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第360話 死神王降臨 - 邪眼を取り戻しに来た死の王 -

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 世界ギルド・フリージアの屋敷が大爆発を起こし、大炎上していた。跡形もなく吹っ飛び、ギルドメンバーの生死も不明。


「いったい、なにが……」
「兄様、炎の中から人影が!」


 フォルの言う通り、ゆらりと影が現れた。


「コイツは……?」

 姿を現す男。


「兄様、あの黒髪の男は……」


 僅かに赤いメッシュが掛かっていて、独特で不気味な髪形をしていた。そこに異様に整った顔立ち。冷徹に俺たちを赤い瞳・・・で見下していた。


 ――なんだ、この雰囲気。
 まるで、メサイアに近いような。


「私はハロス。回りくどいのは嫌いでね。単刀直入に言おう――私は『死神王』だ」
「なっ……」


「突然の出現に困惑しているね。けれど、これは『フォーチュンの導き』なのだよ。恨むのなら、その聖女の信奉する神を恨むがいい」


 フォーチュンだと!?


 フォル……フォルトゥナが崇拝し、崇め奉る神の名だ。その正体は未だに掴めないが、確かに存在する神様だ。


「フォーチュン様が……ありえません! 貴方のような邪悪な存在を導くなど……。しかも、その加護はわたくしのもの。他人が持ち得るものではないし、まして死神なんて……」


 信じられんとフォルは驚く。
 そもそも――。


「死神王だって……ふざけるな! 死神の時代はとっくに終わった。全滅したはずだ! なぜ生きている……てか、死神王だって? おかしいだろ……!」

 そう、おかしい。
 コイツの眼は確かに――。


 ……いや、まさか。そのまさかなのか。



「察しがいいな、キミ。そう、私はお前の眼を取り戻しに来た。もっとも、私の眼だがな。返して貰おうか『死神王の邪眼』をな」



 やっぱりか。やっぱりこの眼が目的だったか。だが、なぜこのタイミングなんだ。おかしい、今まで出てこなかったヤツが、いきなり出現とか何の突発イベントだよ。


 フォルが不安気に手を握ってくる。

 俺は……。


「おい、死神王だか何だか知らねえけどな、こっちはスターゲイザーの対応で忙しいんだよ。終わってからにしてくれ」


 ハロスは舌打ちして、地面を軽く蹴る。
 すると、激しく土砂が舞って来た。


 俺はフォルを抱えて回避。ついでに【オートスキル】が発動、血の煉獄が土砂を燃やし尽くした。


「今の私のこれは義眼だが、私には数多の死神スキルがあるのだよ」
「なっ、もう近くに!」

「そう、お前も知っているし、使えるだろう……『オーバードライブ』……!」


 オーバードライブ。
 あらゆるステータスを底上げする死神専用スキル。何百倍にも跳ね上がる代わりに、大量の魔力を消費する。


「なら、こっちも使ってやるよ……『オーバードライブ』!!」


 向こうもだが、俺の全身が赤くなる。
 最中、フォルが訴えて来た。


「……降ろして下さい。わたくしを抱えたままでは……兄様の邪魔になってしまいます。……こんな事なら、わたくしは来ない方が……」


「それは違う。俺がフォルを連れてきたかったし、このままでも戦える。お前の運は人間を幸せにする力があるからな。借りるぜ、フォーチュンの力!」


 うるっと瞳を潤ませて、フォルは笑った。


「……はいっ」

 そうだ。俺は聖女を抱えたままでも戦える。


 なぜなら【オートスキル】こそが俺の真骨頂だからだ。手足を使わずとも、魔法も、支援も、補助スキルでさえ発動する。それが俺の最大の強み。力だ。


「いくぜ、フォル。ぎゅっと思いっきり掴まってろ」
「分かりましたっ」


 フォルの柔らかい感触を感じながらも、俺は突っ走った。


「逃がさん。貴様の邪眼を取り戻すまではな!」

 目の前に現れるハロスは、俺の眼に手を伸ばしてくる。だが、今日の俺は一味違う。フォルを抱えている為、幸運値が異常にアップしている。


 ――よって。


『世界終焉剣・エクスカイザー×100――――!!』


 自動生成される大型剣。
 邪悪な炎を纏う黒剣は、宙を舞って死神王・ハロスを追尾していく。これは俺も驚いた。幸運値が上がると、こんな芸当も可能になるらしい。


「――くっ、この剣は……私がコンスタンティンに譲り渡したものではないか。あの愚か者、このような男に奪われるとは」


 そうだったのか。だが、今は細かい事を考えている暇はない。剣を自由自在に操り、ハロスを追い詰めていく。


「この数は厄介だが……!」


 空高く飛び跳ねるハロスは、百本の剣を身体を捻り回避。宙を三段ジャンプして、後退していく。なんて人間離れした動き。さすが死神王か。

 しかも、こっちに来やがる。


「なら、剣と挟み撃ちにしてやる……」
「わたくしも」


 頷き、フォルと呼吸を合わせる事にした。
 今は力を合わせるべきだ。


 俺とフォルといったら、これしかない――!



『覇王天翔拳――――――!!!』
『覇王天翔拳――――――!!!』



 ハロス目掛けて無数の拳を打ち上げた。
 ダブル奥義が激しい轟音の共に向かっていく。ヤツの背後には『世界終焉剣・エクスカイザー×100』も接近中。これなら仕留められる。



「「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」」



 ついに奥義と剣はハロスへ激突。
 空中で大爆発を起こした。
 先程の屋敷の爆発よりも大きな火力となって、連鎖爆発を起こしていた。これほどの大打撃ならば……やったろ。



「どうなった……」
「……気配は……あ、ダメです。気配を感じます!」



 爆炎の中から無傷の姿で現れるハロスは、不敵に笑う。……くそ、笑ってんじゃねぇよ。


「人間にしてはやるじゃないか。少しは褒めてあげるよ。でもね、さっきの攻撃で多少のダメージを受けたけれど……ご覧の通り、私には『トートヒーリング』という自然治癒スキルがあるのでね。そう簡単には傷を負わない」


「そうかよ。なら、一撃・・で葬るしかないって事だな」


「一撃で? 不可能だ。この死神王であり、全ての・・・死神スキルを保持している私を滅ぼすなど……絶対に無理だ」

「かもな。その前に教えろ。どうしてお前は現れた……どこからやって来た?」


 アレ・・を使う前に聞いておきたかった。


「言ったろう。フォーチュンの導きだとな」
「そうか……分かった。フォル、眼を閉じていろ」
「え……まさか」


 俺は眼を閉じ――


「貴様!」


 ハロスも驚き、察したようだが……もう襲い!!



『死神王の邪眼!!!』



 消費魔力が大量で、消耗も激しい為に使用を避けていた【邪眼】を解放した。これで敵には、あらゆる呪いに掛かり、俺にはオーバードライブ以上の恩恵が与えられる。


「その前にお前の存在を消し去る……」


 発動前に飛んでくるハロス。


 させるかあぁぁぁぁぁぁぁッ!!
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