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第362話 祝福の鐘 - フォーチュン -
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まさか肉体を失う羽目になるとはな。
男の、サトルの身体は失われた。だが、同時に俺はヘデラを動かしていたわけで、すぐに聖女で現場へ駆けつけた。
けれど、ひとりで向かえばまた同じ。
ならばと、ネメシアを連れて俺はメサイア邸へ。そこからリースのテレポートで瞬間移動したわけだ。
「分かったか!?」
「ヘデラ、死神王とかさ……なにそれ」
ネメシアが不審な物を見るような眼で俺を見ていた。ですよね~~~! いきなり、死神王とか言われても意味不明だよな。
「とにかくだ、あのバケモノを倒す。その為にもネメシアとメサイアの力が……女神の白き力が必要なんだよ。頼む、ヤツを弱らせてくれ……トドメは俺が刺す」
「……分かったわ。じゃあ、ママと共に行くっきゃないでしょ!」
こくっと頷くメサイアは、ネメシアと息を合わせて移動を開始した。おお、いいね。あの走りっぷり。
「姉様もネメシアも素晴らしい動きですよ、兄様」
「ああ、これなら勝てるかもしれん。なんたって二人は女神だからな」
突っ走っていく二人は、死神王を前にして――
『シュネーヴァイス――――!!!』
『シュネーヴァイス――――!!!』
白き力を撃ち放った。
「女神か……久しぶりに見たが、脅威ではない。確かに技を受ければ、我が肉体は崩れ落ちる。それで死ぬようなら死神王などになっておらぬわ!!」
抵抗するハロスは、白き光を浴びつつもメサイアに手を伸ばしていた。……ウソだろ、あんなズタボロになっても尚、動くのかよ。マジのバケモンだ。
「メサイア! ネメシア!!」
「まだまだあああああああ!」
「たぁぁぁぁぁああああああ!」
二人共全力全開の『シュネーヴァイス』を追加した。
「ご、ごぉぉぉぉおおぉぉぉ…………ッ!」
ついに押されていくハロス。これなら……!
「それでもだ!!!」
しつけぇ!!
まだ抵抗すんのかよ。あれだけ大ダメージを受けても肉体が滅びないとは、なんて耐久力だよ。ふざけてやがる。
――なら、トドメだ!!
「いくぜ……!」
黄金の槍を生成した。
「ネメシア、頼む!!」
「今ね、分かったわ! ホワイトエンチャント!!」
女神の力を槍に付与して貰った。
これで白き力が聖槍に宿った。つまり、女神と同じ力を行使できるわけだ。これで倒す……!
「くらいやがれええええええええええええええ……!!」
全力投球で俺は、ブン投げた。
『――――――真・覚醒聖槍・ロンゴミニアドぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!!!!!』
「ぶあかなぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁ…………!!」
――槍は死神王を穿ち、倒した。
「……勝ったのか」
「死神の気配は確認できないわ。うん、勝ったみたいよ、ヘデラ」
メサイアから教えて貰い、勝利を確認した。
やった……やったぞ。
まさか男の方がやられるとは思わなかったけどな。でも、勝利は勝利だ。これで、無事に立て直せそうだな。
「ふぅ」
「お疲れ様、ヘデラ」
「おう、ネメシア、お前もありがとな」
「ううん。ヘデラの為だもん。また困ったら言ってね」
「ああ。メサイアやフォル、リースもありがとな」
みんなウンウン頷き、笑った。
……さて、世界ギルドが気掛かりだが。
◆
「こちらは数名が負傷したがな……幸い、地下シェルターがあったから、そこへ避難していたがな」
ぼむぼむから報告を受けた。
見知った顔のメンバーが地下から出て来たわけだが、まさか、あの会議室に地下室があったとはな。
「そうか……全員無事とはいかなかったか。まあでも犠牲者はゼロか。すげえな」
「ああ、まさか死神王が奇襲を掛けてくるとは思わなかった。これはどういう事だ、聖女・ヘデラ様」
「分からん。ヤツは『フォーチュンの導き』だとか抜かしていたが」
「なんだって……それは、フォルトゥナ様の……。なるほど、導きか」
「なんか知ってるのか、ぼむぼむ」
「わからん」
「わからんのかーい!」
聞いた俺が馬鹿だった。
メサイア達の方へ戻り、改めて無事を確認した。
「ヘデラ、私たちは世界ギルドの人達の治療に回る。ネメシアをお願いね」
「分かった。てわけだ、ネメシア、いったん帰るぞ」
「え、もう帰るの? わたしも治癒とか」
「大丈夫さ。メサイア達が何とかしてくれる。お前の体が一番大切だからな、無理して欲しくないんだ」
そう、本当ならネメシアを巻き込みたくはなかった。でも、女神の力が必要だった。だから無視はできなかったわけだ。
「気遣ってくれてありがとう。でもいいの、わたしもヘデラの役に立ちたいから」
「……ネメシア」
うぅ、ネメシアは本当にイイ子すぎるう!
