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第384話 果てしなき死の塔
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百層から更に上へ。
この【死の要塞国・デイ】に果てはあるのだろうかと疑いたくなる程に階段はまだ続いていた。
「誰ともすれ違わないし、変わらない風景だから退屈ね……。もうウンザリよ」
舌を出し、ぜぇぜぇと息を荒げるメサイアは疲れ切っていた。足も鈍っているし、う~ん、そろそろ休憩だな。
「そうだなぁ、いくら塔って言っても限度がある。これは階が高すぎるな。なんとか一気に頂上まで行く方法とかないかなぁ」
腕を組み、天井を見上げてもそこには闇しかない。なんてツマラン風景だ。
こんな時は――癒し系エルフのリースでも眺めるか。今や階段に腰掛けて頬を朱色に染めていた。う~ん、見ているだけで癒されるなあ。……って、待てよ。リースのテレポートなら? いや、ダメだ。テレポートは基本的にはランダムだし、正確に飛ぶには座標が必要だ。
何かないものかと俺は腰を下ろす。
すると、フォルが目の前に。
「兄様、お悩みですね?」
「まあな。だから、今は休憩だな。外は夜だろうし……腹も減ったな。非常食は持って来ているから、メサイアに出して貰うか」
女神スキル『ホワイト』は、万能のアイテムボックスだ。ほぼ無限にアイテムを収納できるだけでなく、その空間に入る事も可能なのだ。
「そうね、そろそろお腹空いたし、こんな階段だけどキャンプをしましょうか」
メサイアは白い空間を展開し、そこへ手を突っ込んでいた。ゴソゴソと食料やら調理器具を取り出していく。
その様子を眺めていると、俺の股間に違和感が――ぐぅ!?
「フォ、フォル……お前」
「えへへ♡ さっきのお返しです♡」
「お、おま……俺のそこを足でグリグリするな」
「仕方ないでしょう。兄様には見られてしまったんですから……そのお詫びをしないといけません」
お詫びなのかよ。
くそっ、ヘンタイ聖女め……生足でやりおってからに最高かよ。なんて遊んでいる場合ではない!
「もう大人しくしてろって。ほら」
俺は、フォルの生足を引っ張って抱き寄せる。ぽんっと俺の胸の中に小さな体が入ってきた。
「あぁん♡ 兄様のお顔が近いです♡」
なんてやっとると、リースも積極的に接近してきた。おやぁ?
「いつもフォルちゃんばかりズルいです! あたしだって負けていられないんですからッ」
「じゃあ、二人で兄様を分け合いましょう」
聖女は寛容か。
まあいい、二人とも纏めて相手しよう。
◆
フォルとリースとイチャイチャしていれば、全てが整っていた。料理はフォルが進めてくれ、まさか【死の要塞国・デイ】で豪華な飯を食う事になろうとはな。
でも仕方ない。
まだまだ遠いんだから。
「やっぱり、フォルの作る調理は絶品だな。うん、このガイザードラゴンのステーキ美味すぎるだろ! これ、俺が聖女ヘデラの時に採ったヤツじゃん。やるな」
「そうです、ネメシアから戴いたものです」
フォルの言う事に納得した。
そうか、ネメシアがお裾分けしていたんだな。……そういえば、レメディオスの方も今、中々大変な事になっていた。
ネメシアの方にも届いていた『死の招待状』を奪い返しに来たという刺客が出現していた。どうやら、元々の持ち主らしい。まあ、それは別の機会にだな。
今はこっちに集中だ。
「ネメシアか……」
ぽつりとメサイアが淋しそうにつぶやく。
「大丈夫だよ、ヘデラがついているんだから」
「そうね、娘を頼むわよ。こっちはこの上にいる天帝を倒さなきゃなんだから。――で、サトル、なにか良い方法は思いついた?」
「いやぁ、これがサッパリ。でも、何か方法があるはずなんだよなぁ……俺は重大な何か忘れている気がする」
方法はあるはずなんだが、イマイチ思い出せないでいた。多分、普段は【オートスキル】とか聖槍しか使わないからな。
「いっそ、内部から爆破しちゃえばいいんじゃない。ほら、外は頑丈でも中はそうとも限らないでしょ?」
メサイアは奇抜な発想をした。
……そして、俺に全身に電気が駆け巡った。
バリバリっとな!
「それだよ! メサイア、ナイスアイディアだよ!! さすが女神、お前最高すぎ! 抱き締めさせろ!!」
俺はメサイアを強く抱き締めた。
「ちょっ、サトル!? 本当に塔を爆破するつもり? さすがにマズイと思うけど……」
「違うよ。爆破はしない。その爆破で思い出したんだよ。爆発だ。俺には爆発の『ニトロ』スキルがある。なんで忘れていたんだろうな!!」
「ああ、そうか! その手があったわね。飛行ではないけれど、浮遊は出来るものね。定員も三人くらいなら余裕だっけ?」
「そうだ。前にそれくらいの人数でも抱えきれていただろう。あれは確か、太陽島サンデシマの時だ」
建物が崩壊したあの時、脱出にニトロを使っている。しかも、皆を抱えてな!
