336 / 479
第336話 神聖国ネポムセイノの最新兵器
しおりを挟む
「でも長くなるからまた今度」
なんて言われて、俺はコケそうになった。
話さないんかいっ。
「いや話せって。気になって眠れないじゃないか」
「まだ起きたばかり」
「地味な揚げ足を取ってくれるな。まあいい、更なる未来と過去の話はまた今度な」
「うん。ちょっとだけ話すと――」
「結局話すのかよ!」
トーチカの扱い方が難しいな。
こんなんだっけな?
「あたしとネメシアは、この時代の人間ではない」
「なんだって……」
「よく考えてみて。【レッドウォー】以前から一年しか経過していない。そんな短期間で成長したネメシアとあたしが現れる筈がない」
確かに、そう言われてみれば。てか、一年しか経過していなかったのかよ。……なるほど、ネメシアもトーチカも成長しすぎているなと思ったが、別の時代から飛んで来たってところかね。
「お察しの通り、あたしは未来からやって来た。多分、ネメシアも」
「そうか」
今のところそんな短い返事でしか答えられなかった。いきなり未来人と告白されても、リアクションが難しいって。ただでさえ、今未来に生きているんだからな、俺。
「ごめん、変な話をして。でもこれ重要。……スターゲイザーと戦うなら必要な情報」
「話してくれてありがとうな、トーチカ。だが、今は神聖国ネポムセイノが攻めてくるそうでな。スターゲイザーは後回しだ」
なんの話? と、トーチカは首を傾げた。
「これも話すと長いんだがな――」
◆
「――理解した。あたしは、ネメシアとエコを守る。だから戻るね」
「おう、向こうに聖女もいるけどな」
「うん、知ってる。でも今日は本当の貴方に逢いたかったから」
席を立つトーチカは、俺の方へ。
俺も立ち上がる。
「行くのか」
「行く。……その、あたし、ヘデラが好き」
ぼそっと言われて、俺は不意打ちを食らった。……ま、まさかトーチカがそんな言葉を発するとはな。思わず顔が熱くなっちまったぜ。これまた油断していると、トーチカの方から抱きついて来た。
「どうした、今日は妙に甘えん坊だな。いつもならやらんだろ」
「今日は特別」
ネコミミを撫でてあげると、トーチカは気持ちよさそうに目を細めた。……こりゃ、ぼむぼむが娘を溺愛する気持ちも分かるかも。昨晩の酒の席で、アイツは娘の自慢ばかりだった。……って、そうか、アイツもトーチカが未来から来たって知っているんだよな。
ぼむぼむが俺の所にすんなり来れたのも、それが理由だろう。ずっと前から分かっていたのかも。過去や未来が。
「……またね」
「おう」
名残惜しそうにトーチカは、窓から飛び去った。
――って、窓から去るなよ!
◆
会議室へ入ると、物々しい雰囲気に包まれていた。
「どうした、ぼむぼむ」
俺は、トーチカの親父、無駄にマッチョ男に話しかけた。険しい顔で俺を見る彼は、腕を組み唐突に笑った。
「ガハハハハハハハ……」
「なぜ笑う、ぼむぼむよ」
「いや、笑うしかないだろう。神聖国ネポムセイノだ。昨晩、アレクサンダーがこの屋敷を訪ねたそうだな」
「ああ、事実だよ。屋敷とサイネリアを取り戻しに来てな。俺とメサイア達は呪いに掛けられそうになったぞ。危うく俺の仲間の胸を触られそうになったしな、許せん」
「……ああ、おかげでレメディオスは壊滅危機だ」
「まさか」
「そのまさかさ、神聖国ネポムセイノが本当に攻めて来ているそうだ」
遠い目でどこかを見つめるぼむぼむ。
世界ギルド・フリージアの仲間が慌しく報告する。
「報告します!! 神聖国ネポムセイノの最新兵器と思しき物体を捉えました! 映像、出ます!」
ふわっと画面が現れた。
なんぞ、この最新技術!
聞くところによると、報告してくれた忍者風の彼女の『偵察衛星スキル』らしい。宇宙空間に使い魔を放っているらしく、日々スターゲイザーの動向を探っているのだとか。有能すぎだろ。
そして現れる映像。
――そこには、
レメディオスを囲むように大量の兵器が。
「……これは」
おいおい、ウソだろ……!
