全スキル自動攻撃【オートスキル】で無双 ~自動狩りで楽々レベルアップ~

桜井正宗

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第309話 レメディオス事変 - 小さき女神の想い -

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 レメディオスはいつも通り平和でほのぼの。

 邸宅うちもいつもの風景で何も変わらない。ヘデラもいる。彼女は窓辺に腰掛けて外の風景を眺めていた。今日も綺麗な銀髪が風になびいて――わたしはそんなヘデラに見惚みほれていた。


「…………」


 フォルトゥナお母さんの魂を借りているだけあり、あの容姿はズルすぎる。わたしより肌が透き通って、手もスラっとして……本当にズルい。けど、あれがヘデラ。全部が愛しくて、とても頼りになる存在。


 女性なんだけど、まるでお父さんみたいな安心感があった。だから、たまに抱きしめられると、何故かドキドキして……心の底から嬉しいと思えた。


 何故だろう。

 何故、ヘデラに抱きしめられると安心するんだろう。


 信頼しているから?


 それは勿論だけど、もっと何か違う……感情があるような。


「どうした、ネメシア」


 わたしの存在に気づき、ヘデラはアクアマリンの瞳を向けた。海のようにんでいる。いつもながら、わたしはドキっとした。


「ヘデラ……あのさ。キャロリーメイト食べる!?」


 最近、ママのマイブームらしい『キャロリーメイト』を取り出した。棒状の栄養食なのだけど、これが意外と栄養価が高くて美味い。


「キャ……キャロリーメイトぉ……」


 怪訝けげんな顔をしてヘデラは、渋々しぶしぶと取った。
 ……なんだかんだ優しいんだから。

 で、嫌そうながらもボリボリ食していた。


「ね、ヘデラ」


 わたしは顔を近づけた。
 すると、キャロリーメイトをくわえているヘデラは顔を真っ赤にして――


「ちょ、ネメシア。顔が近いぞ……」
「そのくわえているキャロリーメイト、半分だけ食べていい?」
「……んぁ? なんだ、つまり……ポッケーゲーム的な?」

「ポッケーゲーム?」

「あー、ネメシアは知らんよな。二人が両端をくわえて食べ進むゲームなんだよ。ていうか、これは恋人同士でやるものだぞ」


 腕を組み、ヘデラは困惑した。
 そんな表情が素敵だった。もっといろんな表情をわたしに見せて欲しい。だから……。


「じゃあ、ヘデラ。それやってみよ?」
「え……マジ!?」

 嫌そうでもなく引いたワケでもないけど、ヘデラはやっぱり困惑していた。

「大丈夫大丈夫。配信はしないから」
「あ、当たり前だ。こんな所を世界ギルドに見られたら、俺……さすがに大炎上じゃ済まないと思う。投げ銭ウルチャも一切途絶えるだろうなあ」


 世間の目を気にするヘデラだけど、別に女の子同士なんだし、問題ないって。わたしは思ったけどね。ということで……!


「ん~」
「お、おう……」


 ヘデラのくわえているキャロリーメイトの端を、わたしも加えた。すると、端と端でバランスが保たれた。あとは食べ進めていくのだけど……。

 ……いざヘデラと顔を合わせると……


 こ、これは……!


「…………」
「お、おい。ネメシア、今更顔真っ赤にするなよ……俺だってめっちゃ恥ずかしんだぞ。こんな所をトーチカとかエコに見られたら……あ!?」


 わたしの背後に視線を移す彼女は、目を見開いた。え、背後にまさか……?


「にゃああああああ~~、ヘデラ様ぁぁぁちゅ~るぅ下さい~!」


 エコだ。
 ちゅ~るぅを求めて全力疾走しているようだ。


 気配的に跳躍したのだろうか、エコの気配がわたしの背後に! それから、ドンと押され――わたしは勢いでキャロリーメイトを頬張ってしまう。ていうか、一気にヘデラのあの唇に~!!


「~~~~~~っ!!」
「!?」


 ――――あっぶない。

 辛うじて回避した。


 危うくヘデラとキスしちゃうところだった……。
 そ、それはそれで……何を言ってるのわたし!


「……ネメシア、大丈夫か?」
「う、うん……」


 冷や冷やしたようなドキドキしたような。
 はぁ~と溜息を吐く。


「ヘデラ様~、ちゅ~るぅ!!」
「ああ、分かった分かった。後でな」
「ありがとうございますぅ~」


 エコは去った。
 相変わらず元気な猫ちゃんだ。


 それから入れ替わるようにして、トーチカがやって来た。相変わらずの虚ろな目。あれは、生まれつきらしいけれど。


「ヘデラ、ネメシア。冒険行く」


 そして、相変わらずの淡白さ。けれど、これもトーチカの魅力のひとつ。あんな感じだけど、仲間想い。わたしも彼女を認めているし、友達と思っている。


「あ~、ギヨティーネは大丈夫だ」
「大丈夫?」
「ああ、そっち・・・は任せろ。俺にはスターダストがあるからな。なんとでもなるよ」


 と、ヘデラは何故か自信満々に言った。
 どこからそんな自信が沸いて出てくるのだろう。でも、確かにスターダストなら、なんでも・・・・願いが叶うし、うん、きっと何とかなるわよね。


「そう。じゃあ~西の『ルイス』へ行こう。今、季節が冬のはずだから、雪が積もっていると思う。雪合戦しよ~」


 珍しいトーチカの提案。
 でも、ルイスかー。遠いのよねぇ。


「そうだな、たまには息抜きを――」


 ヘデラがうなずいた瞬間だった。
 外に大きな光が――



『ドォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ン!!!!!!!!!!!!!!!!!!』



 ――――と、何かが上空で大爆発を起こした。



「……え、なになに!?」

 わたしは慌てて外を見る。
 ヘデラやトーチカも近くに、と思ったのだけど、ヘデラはわたしを抱きしめて守る動作をした。

「ヘデラ……」
「ネメシアは俺が守るからな」
「……うん」

 かっこいい~。ヘデラはわたしの為にこうやって守ってくれる。いつも危険に遭遇すると直ぐにかばってくれる。だからこそ、そんなヘデラが好き。


「こんな大規模な爆発は、エクサダイトしかない」


 トーチカは分析していたのだろうか、そんな断定をした。……エクサダイト。そういえば、聞いた事がある。武具の精錬とかに使えるエクサニウムと、希少価値のあるエクサダイトがあるって。そっちは爆発するから扱いは慎重にと聞く。


 でもどうして、そんなモノが大爆発を起こしたのだろう。しかも上空で……。


 世界ギルドが動いている……?


 ちょっと不安が過る。
 そんな不安が襲って、わたしはヘデラの顔を覗いた。

「……」
「ネメシア、心配するな。俺がいる」
「…………ヘデラ」


 ぎゅっとされて、わたしは嬉しかった。
 ああ、やっぱりお父さんみたいな……暖かさ。


 心があたたかい。
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