上 下
390 / 440

第390話 極魔法使いと闇の勇者

しおりを挟む
 七色の光が晴れると、そこには――


「……あの子は? む?」
「理くん、油断しちゃダメだよ!!」


 ベルが俺の前にやってきてシールドスキルを張った。おかげで、少女から放たれた魔法を防いだ。ありがてえ。


「すまん、ベル」
「いいってことさ。それより、あの魔法使いの女の子、かなり……いや、ヤバイほどに強いね。わたしの盾ももう限界だよ」

「マジかよ」


 ベルのシールドスキルは、数秒で解除されて消失。……やっべ! 俺は、ベルを抱えて回避。その次には【超覚醒・オートスキル】が反応し、反撃を開始した。



『血の煉獄!!!』



 血の炎がほとばしり、大地を駆ける。
 それはすぐさま、あの少女に激突しかける。


「…………っ!」


 少女は不思議な力・ソウルフォースで俺の炎を止めた。やっぱり、あのジェネシスと同じ力か。なるほど、あれは厄介すぎるな。

 状況を見守っていると、少女は『テレポート』を繰り返す。なんてヤツだよ。そんな事も可能なのか。


 だが、俺の【超覚醒・オートスキル】も万能で、少女の出て来る場所を的確に狙う。すごいな、ここまで進化したのか『オートスキル』は!!


「サトル、こっちは補助もしているけど、ぜんぜん仕留められないわね」


 俺にずっと補助支援するメサイアが口を開く。


「そうだな、思った以上に面倒な相手だ。フォルの支援も受けているし、リースの大魔法だって乱発してるのに、あの子はたったひとりで全部なんとかしている。まさにバケモノだよ」


 本当に何者なんだ。
 あんな小さな少女が……なぜ、ここまでの力を持つんだ?


 今度は『ホーリークロス』が爆発的な連鎖を見せ、少女を追い込む。どうやら、俺はほとんど立っているだけでいいらしいな。

 しかし、相手はテレポートを繰り返し、回避しまくっている。キリがねぇな。一度、俺はオートスキルを止めた。


「聞かせてくれ! 君は何者だ?」
「…………」


 少女は少し離れた場所に現れ、俺を深緑の瞳で見据えた。


「教えてくれ」
「……あたしの名は『フォース』。世界から天帝と呼ばれている人物は【バテンカイトス】であり、あたしの夫」

「へ……はぁ!? ま、待ってくれ。君、かなり幼いけど……天帝と結婚しているのかい?」

「そう。ちなみに、あたしの種族に年齢はないし、関係ない。……でも、これは彼の創り出した幻想、……でも、それでも、あたしは彼と再会できて嬉しかった。だから……」


 フォースは、手をこちらに向ける。本気ってわけか……なら、こっちもガチでいくしかないだろ。あんな小さな子相手は少々心苦しくはあるが、致し方あるまい。


「サトルさん、いいんですか!?」
「ああ、リース。相手は本気だ。こっちが殺されちまうよ」

「で、でも……」


 リースは不安気に俺を見る。
 分かっている。
 だが、頂上に辿り着かねば、俺たちは天帝を倒せない。それに、あの子は言っていた。『幻想、』と。つまり、最下層で会った女性も、この少女も……天帝の創り出した幻なんだ。


 なら……!