お父さん泣きそう。
「し、仕方ないなぁ」
「うんうん」
結局、ネメシアも一緒に治療チームに加わった。
◆
――三日後。
「屋敷は吹っ飛んじまったけど、復興中らしいな」
俺はメサイアに確認していた。
「ええ。あとサトルの肉体だけど、ぼちぼち復活できると思う。スターダストは万能の願望器だけど、その使用には三日に一度という制約あるからね」
その通り、面倒な仕様があった。
それを解除できるか試したが、出来なかった。
こればかりは、どうしようもない。
「さて、俺はフォルのところへ」
「ええ、任せたわ」
◆
レメディオス教会へ向かった。
中へ入れば、祈りを捧げるフォルトゥナの姿。
毎日ながら、銀髪が煌めいていて綺麗だ。
「――――兄様、ですね」
「お前、後頭部に第三の眼でもあるのか?」
「気配で分かりますよ。兄様の気配は、女性であったとしても分かりますから。といいますか、愛です。そう、愛の力なのです」
すげぇなおい。
「フォル、聞きたいのはひとつだ」
「分かっています。フォーチュン様ですね」
「それだ」
こちらへ振り向くフォルは、両眼をオッドアイではなく『桃色』にしていた。……いつもとは違う雰囲気だ。
『――――ふふふ、はじめましてでもないですね。理』
フォルトゥナを依り代に降臨したか。
やっぱり、彼女の加護は本物。
「フォーチュン、かなり前振りだな。今回のは何の嫌がらせだ? 今まで、こんな面倒な事はしなかったはずだ。なぜ敵対みたいな事を」
『死神王が言っていたでしょう。導きだと……つまりこれは、運命です。貴方の『死神王の邪眼』は、これからの戦いにおいて邪魔になる存在でした。そのまま眼に宿していようものなら、絶望的な未来しかなかった。それを是正してあげたのですよ』
「なんだって!? ふざけんな……こっちは犠牲者は……出てないけど、負傷者は出たんだぞ」
『どのみち、あのまま邪眼を放置していれば周囲を巻き込み、レメディオスどころか全ての国を焼き尽くしていたのですよ。世界の終焉が訪れていたでしょうね』
世界の終焉……馬鹿な。
あの邪眼が?
「詳しく話せ」
『死神王の邪眼は、元を正せば『バテンカイトスの眼』なのですよ。つまり、神眼なんです。それも、とびっきりの闇に染まったものでして、これが大変な代物でして……』
「ま、まってくれ。邪眼は、死神のものじゃなかったって事か?」
「そうです。死神とは、バテンカイトスから生まれし存在。彼は――そう、闇なんです。その闇から派生している存在が『天帝』だったりもしますが」
おいおい……意味が分からなくなってきた。
どういうことやねん。
「そういえば、三人の神様がいるって言っていたな。アルクトゥルス、フォーチュン、バテンカイトス……この三人だ。つまりなんだ、バテンカイトスってのは悪者なのか?」
『いいえ、必要悪です。彼がいなければ善も悪もなかった。世界には悪も必要なんですよ。それが世界の理、バランス』
アルクトゥルスが善なら、バテンカイトスが悪って所かね。フォーチュンは中立とか?