ありえんだろ。
思えば……アレは、そういう事だったのかよ。
焦っていると、ぼむぼむが怪訝な表情で言った。
「サトル、アレを見覚えが?」
「あんな巨大なの、忘れるワケがない」
一緒に映像を見守っていたメサイア達も頷く。
「これはアレね」
眉を顰める女神。
「ええ、アレですね」
面倒臭そうにする聖女。
「ひゃー…」
驚嘆するエルフ。
世界最高峰の霊山『アヴェレスト』にいたアイツじゃねぇか!!! 間違いなくアイツだよ、アイツ!!
いや、ちょっと形状とか違うけど!
更に大きくなっていますけど!!
【ギガントゴーレムMARK85】
「……マーク85ォ!?」
どんだけ改良されてるんだよ。
「サトル、あれはな、元々は炭鉱ボスモンスター【SHEEPシープ-RX87-2】が初期型なのだよ。それが進化してギガントゴーレムとして改良されまくった結果がアレだ」
「……マジかよ」
黒いゴツゴツのロボットのようなゴーレム。岩ってか、鋼っていうか……もしかして、あのボディは世界最強の硬度を誇る【エクサダイト】ではなかろうか。
なんなら自爆可能かもな……。
「何体いるんだよ……世界を滅ぼせるレベルで侵攻してないか、これ」
「――ざっと100体ね」
メサイアが答えた。
女神のスキルで数を把握したらしい。
……100体か。
どんだけ作ったんだよ!!
ていうか……ここまでやるか普通!
神聖国ネポムセイノ、ガチだったのか。
超絶面倒臭がりの俺は、参っていた。
頭を押さえて、これをどう対処すべきか悩む。
フォルが俺に気づいて、
「兄様、大丈夫ですか?」
と優しく声を掛けてくれる。
この声が唯一の癒しだ。
そして、この状況に物申したい。
いや、言わせてくれ。
「めんどくせぇ……」
なんて言われて、俺はコケそうになった。
話さないんかいっ。
「いや話せって。気になって眠れないじゃないか」
「まだ起きたばかり」
「地味な揚げ足を取ってくれるな。まあいい、更なる未来と過去の話はまた今度な」
「うん。ちょっとだけ話すと――」
「結局話すのかよ!」
トーチカの扱い方が難しいな。
こんなんだっけな?
「あたしとネメシアは、この時代の人間ではない」
「なんだって……」
「よく考えてみて。【レッドウォー】以前から一年しか経過していない。そんな短期間で成長したネメシアとあたしが現れる筈がない」
確かに、そう言われてみれば。てか、一年しか経過していなかったのかよ。……なるほど、ネメシアもトーチカも成長しすぎているなと思ったが、別の時代から飛んで来たってところかね。
「お察しの通り、あたしは未来からやって来た。多分、ネメシアも」
「そうか」
今のところそんな短い返事でしか答えられなかった。いきなり未来人と告白されても、リアクションが難しいって。ただでさえ、今未来に生きているんだからな、俺。
「ごめん、変な話をして。でもこれ重要。……スターゲイザーと戦うなら必要な情報」
「話してくれてありがとうな、トーチカ。だが、今は神聖国ネポムセイノが攻めてくるそうでな。スターゲイザーは後回しだ」
なんの話? と、トーチカは首を傾げた。
「これも話すと長いんだがな――」
◆
「――理解した。あたしは、ネメシアとエコを守る。だから戻るね」
「おう、向こうに聖女もいるけどな」
「うん、知ってる。でも今日は本当の貴方に逢いたかったから」
席を立つトーチカは、俺の方へ。
俺も立ち上がる。
「行くのか」
「行く。……その、あたし、ヘデラが好き」
ぼそっと言われて、俺は不意打ちを食らった。……ま、まさかトーチカがそんな言葉を発するとはな。思わず顔が熱くなっちまったぜ。これまた油断していると、トーチカの方から抱きついて来た。
「どうした、今日は妙に甘えん坊だな。いつもならやらんだろ」
「今日は特別」
ネコミミを撫でてあげると、トーチカは気持ちよさそうに目を細めた。……こりゃ、ぼむぼむが娘を溺愛する気持ちも分かるかも。昨晩の酒の席で、アイツは娘の自慢ばかりだった。……って、そうか、アイツもトーチカが未来から来たって知っているんだよな。
ぼむぼむが俺の所にすんなり来れたのも、それが理由だろう。ずっと前から分かっていたのかも。過去や未来が。
「……またね」
「おう」
名残惜しそうにトーチカは、窓から飛び去った。
――って、窓から去るなよ!