 俺は最強の武器『世界終焉剣・エクスカイザー』を取り出し、構えた。これしかないだろ。



「……!」


 フォースは身構える。
 どうやら、この剣の威力は知っているようだな。


「悪いが、そこを通して貰うぞ」
「……っ! ……ユメ」


 ぽつっとフォースが名前をつぶやく。
 悪いが消滅してもらう。

 俺が『世界終焉剣・エクスカイザー』を振りかぶり、一瞬で彼女の間合いに入った時だった。突如として、黒いもやが発生して、俺と彼女の間を遮った。


「――――くっ!!」


 いきなり『闇』が広まったんだ。


「兄様、これは!!」
「フォル、みんな、くるな! この『闇』は見たことがある。アイツ・・・だ……!!!」


 広がる闇の中、異常な色を放つ人影が現れる。……こいつは驚いた。頂上に着く前に、本人が登場しやがった。



『…………』



 なんて不吉で禍々しい闇だ。
 間違いない……『天帝・ツァラトゥストラ』だ。



「……ようやく、おでましか」


 酷い闇の中、俺はヤツを睨みつけた。


『まさかフォースがやられる寸前まで苦戦するとはな。……おいおい、大丈夫か』
「うん、ユメ・・。どこもケガしていないよ。というか、幻だし」
『それもそうだけどな。まあ、極魔法使いアルティメットウィザードがそう簡単に負けるわけないか』


 あの親し気な感じ、本当に夫婦のようだな。にしても、天帝の方は……? えっ……あれが天帝?


「……サトル、あの天帝って少年よ!?」


 驚くメサイア。いや、フォルやリース、ベルも驚愕していた。あの世界を支配する人物が爽やかな少年だったのだからな。

 しかも、あのフォースから『ユメ』と親し気に名前を呼ばれていた。それか本当の名前か。なら、俺はヤツを止める。


「おい、お前!」
「……よう、理。とりあえず、一発は一発だ」
「はぁ?」

 天帝が手をこちらに向けてくる。
 その刹那で莫大で広大な『闇』が襲ってきやがった。……例のアレか!



『イベントホライゾン――――――!!!』



 こんなもん、まともに喰らったら即死だ。だがこっちは――!



『世界終焉剣・エクスカイザー!!!!!』



 同じく、闇の波動を放つ。

 闇と闇が衝突し、拮抗する。

 激しくぶつかり合い、せめぎ合う。


「……世界終焉剣・エクスカイザーだと? ふっ、なつかしいモン使ってくれるじゃないか」

「なんだと?」

「その昔、その剣は『勇者』である俺のモンだった。だが、勇者を辞めた俺はそいつを手放してしまってね」


 ゆ、勇者だって?
 そんな人物がこの世界にいたのか。

 でも、勇者が世界を支配?
 それじゃあ、魔王じゃねえか。


「お前は何が目的なんだ……天帝!」
「俺は、海の底に沈んだ楽園『バテンカイトス』を取り戻したい。それだけが願いだ。その為にも世界を支配し、蹂躙する必要があった」

「やっぱり、お前は勇者なんかではないな。魔王だ」

「……いや、俺は『闇の勇者』……闇そのもの・・・・・だ」


 ――なら、倒すっきゃねぇよなァ!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

拝啓、お父様お母様 勇者パーティをクビになりました。

ちくわ feat. 亜鳳
ファンタジー
弱い、使えないと勇者パーティをクビになった 16歳の少年【カン】 しかし彼は転生者であり、勇者パーティに配属される前は【無冠の帝王】とまで謳われた最強の武・剣道者だ これで魔導まで極めているのだが 王国より勇者の尊厳とレベルが上がるまではその実力を隠せと言われ 渋々それに付き合っていた… だが、勘違いした勇者にパーティを追い出されてしまう この物語はそんな最強の少年【カン】が「もう知るか!王命何かくそ食らえ!!」と実力解放して好き勝手に過ごすだけのストーリーである ※タイトルは思い付かなかったので適当です ※5話【ギルド長との対談】を持って前書きを廃止致しました 以降はあとがきに変更になります ※現在執筆に集中させて頂くべく 必要最低限の感想しか返信できません、ご理解のほどよろしくお願いいたします ※現在書き溜め中、もうしばらくお待ちください

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが

倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、  どちらが良い?……ですか。」 「異世界転生で。」  即答。  転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。  なろうにも数話遅れてますが投稿しております。 誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。 自分でも見直しますが、ご協力お願いします。 感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...