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第331話 無限と有限のエンデュランス
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俺は【スターダスト】に願った――
と、見せかけてえええええええッ!
「なに!?」
俺の持ち合わせる最強の必殺スキルを穿った。これがマジのガチの本気の本気、これで、この怒りでヤツをぶっ倒す。
力の限り両手を突き出して、突き出して、突き出して、怒りを、怒りを、怒りを、散々溜め込んできた果てしない怒りを力に変えて――!!
『瞋恚のエンデュランス――――――!!!』
光の中にまた光、それが有限に続く。
闇の中にまた闇、それが無限に続く。
「――こ、これは……理の力……。貴様、スターダストではなく、実力で勝つつもりか!!」
「ったりめぇだ!! そうでなければ、俺の怒りは収まらん!! オプファ、お前を倒すって決めたからには……自身の力で倒す!!!」
「これは……万物の力では勝てるはずもない……。理は有限であり無限。無限であり有限なのだ……そうか、原初の神・バテンカイトス、アルクトゥルス、フォーチュン……。自分は今更、気づいた……」
オプファは愕然となって、もはや諦めていた。
……勝てる!!
「…………自分の負けだ」
俺のエンデュランスが激突する瞬間、ヤツはふわっと消えた。……消えた!? だが、気配は微塵もなくなった。死んだ、のか?
それから、エンデュランスは建物を大きく損壊させ、ピラミッドの天井にすら巨大な穴を開けた。――まず、建物が崩落する。
『恋しさの……プロミネンス!!』
リースの最強の火属性魔法が放たれる。
太陽に匹敵する炎熱は建物の破片を灰燼にし、塵とした。おぉ、すげぇ……リースの魔法はどんどん強くなっていくな。
「サトル、あのオプファだけど……倒したみたいよ。というより、自滅ね」
「自滅だと? どういう事だ、メサイア」
「本人が言っていたでしょう。一定の力を下回ると消滅するって」
「ああ……それで消えたのか」
「そ。だから倒した事には変わりはない」
手応えが無かったから心配したが――そうか。俺はヤツに復讐を果たせたのだな。これで、少しはスッキリしたぜ。
などと油断していると、
バコォォっと壁が崩落して、フォルがシュトラールをぶっ飛ばしていた。ドラゴン聖女が俺の方へ落ちて来る。
「――――くっ! なんて乱暴な聖女。なによアイツ……! ていうか、あたしのオートヒーリングが追い付かないとかバケモノか」
シュトラールに余裕はなかった。
お、フォルのヤツかなり優勢じゃないか。
「ふぅ……。シュトラールでしたっけ。たいした事ありませんね」
フォルが強すぎるんだよ。
「……参った」
両手を挙げるシュトラールは、降参していた。
「なんの真似です」
「降参と言った。あたしの負けだ」
「……」
フォルは、ドラゴン娘を睨む。
あんまり信用していないようだ。
「オプファ様は消えてしまったようだし、あたしの出番も終わりだね」
「どういう事ですか!」
「さっき言ったろう、あたしはただの雇われ、ただの傭兵さ。ま、いずれまた会う事もあるかもね! じゃ、あたしはズラかるよ。あでゅー!」
シャイネンドラゴンとなって、シュトラールは飛んでいく。ちょうど天井には穴が。そこから逃げて行きやがった。
「……ここで、わたくしの最終奥義を放っても良いのですけどね」
「やめておけ、フォル。無用な戦いは避けろ」
俺が静止した。
「兄様の命令は絶対です。了解です」
聞き入れてくれた。ふぅ。
フォルのヤツ、顔が怖かったから、止めるのもちょっと怖かったぞ。
「ところで、オプファは?」
「さっき倒した」
「そうでしたか、さすが兄様です。これで復讐は果たされたのですね?」
「いや……まだ天帝がいる。ヤツを倒すまでは完全ではない。これはまだ、ほんの始まり。これからが本番だよ」
「ええ、大幹部もまだあと二人いますからね」
そう、まだ戦いは終わってはいない。
世界はまだ支配されたまま。
「よし、みんな帰るぞ! リース、ワープを頼む」
「了解しました!」
リースのワープがはじま――らなかった。
「……あ。ここワープ不可能領域でした。できません……どうしましょう」
泣きそうになって、困った顔を向けて来るリース。確かに、そう言われるとそうだった。――てことは、あの天井から抜け出すしかないのか。
俺は上を向く。
「うーん。いけなくはないか」
「サトル、これをどうやって上がるの」
メサイアも一緒に見上げる。
ひとつ……いや、結構方法はあった。
「ニトロの爆発を利用して浮遊しよう」
「それしかないわよねえ~」
「他に方法はあるにはあるけどな。確実なのがこれだ」
「うぅ……つまりそれ、サトルに抱きつかなきゃいけないのよね」
「ああ、そうだな。イヤか?」
「いいけど……うん、仕方ないわね」
ピトっとメサイアはくっつく。
「それじゃ落ちる。もっと」
「……っ」
だきっと右腕にしがみつくメサイア。おかげで色々当たっている。いい感触。
「兄様ぁん!」
フォルはいつもの勢いで。
「サトルさんっ」
顔を赤くしながらリースも前からっ!
うおおおおおおおおおおッ……!!
みんな俺に抱きついたり、密着した。
あとはニトロパワーで飛ぶだけ!!
「いくぜええッ!!」
◆
みんなの感触を味わいながら、俺は天井を抜けた。さすがに三人も抱えるとなると、時間も掛かってしまったが、なんとか地上へ出て着陸を果たした。
「ふぅ」
「……」「……」「……」
みんなダンマリ。
「どうした。俺としては、このままでもいいけど」
赤い瞳を潤ませて、メサイアは短く「え、ええ……」とつぶやき、リースも「た、たまにはいいんじゃないですか」と赤くなりながらも微笑む。そして――「わたくしは兄様成分を充電中ですっ」とぎゅぅぅっと抱きついてくるフォル。
ごろんと人工芝生に倒れて、三人から圧し掛かられた。女神とエルフと聖女にだ。なんて幸せ。最高。
気づけば、みんなで笑い合った。
――そっか、本当に気づけば元通りだったな。俺はずっとこれを待ち望んでいた。またみんなと一緒に笑い合える日々を――。
と、見せかけてえええええええッ!
「なに!?」
俺の持ち合わせる最強の必殺スキルを穿った。これがマジのガチの本気の本気、これで、この怒りでヤツをぶっ倒す。
力の限り両手を突き出して、突き出して、突き出して、怒りを、怒りを、怒りを、散々溜め込んできた果てしない怒りを力に変えて――!!
『瞋恚のエンデュランス――――――!!!』
光の中にまた光、それが有限に続く。
闇の中にまた闇、それが無限に続く。
「――こ、これは……理の力……。貴様、スターダストではなく、実力で勝つつもりか!!」
「ったりめぇだ!! そうでなければ、俺の怒りは収まらん!! オプファ、お前を倒すって決めたからには……自身の力で倒す!!!」
「これは……万物の力では勝てるはずもない……。理は有限であり無限。無限であり有限なのだ……そうか、原初の神・バテンカイトス、アルクトゥルス、フォーチュン……。自分は今更、気づいた……」
オプファは愕然となって、もはや諦めていた。
……勝てる!!
「…………自分の負けだ」
俺のエンデュランスが激突する瞬間、ヤツはふわっと消えた。……消えた!? だが、気配は微塵もなくなった。死んだ、のか?
それから、エンデュランスは建物を大きく損壊させ、ピラミッドの天井にすら巨大な穴を開けた。――まず、建物が崩落する。
『恋しさの……プロミネンス!!』
リースの最強の火属性魔法が放たれる。
太陽に匹敵する炎熱は建物の破片を灰燼にし、塵とした。おぉ、すげぇ……リースの魔法はどんどん強くなっていくな。
「サトル、あのオプファだけど……倒したみたいよ。というより、自滅ね」
「自滅だと? どういう事だ、メサイア」
「本人が言っていたでしょう。一定の力を下回ると消滅するって」
「ああ……それで消えたのか」
「そ。だから倒した事には変わりはない」
手応えが無かったから心配したが――そうか。俺はヤツに復讐を果たせたのだな。これで、少しはスッキリしたぜ。
などと油断していると、
バコォォっと壁が崩落して、フォルがシュトラールをぶっ飛ばしていた。ドラゴン聖女が俺の方へ落ちて来る。
「――――くっ! なんて乱暴な聖女。なによアイツ……! ていうか、あたしのオートヒーリングが追い付かないとかバケモノか」
シュトラールに余裕はなかった。
お、フォルのヤツかなり優勢じゃないか。
「ふぅ……。シュトラールでしたっけ。たいした事ありませんね」
フォルが強すぎるんだよ。
「……参った」
両手を挙げるシュトラールは、降参していた。
「なんの真似です」
「降参と言った。あたしの負けだ」
「……」
フォルは、ドラゴン娘を睨む。
あんまり信用していないようだ。
「オプファ様は消えてしまったようだし、あたしの出番も終わりだね」
「どういう事ですか!」
「さっき言ったろう、あたしはただの雇われ、ただの傭兵さ。ま、いずれまた会う事もあるかもね! じゃ、あたしはズラかるよ。あでゅー!」
シャイネンドラゴンとなって、シュトラールは飛んでいく。ちょうど天井には穴が。そこから逃げて行きやがった。
「……ここで、わたくしの最終奥義を放っても良いのですけどね」
「やめておけ、フォル。無用な戦いは避けろ」
俺が静止した。
「兄様の命令は絶対です。了解です」
聞き入れてくれた。ふぅ。
フォルのヤツ、顔が怖かったから、止めるのもちょっと怖かったぞ。
「ところで、オプファは?」
「さっき倒した」
「そうでしたか、さすが兄様です。これで復讐は果たされたのですね?」
「いや……まだ天帝がいる。ヤツを倒すまでは完全ではない。これはまだ、ほんの始まり。これからが本番だよ」
「ええ、大幹部もまだあと二人いますからね」
そう、まだ戦いは終わってはいない。
世界はまだ支配されたまま。
「よし、みんな帰るぞ! リース、ワープを頼む」
「了解しました!」
リースのワープがはじま――らなかった。
「……あ。ここワープ不可能領域でした。できません……どうしましょう」
泣きそうになって、困った顔を向けて来るリース。確かに、そう言われるとそうだった。――てことは、あの天井から抜け出すしかないのか。
俺は上を向く。
「うーん。いけなくはないか」
「サトル、これをどうやって上がるの」
メサイアも一緒に見上げる。
ひとつ……いや、結構方法はあった。
「ニトロの爆発を利用して浮遊しよう」
「それしかないわよねえ~」
「他に方法はあるにはあるけどな。確実なのがこれだ」
「うぅ……つまりそれ、サトルに抱きつかなきゃいけないのよね」
「ああ、そうだな。イヤか?」
「いいけど……うん、仕方ないわね」
ピトっとメサイアはくっつく。
「それじゃ落ちる。もっと」
「……っ」
だきっと右腕にしがみつくメサイア。おかげで色々当たっている。いい感触。
「兄様ぁん!」
フォルはいつもの勢いで。
「サトルさんっ」
顔を赤くしながらリースも前からっ!
うおおおおおおおおおおッ……!!
みんな俺に抱きついたり、密着した。
あとはニトロパワーで飛ぶだけ!!
「いくぜええッ!!」
◆
みんなの感触を味わいながら、俺は天井を抜けた。さすがに三人も抱えるとなると、時間も掛かってしまったが、なんとか地上へ出て着陸を果たした。
「ふぅ」
「……」「……」「……」
みんなダンマリ。
「どうした。俺としては、このままでもいいけど」
赤い瞳を潤ませて、メサイアは短く「え、ええ……」とつぶやき、リースも「た、たまにはいいんじゃないですか」と赤くなりながらも微笑む。そして――「わたくしは兄様成分を充電中ですっ」とぎゅぅぅっと抱きついてくるフォル。
ごろんと人工芝生に倒れて、三人から圧し掛かられた。女神とエルフと聖女にだ。なんて幸せ。最高。
気づけば、みんなで笑い合った。
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