「で、俺はこれからどうすればいい?」
『アルクトゥルスになって戴きたい』
「―――――はい?」
『現在、アルクトゥルスの存在は不在。かつての彼は消えてしまったのです。だから、理、あなたが相応しい』
そや、以前、神王から勧誘されまくっていたな、俺。今度はフォーチュンから推薦ってわけか。ああもう、面倒な。
「俺は神様になる気は……」
『それは困りましたね。このままでは天帝が神の座に』
「う……分かった。暫定って事で」
『よろしい。それでは、次は大幹部と戦いなさい。エロスにいるアーサーやグランドクロス軍と合流し、先に敵を叩くのです。ですが、その前に力を覚醒させた方がいいかもしれませんね』
「俺にまだ強くなる余力があったとはな」
『ええ、そのままでは天帝には勝てません』
「マジかよ」
『わたくしが言うのだから、間違いありません。とにかく、一度、エロスへ向かってみると良いでしょう』
「分かったよ。そろそろ、フォルを返してくれ」
『せっかちですね~。了解です。それではまた逢いましょう……アルクトゥルス様』
「――――なっ!」
神の名で呼ばれ、俺はギョっとした。
おいおい、まだ成るって言ってねえけど!
「……? あれ、兄様」
どうやら意識が戻ったらしい。
フォルは俺を不思議そうに見つめていた。
「よう、フォル……」
「あのぅ、どうして教会へ?」
「お前が心配になったんだよ。それに、フォルは大事だからな」
「……兄様。うれしい!」
ぴょんと飛び跳ねて抱きついてくる。
「ぐあ! 馬鹿、俺の胸でスリスリすんな!」
「いいではありませんか、いいではありませんか!! うわぁ、兄様のすごぉぉぉい!」
「わああああ……! ヘンタイ聖女!」
◆
俺が神様ねぇ。
俺にはそんな資格はないと思うけどな。
だって――、
俺は超絶面倒臭がりのおっさんなんだぜ。
教会を出ると、祝福の鐘が響いた。
三時のおやつになると必ず成る福音。
――そっか、これも導きか――
男の、サトルの身体は失われた。だが、同時に俺はヘデラを動かしていたわけで、すぐに聖女で現場へ駆けつけた。
けれど、ひとりで向かえばまた同じ。
ならばと、ネメシアを連れて俺はメサイア邸へ。そこからリースのテレポートで瞬間移動したわけだ。
「分かったか!?」
「ヘデラ、死神王とかさ……なにそれ」
ネメシアが不審な物を見るような眼で俺を見ていた。ですよね~~~! いきなり、死神王とか言われても意味不明だよな。
「とにかくだ、あのバケモノを倒す。その為にもネメシアとメサイアの力が……女神の白き力が必要なんだよ。頼む、ヤツを弱らせてくれ……トドメは俺が刺す」
「……分かったわ。じゃあ、ママと共に行くっきゃないでしょ!」
こくっと頷くメサイアは、ネメシアと息を合わせて移動を開始した。おお、いいね。あの走りっぷり。
「姉様もネメシアも素晴らしい動きですよ、兄様」
「ああ、これなら勝てるかもしれん。なんたって二人は女神だからな」
突っ走っていく二人は、死神王を前にして――
『シュネーヴァイス――――!!!』
『シュネーヴァイス――――!!!』
白き力を撃ち放った。
「女神か……久しぶりに見たが、脅威ではない。確かに技を受ければ、我が肉体は崩れ落ちる。それで死ぬようなら死神王などになっておらぬわ!!」
抵抗するハロスは、白き光を浴びつつもメサイアに手を伸ばしていた。……ウソだろ、あんなズタボロになっても尚、動くのかよ。マジのバケモンだ。
「メサイア! ネメシア!!」
「まだまだあああああああ!」
「たぁぁぁぁぁああああああ!」
二人共全力全開の『シュネーヴァイス』を追加した。
「ご、ごぉぉぉぉおおぉぉぉ…………ッ!」
ついに押されていくハロス。これなら……!
「それでもだ!!!」
しつけぇ!!