「さすがわたくしの兄様です♡ ちゅーしてあげますっ♡」
「サトルさんの力なら、浮いて行けるわけですね。素晴らしいです!」
いける……いけるぞ!!
フフフフ、フハハハハハッ!!
この【死の要塞国・デイ】に果てはあるのだろうかと疑いたくなる程に階段はまだ続いていた。
「誰ともすれ違わないし、変わらない風景だから退屈ね……。もうウンザリよ」
舌を出し、ぜぇぜぇと息を荒げるメサイアは疲れ切っていた。足も鈍っているし、う~ん、そろそろ休憩だな。
「そうだなぁ、いくら塔って言っても限度がある。これは階が高すぎるな。なんとか一気に頂上まで行く方法とかないかなぁ」
腕を組み、天井を見上げてもそこには闇しかない。なんてツマラン風景だ。
こんな時は――癒し系エルフのリースでも眺めるか。今や階段に腰掛けて頬を朱色に染めていた。う~ん、見ているだけで癒されるなあ。……って、待てよ。リースのテレポートなら? いや、ダメだ。テレポートは基本的にはランダムだし、正確に飛ぶには座標が必要だ。
何かないものかと俺は腰を下ろす。
すると、フォルが目の前に。
「兄様、お悩みですね?」
「まあな。だから、今は休憩だな。外は夜だろうし……腹も減ったな。非常食は持って来ているから、メサイアに出して貰うか」
女神スキル『ホワイト』は、万能のアイテムボックスだ。ほぼ無限にアイテムを収納できるだけでなく、その空間に入る事も可能なのだ。
「そうね、そろそろお腹空いたし、こんな階段だけどキャンプをしましょうか」
メサイアは白い空間を展開し、そこへ手を突っ込んでいた。ゴソゴソと食料やら調理器具を取り出していく。
その様子を眺めていると、俺の股間に違和感が――ぐぅ!?
「フォ、フォル……お前」
「えへへ♡ さっきのお返しです♡」
「お、おま……俺のそこを足でグリグリするな」
「仕方ないでしょう。兄様には見られてしまったんですから……そのお詫びをしないといけません」
お詫びなのかよ。
くそっ、ヘンタイ聖女め……生足でやりおってからに最高かよ。なんて遊んでいる場合ではない!
「もう大人しくしてろって。ほら」
俺は、フォルの生足を引っ張って抱き寄せる。ぽんっと俺の胸の中に小さな体が入ってきた。
「あぁん♡ 兄様のお顔が近いです♡」
なんてやっとると、リースも積極的に接近してきた。おやぁ?
「いつもフォルちゃんばかりズルいです! あたしだって負けていられないんですからッ」
「じゃあ、二人で兄様を分け合いましょう」
聖女は寛容か。
まあいい、二人とも纏めて相手しよう。
◆
フォルとリースとイチャイチャしていれば、全てが整っていた。料理はフォルが進めてくれ、まさか【死の要塞国・デイ】で豪華な飯を食う事になろうとはな。
でも仕方ない。
まだまだ遠いんだから。
「やっぱり、フォルの作る調理は絶品だな。うん、このガイザードラゴンのステーキ美味すぎるだろ! これ、俺が聖女ヘデラの時に採ったヤツじゃん。やるな」
「そうです、ネメシアから戴いたものです」
フォルの言う事に納得した。
そうか、ネメシアがお裾分けしていたんだな。……そういえば、レメディオスの方も今、中々大変な事になっていた。
ネメシアの方にも届いていた『死の招待状』を奪い返しに来たという刺客が出現していた。どうやら、元々の持ち主らしい。まあ、それは別の機会にだな。
今はこっちに集中だ。
「ネメシアか……」
ぽつりとメサイアが淋しそうにつぶやく。
「大丈夫だよ、ヘデラがついているんだから」
「そうね、娘を頼むわよ。こっちはこの上にいる天帝を倒さなきゃなんだから。――で、サトル、なにか良い方法は思いついた?」
「いやぁ、これがサッパリ。でも、何か方法があるはずなんだよなぁ……俺は重大な何か忘れている気がする」
方法はあるはずなんだが、イマイチ思い出せないでいた。多分、普段は【オートスキル】とか聖槍しか使わないからな。
「いっそ、内部から爆破しちゃえばいいんじゃない。ほら、外は頑丈でも中はそうとも限らないでしょ?」
メサイアは奇抜な発想をした。
……そして、俺に全身に電気が駆け巡った。
バリバリっとな!
「それだよ! メサイア、ナイスアイディアだよ!! さすが女神、お前最高すぎ! 抱き締めさせろ!!」
俺はメサイアを強く抱き締めた。
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