へ行くんじゃなかったのかよ」

「ご、ごめんなさい……」
「いや、泣くなって」

 フォルをなだめていると、太っちょの男が現れ俺に話しかけてきた。

「おい、そこの男」
「な、なんです?」
「そのシスター服の少女、美人だな」


 ……まて、このヤリトリは何度かしたことがあるぞ。まさかな。


「俺の仲間ですけど」
「その少女、高く買うぞ」

「はぁ?」

「私はこの神聖国ネポムセイノの貴族でね。伯爵でもあるのだよ。今、美人で若い少女を迎え入れていてね、なかなか理想の者が現れない。だが、そこのシスター服の少女は素晴らしい。ぜひ、売ってくれ」

 なに言ってんだこのオッサン。俺もオッサンだけど。てか、いきなり失礼なヤツだな。

「黙れ貴族。俺は貴族ってヤツが大嫌いなんだ。この世界は自由であるべきなんだよ」
「き、貴様……無礼であるぞ!」

 どっちが無礼だ。
 あえて言ってないが、新世界の“神王アルクトゥルス”はこの俺だ。まあ、いちいち目くじら立てて言うほどではないがな。


「俺たちに構うな」
「そうはいかん。この国では貴族が上。愚鈍で浅ましい平民は、ただ平伏していればよいのだ」

 ひでぇ言いようだな。
 そうか、この国が以前攻めてきた理由も分かる。貴族はクソだ!

「あ、兄様……なんだか怖いです」
「大丈夫だ、フォル。俺が守ってやる」
「……はい」

 その時、貴族がステッキを向けてきた。

「こうなったら貴様を平伏させてやる」
「ほぉん?」
「その冴えない顔をギタギタにしてやろう」


 貴族の男――伯爵は、ステッキから魔法のようなものを繰り出してきた。――マジかよ!!

 しかも、これは闇属性魔法じゃないか。どこが『神聖国』なんだ。禍々しい力を持つなんて。


 だが、その攻撃が俺に到達する前に【オートスキル】が発動した。
 炸裂する反撃スキル『煉獄』。

 俺の初期の初期スキルだが――健在だ。


 圧倒的な火力を持つ炎は、竜の形となり闇属性魔法を捕食した。そのまま伯爵まで到達し、頭だけを燃やした。


「ぎゃああああああッッ!!! わ、私の頭があああああ、燃えるううううう!!!」


 慌てて傍にあった噴水へ頭から突っ込む男。馬鹿な奴め。


「さあ、行こうか、フォル」
「さすが兄様です!! かっこいい」
「ああ、知ってる」


 俺はフォルの手を繋ぎ、噴水広場から去っていく。神聖国ネポムセイノか、少しだけ観光してみるかね。
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