まだ抵抗すんのかよ。あれだけ大ダメージを受けても肉体が滅びないとは、なんて耐久力だよ。ふざけてやがる。
――なら、トドメだ!!
「いくぜ……!」
黄金の槍を生成した。
「ネメシア、頼む!!」
「今ね、分かったわ! ホワイトエンチャント!!」
女神の力を槍に付与して貰った。
これで白き力が聖槍に宿った。つまり、女神と同じ力を行使できるわけだ。これで倒す……!
「くらいやがれええええええええええええええ……!!」
全力投球で俺は、ブン投げた。
『――――――真・覚醒聖槍・ロンゴミニアドぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!!!!!』
「ぶあかなぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁ…………!!」
――槍は死神王を穿ち、倒した。
「……勝ったのか」
「死神の気配は確認できないわ。うん、勝ったみたいよ、ヘデラ」
メサイアから教えて貰い、勝利を確認した。
やった……やったぞ。
まさか男の方がやられるとは思わなかったけどな。でも、勝利は勝利だ。これで、無事に立て直せそうだな。
「ふぅ」
「お疲れ様、ヘデラ」
「おう、ネメシア、お前もありがとな」
「ううん。ヘデラの為だもん。また困ったら言ってね」
「ああ。メサイアやフォル、リースもありがとな」
みんなウンウン頷き、笑った。
……さて、世界ギルドが気掛かりだが。
◆
「こちらは数名が負傷したがな……幸い、地下シェルターがあったから、そこへ避難していたがな」
ぼむぼむから報告を受けた。
見知った顔のメンバーが地下から出て来たわけだが、まさか、あの会議室に地下室があったとはな。
「そうか……全員無事とはいかなかったか。まあでも犠牲者はゼロか。すげえな」
「ああ、まさか死神王が奇襲を掛けてくるとは思わなかった。これはどういう事だ、聖女・ヘデラ様」
「分からん。ヤツは『フォーチュンの導き』だとか抜かしていたが」
「なんだって……それは、フォルトゥナ様の……。なるほど、導きか」
「なんか知ってるのか、ぼむぼむ」
「わからん」
「わからんのかーい!」
聞いた俺が馬鹿だった。
メサイア達の方へ戻り、改めて無事を確認した。
「ヘデラ、私たちは世界ギルドの人達の治療に回る。ネメシアをお願いね」
「分かった。てわけだ、ネメシア、いったん帰るぞ」
「え、もう帰るの? わたしも治癒とか」
「大丈夫さ。メサイア達が何とかしてくれる。お前の体が一番大切だからな、無理して欲しくないんだ」
そう、本当ならネメシアを巻き込みたくはなかった。でも、女神の力が必要だった。だから無視はできなかったわけだ。
「気遣ってくれてありがとう。でもいいの、わたしもヘデラの役に立ちたいから」
「……ネメシア」
うぅ、ネメシアは本当にイイ子すぎるう!
お父さん泣きそう。
「し、仕方ないなぁ」
「うんうん」
結局、ネメシアも一緒に治療チームに加わった。
◆
――三日後。
「屋敷は吹っ飛んじまったけど、復興中らしいな」
俺はメサイアに確認していた。
「ええ。あとサトルの肉体だけど、ぼちぼち復活できると思う。スターダストは万能の願望器だけど、その使用には三日に一度という制約あるからね」
その通り、面倒な仕様があった。
それを解除できるか試したが、出来なかった。
こればかりは、どうしようもない。
「さて、俺はフォルのところへ」
「ええ、任せたわ」
◆
レメディオス教会へ向かった。
中へ入れば、祈りを捧げるフォルトゥナの姿。
毎日ながら、銀髪が煌めいていて綺麗だ。
「――――兄様、ですね」
「お前、後頭部に第三の眼でもあるのか?」
「気配で分かりますよ。兄様の気配は、女性であったとしても分かりますから。といいますか、愛です。そう、愛の力なのです」
すげぇなおい。
「フォル、聞きたいのはひとつだ」
「分かっています。フォーチュン様ですね」
「それだ」
こちらへ振り向くフォルは、両眼をオッドアイではなく『桃色』にしていた。……いつもとは違う雰囲気だ。
『――――ふふふ、はじめましてでもないですね。理』
フォルトゥナを依り代に降臨したか。
やっぱり、彼女の加護は本物。
「フォーチュン、かなり前振りだな。今回のは何の嫌がらせだ? 今まで、こんな面倒な事はしなかったはずだ。なぜ敵対みたいな事を」
『死神王が言っていたでしょう。導きだと……つまりこれは、運命です。貴方の『死神王の邪眼』は、これからの戦いにおいて邪魔になる存在でした。そのまま眼に宿していようものなら、絶望的な未来しかなかった。それを是正してあげたのですよ』
「なんだって!? ふざけんな……こっちは犠牲者は……出てないけど、負傷者は出たんだぞ」
『どのみち、あのまま邪眼を放置していれば周囲を巻き込み、レメディオスどころか全ての国を焼き尽くしていたのですよ。世界の終焉が訪れていたでしょうね』
世界の終焉……馬鹿な。
あの邪眼が?
「詳しく話せ」
『死神王の邪眼は、元を正せば『バテンカイトスの眼』なのですよ。つまり、神眼なんです。それも、とびっきりの闇に染まったものでして、これが大変な代物でして……』
「ま、まってくれ。邪眼は、死神のものじゃなかったって事か?」
「そうです。死神とは、バテンカイトスから生まれし存在。彼は――そう、闇なんです。その闇から派生している存在が『天帝』だったりもしますが」
おいおい……意味が分からなくなってきた。
どういうことやねん。
「そういえば、三人の神様がいるって言っていたな。アルクトゥルス、フォーチュン、バテンカイトス……この三人だ。つまりなんだ、バテンカイトスってのは悪者なのか?」
『いいえ、必要悪です。彼がいなければ善も悪もなかった。世界には悪も必要なんですよ。それが世界の理、バランス』
アルクトゥルスが善なら、バテンカイトスが悪って所かね。フォーチュンは中立とか?
「で、俺はこれからどうすればいい?」
『アルクトゥルスになって戴きたい』
「―――――はい?」
『現在、アルクトゥルスの存在は不在。かつての彼は消えてしまったのです。だから、理、あなたが相応しい』
そや、以前、神王から勧誘されまくっていたな、俺。今度はフォーチュンから推薦ってわけか。ああもう、面倒な。
「俺は神様になる気は……」
『それは困りましたね。このままでは天帝が神の座に』
「う……分かった。暫定って事で」
『よろしい。それでは、次は大幹部と戦いなさい。エロスにいるアーサーやグランドクロス軍と合流し、先に敵を叩くのです。ですが、その前に力を覚醒させた方がいいかもしれませんね』
「俺にまだ強くなる余力があったとはな」
『ええ、そのままでは天帝には勝てません』
「マジかよ」
『わたくしが言うのだから、間違いありません。とにかく、一度、エロスへ向かってみると良いでしょう』
「分かったよ。そろそろ、フォルを返してくれ」
『せっかちですね~。了解です。それではまた逢いましょう……アルクトゥルス様』
「――――なっ!」
神の名で呼ばれ、俺はギョっとした。
おいおい、まだ成るって言ってねえけど!
「……? あれ、兄様」
どうやら意識が戻ったらしい。
フォルは俺を不思議そうに見つめていた。
「よう、フォル……」
「あのぅ、どうして教会へ?」
「お前が心配になったんだよ。それに、フォルは大事だからな」
「……兄様。うれしい!」
ぴょんと飛び跳ねて抱きついてくる。
「ぐあ! 馬鹿、俺の胸でスリスリすんな!」
「いいではありませんか、いいではありませんか!! うわぁ、兄様のすごぉぉぉい!」
「わああああ……! ヘンタイ聖女!」
◆
俺が神様ねぇ。
俺にはそんな資格はないと思うけどな。
だって――、
俺は超絶面倒臭がりのおっさんなんだぜ。
教会を出ると、祝福の鐘が響いた。
三時のおやつになると必ず成る福音。
――そっか、これも導きか――
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