◆
会議室へ入ると、物々しい雰囲気に包まれていた。
「どうした、ぼむぼむ」
俺は、トーチカの親父、無駄にマッチョ男に話しかけた。険しい顔で俺を見る彼は、腕を組み唐突に笑った。
「ガハハハハハハハ……」
「なぜ笑う、ぼむぼむよ」
「いや、笑うしかないだろう。神聖国ネポムセイノだ。昨晩、アレクサンダーがこの屋敷を訪ねたそうだな」
「ああ、事実だよ。屋敷とサイネリアを取り戻しに来てな。俺とメサイア達は呪いに掛けられそうになったぞ。危うく俺の仲間の胸を触られそうになったしな、許せん」
「……ああ、おかげでレメディオスは壊滅危機だ」
「まさか」
「そのまさかさ、神聖国ネポムセイノが本当に攻めて来ているそうだ」
遠い目でどこかを見つめるぼむぼむ。
世界ギルド・フリージアの仲間が慌しく報告する。
「報告します!! 神聖国ネポムセイノの最新兵器と思しき物体を捉えました! 映像、出ます!」
ふわっと画面が現れた。
なんぞ、この最新技術!
聞くところによると、報告してくれた忍者風の彼女の『偵察衛星スキル』らしい。宇宙空間に使い魔を放っているらしく、日々スターゲイザーの動向を探っているのだとか。有能すぎだろ。
そして現れる映像。
――そこには、
レメディオスを囲むように大量の兵器が。
「……これは」
おいおい、ウソだろ……!
ありえんだろ。
思えば……アレは、そういう事だったのかよ。
焦っていると、ぼむぼむが怪訝な表情で言った。
「サトル、アレを見覚えが?」
「あんな巨大なの、忘れるワケがない」
一緒に映像を見守っていたメサイア達も頷く。
「これはアレね」
眉を顰める女神。
「ええ、アレですね」
面倒臭そうにする聖女。
「ひゃー…」
驚嘆するエルフ。
世界最高峰の霊山『アヴェレスト』にいたアイツじゃねぇか!!! 間違いなくアイツだよ、アイツ!!
いや、ちょっと形状とか違うけど!
更に大きくなっていますけど!!
【ギガントゴーレムMARK85】
「……マーク85ォ!?」
どんだけ改良されてるんだよ。
「サトル、あれはな、元々は炭鉱ボスモンスター【SHEEPシープ-RX87-2】が初期型なのだよ。それが進化してギガントゴーレムとして改良されまくった結果がアレだ」
「……マジかよ」
黒いゴツゴツのロボットのようなゴーレム。岩ってか、鋼っていうか……もしかして、あのボディは世界最強の硬度を誇る【エクサダイト】ではなかろうか。
なんなら自爆可能かもな……。
「何体いるんだよ……世界を滅ぼせるレベルで侵攻してないか、これ」
「――ざっと100体ね」
メサイアが答えた。
女神のスキルで数を把握したらしい。
……100体か。
どんだけ作ったんだよ!!
ていうか……ここまでやるか普通!
神聖国ネポムセイノ、ガチだったのか。
超絶面倒臭がりの俺は、参っていた。
頭を押さえて、これをどう対処すべきか悩む。
フォルが俺に気づいて、
「兄様、大丈夫ですか?」
と優しく声を掛けてくれる。
この声が唯一の癒しだ。
そして、この状況に物申したい。
いや、言わせてくれ。
「めんどくせぇ……」
0
お気に入りに追加
1,270
あなたにおすすめの小説

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~
名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~
桜井正宗
ファンタジー
元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。
仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。
気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

八百長試合を引き受けていたが、もう必要ないと言われたので圧勝させてもらいます
海夏世もみじ
ファンタジー
月一に開催されるリーヴェ王国最強決定大会。そこに毎回登場するアッシュという少年は、金をもらう代わりに対戦相手にわざと負けるという、いわゆる「八百長試合」をしていた。
だが次の大会が目前となったある日、もうお前は必要ないと言われてしまう。八百長が必要ないなら本気を出してもいい。
彼は手加減をやめ、“本当の力”を解放する。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる