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第326話 エルフのパンツが消えちゃった件
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静かな波の音が心地よい。
海猫モンスターの鳴き声だろうか、これまた眠気を誘う。潮風に当たりながら、俺は甲板上をのんびり散歩していた。
ひとりトボトボと。
ガレオン船で大海原を航海中なワケだが、今は海も穏やかで怪しい気配も皆無だった。平和そのもの。これを阻む者がいようもなら、俺は容赦しない。今だけは、ただ心穏やかでいたかったから――。
船旅二日目。
今どこの海域にいるのか分からん。昔の位置でいえば【花の都・フリージア】は世界の中心だった。あの場所には、かつて『パラドックス大陸』という名称があった。
そこに何十もの聖地が散らばっていていたワケなのだが、今は別の国々がある。これは、世界を支配するという天帝の仕業らしい。世界は随分と変わっちまったなぁ。
ネメシアやトーチカ、エコの様子も気になる。いや、情報は常に共有されているから、リアルタイムに理解はしているが、気にかけている暇はない。今は、メサイア、リース、フォルとの船旅とオプファへの復讐に専念する。
船首に足をつけ、俺は先を見据えた。
ただ水平線が続き、陸地は見えない。
透き通るような海だけが続く。その中に魚介系モンスターが泳いでいる。襲ってこないのは、こちらが大きな船だからだろう。クラーケンクラスでなければ、まず奇襲はないはず。これがもし、仮にイカダだったのなら、今頃は戦闘続きでこんなのんびりな船旅ではなかっただろうな。
これも女神・メサイアの建築スキルのおかげ。
ぼうっと海を眺めていれば、急に視界が真っ黒になった。誰かが俺を目隠ししたらしい。
「だ~れだ」
「その声は……う~ん、これは難しいな。もうちょい近づいてくれ」
「えー…」
厭そうな声。
でも、すぐにピッタリくっついてきた。
俺の背中にふんわりとした感触がっ。
「ああ、身体の感触で分かった。メサイアだ」
「正解よ」
まあ、声と甘い匂いで分かったけどな。
メサイアだった。
「それで、また何やら船を改築していたようだが」
「ええ、今度はビリヤード作ってみたの」
「ビリヤードねえ! ついにそんなモンまで……」
「ほら、一度やってみたかったのよね。でもさ、ビリヤードボールの色とか数字が分からなくて」
「ふっ……。メサイア、俺はその昔、ビリヤードを嗜んでいたんだぜ。 スタンダードなのは①黄色、②青、③赤、④紫、⑤オレンジ、⑥緑、⑦茶色、⑧黒、⑨黄色と白、⑩青と白、⑪赤と白、⑫紫と白、⑬オレンジと白、⑭緑と白、⑮茶色と白だ」
全部正確に言った。
すると、
「へぇ~~! サトル、すっごーい。よく覚えているわね」
「ったり前だ!」
まあ、実を言うとトリックショットで遊んでいただけなんだがな! そのお陰で記憶にあっただけ。遊びだすと色々試したくなって、ボールの種類なんぞ覚えた。
「そかそか。褒めてあげる」
頭を撫でられた。
別に嬉しか……嬉しかった。
「で、ボール作るのか?」
「ええ、そうね。建築スキルでぱぱーっと」
「ふむ。仕方ない、こんな事に【スターダスト】を使っていいものか悩むが、特別大サービスだ」
俺は願望器【スターダスト】に願った。
すると、ぽぽ~んとビリヤードボールが出現。全て揃った。
「わあ! ちょっと……サトル」
その状況に驚くメサイアは、目を白黒させた。まさか、スターダストを使ってビリヤードボールを生成するとは思わなかったみたいだな。
「使ったのね」
「なんだ、まずかったか」
「ありがとー!! 自分で作るの面倒だったから」
「あー…そうか」
ボールを手渡して、メサイアは鼻歌交じりに上機嫌モードで船内へ戻っていった。スターダストで願って良かったんだな。てっきり、怒られるかと思ったけど。
しばらくすると、メサイアと入れ替わるようにして、リースが大きな胸を揺らしながら俺の元へ。今日は白のワンピース姿で可愛いな。
「サトルさぁ~ん」
「うっす、リース。どうした、血相を変えて」
「フォルちゃんがパンツを返してくれないんです!」
「――は?」
何事かと思えば……パンツ?
「なので、今……すっごくスースーしているんです」
「……なんですとっ。てか、何があった! 事情を詳しく」
「はい。その、サトルさんへの朝食を『ご飯』にするか『パン』にするかで揉めちゃって……。あたしは『パン』がいいと思ったのです。それで、言い合っていたらフォルちゃんがわたしを押し倒して、パンツを……」
それでパンツを取られたと――パンだけに?
両手で顔を覆い、わんわん泣くリース。
「ま、まあ……俺はどっちでもいいよ。ていうか、リースがノーパンだって……それ、危険度マックスすぎるよ。風でも吹けば大変だぞ」
「あたし、このままじゃお嫁にいけないですぅ……」
大丈夫だ。俺が貰ってやるからな。
などと言える空気ではなかったので、心で止めておいた。しっかし、フォルのヤツ、リースのパンツを脱がすとは何事か!!
あとでお尻ぺんぺん3000回だぞ。
海猫モンスターの鳴き声だろうか、これまた眠気を誘う。潮風に当たりながら、俺は甲板上をのんびり散歩していた。
ひとりトボトボと。
ガレオン船で大海原を航海中なワケだが、今は海も穏やかで怪しい気配も皆無だった。平和そのもの。これを阻む者がいようもなら、俺は容赦しない。今だけは、ただ心穏やかでいたかったから――。
船旅二日目。
今どこの海域にいるのか分からん。昔の位置でいえば【花の都・フリージア】は世界の中心だった。あの場所には、かつて『パラドックス大陸』という名称があった。
そこに何十もの聖地が散らばっていていたワケなのだが、今は別の国々がある。これは、世界を支配するという天帝の仕業らしい。世界は随分と変わっちまったなぁ。
ネメシアやトーチカ、エコの様子も気になる。いや、情報は常に共有されているから、リアルタイムに理解はしているが、気にかけている暇はない。今は、メサイア、リース、フォルとの船旅とオプファへの復讐に専念する。
船首に足をつけ、俺は先を見据えた。
ただ水平線が続き、陸地は見えない。
透き通るような海だけが続く。その中に魚介系モンスターが泳いでいる。襲ってこないのは、こちらが大きな船だからだろう。クラーケンクラスでなければ、まず奇襲はないはず。これがもし、仮にイカダだったのなら、今頃は戦闘続きでこんなのんびりな船旅ではなかっただろうな。
これも女神・メサイアの建築スキルのおかげ。
ぼうっと海を眺めていれば、急に視界が真っ黒になった。誰かが俺を目隠ししたらしい。
「だ~れだ」
「その声は……う~ん、これは難しいな。もうちょい近づいてくれ」
「えー…」
厭そうな声。
でも、すぐにピッタリくっついてきた。
俺の背中にふんわりとした感触がっ。
「ああ、身体の感触で分かった。メサイアだ」
「正解よ」
まあ、声と甘い匂いで分かったけどな。
メサイアだった。
「それで、また何やら船を改築していたようだが」
「ええ、今度はビリヤード作ってみたの」
「ビリヤードねえ! ついにそんなモンまで……」
「ほら、一度やってみたかったのよね。でもさ、ビリヤードボールの色とか数字が分からなくて」
「ふっ……。メサイア、俺はその昔、ビリヤードを嗜んでいたんだぜ。 スタンダードなのは①黄色、②青、③赤、④紫、⑤オレンジ、⑥緑、⑦茶色、⑧黒、⑨黄色と白、⑩青と白、⑪赤と白、⑫紫と白、⑬オレンジと白、⑭緑と白、⑮茶色と白だ」
全部正確に言った。
すると、
「へぇ~~! サトル、すっごーい。よく覚えているわね」
「ったり前だ!」
まあ、実を言うとトリックショットで遊んでいただけなんだがな! そのお陰で記憶にあっただけ。遊びだすと色々試したくなって、ボールの種類なんぞ覚えた。
「そかそか。褒めてあげる」
頭を撫でられた。
別に嬉しか……嬉しかった。
「で、ボール作るのか?」
「ええ、そうね。建築スキルでぱぱーっと」
「ふむ。仕方ない、こんな事に【スターダスト】を使っていいものか悩むが、特別大サービスだ」
俺は願望器【スターダスト】に願った。
すると、ぽぽ~んとビリヤードボールが出現。全て揃った。
「わあ! ちょっと……サトル」
その状況に驚くメサイアは、目を白黒させた。まさか、スターダストを使ってビリヤードボールを生成するとは思わなかったみたいだな。
「使ったのね」
「なんだ、まずかったか」
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「あー…そうか」
ボールを手渡して、メサイアは鼻歌交じりに上機嫌モードで船内へ戻っていった。スターダストで願って良かったんだな。てっきり、怒られるかと思ったけど。
しばらくすると、メサイアと入れ替わるようにして、リースが大きな胸を揺らしながら俺の元へ。今日は白のワンピース姿で可愛いな。
「サトルさぁ~ん」
「うっす、リース。どうした、血相を変えて」
「フォルちゃんがパンツを返してくれないんです!」
「――は?」
何事かと思えば……パンツ?
「なので、今……すっごくスースーしているんです」
「……なんですとっ。てか、何があった! 事情を詳しく」
「はい。その、サトルさんへの朝食を『ご飯』にするか『パン』にするかで揉めちゃって……。あたしは『パン』がいいと思ったのです。それで、言い合っていたらフォルちゃんがわたしを押し倒して、パンツを……」
それでパンツを取られたと――パンだけに?
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「ま、まあ……俺はどっちでもいいよ。ていうか、リースがノーパンだって……それ、危険度マックスすぎるよ。風でも吹けば大変だぞ」
「あたし、このままじゃお嫁にいけないですぅ……」
大丈夫だ。俺が貰ってやるからな。
などと言える空気ではなかったので、心で止めておいた。しっかし、フォルのヤツ、リースのパンツを脱がすとは何事か!!
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