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第306話 永遠の愛 - 守り続ける理由 -

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 パラディン全員を縛り上げ、リーダーの意識が戻るまで待った。――が、なかなか起きる気配がない。ちと本気出し過ぎたか。

 周囲の住民は、この異常事態に恐れて逃げ惑っていた。そのせいか、今は閑散としていた。誰もいない。風だけが吹き、寂しい。


 これだけの騒ぎだ。
 もしかしたら、トゥースの方からやって来るかもしれんな。


 などと立ちながら思考を回転させていると、

「あのさ、サトル」
「どうした、メサイア。顔が赤いぞ」

 まるで風邪でも引いたかのように真っ赤だった。気になって俺は、彼女のデコに手を当てた。

「ひゃう!?」
「ひゃうって……」
「ばばばばばか……。いきなり何すんのよ」
「お前こそいきなり何だよ」

「いや~…サトルの【オートスキル】が相変わらずの威力だったしさ、それに、ずっと使ってくれていたのね」

 そうか。
 超正確に言うとあの転生の契約は、メサイアではないのだが――実質こいつから貰った【オートスキル】だ。

「当たり前だろう。お前たちを守るためだからな」
「…………」

 メサイアは珍しく感動? しているようで、まさかの抱きついてきた。


「うぉ……メサイア」
「今日のサトル、強いしカッコイイわ!」
「知ってる」


 とかやっとると、フォルもくっ付いてきた。


「ああ~! 姉様ずるいです~! わたくしも兄様とベタベタ、ペロペロしたいです!!」

 ペロペロ? まて、それは腹筋の事か!
 ヤメレ!!

 などと心の中でツッコんでいれば……フォルはぎゅうぎゅうと押し当てて来た。すんげぇ感触だ。


「兄様は、この屈強くっきょうなパラディン達を一網打尽いちもうだじんにしてしまいました。さすが、わたくしの兄様♡ ギヨティーネの壊滅も時間の問題ですねっ♡」

 ニコっと笑顔を向けてくれるフォル。
 それから、リースもやって来て天使の笑顔を向けてくれる。

「サトルさん、お疲れ様です♪」
「おう、ありがと」
「素晴らしいご活躍でした。あのギヨティーネのメンバーたちは、世界ギルド【フリージア】ですら手古摺てこずっていたのですよぉ~。それをアッサリと……本当にサトルさんは凄いです。あたし、改めてれちゃいました」

 そういえば、各地にいるギヨティーネは中々に抵抗しているようだ。フリージアのメンバーがヤツ等を壊滅に追いやろうと日々活動しているのだが、これがどうして……パラディンばかりだから、中々思うように処理出来なかったようだ。

 だが、俺登場で一気に形勢逆転。

 今や数十人にまで落ちていた。

 ていうか……リースから改めて惚れられちゃった。金髪エルフからラブコール! うんうん、やっぱりリースは分かってるね、俺の事。


「とりあえず、リーダーだけ拉致らちって場所を移そう」

 みんな同意した。
 俺はパラディンのリーダーだけを抱え歩き出した。


 ◆


 メサイアの女神専用スキル『ホワイト』を使用してもらい【花の邸宅】へ入った。ちなみに、この【花の邸宅】はネメシアとは同じ空間らしい。まさか共有されているとはな……だが、使用権はメサイアの方が上らしく、使用中はネメシアたちは入ってこれないんだとか。まあ、メサイアが言うには、ロックしているとか。


「リーダーパラディンは、この巨木・エクサスシダーにでも縛り付けておくか!」

 ちなみに巨木・エクサシスダーとは、このホワイト空間のそこら中に生えているバカデカイ木なのである。ここから更に向こうにはベルが眠っている。彼女を起こす方法も考えなきゃな。


 ◆


 邸宅うちへ入り、リビングへ向かうと、そこにはメサイアしか居なかった。フォルとリースの姿はない。

「あれ、二人は?」
「あー、二人はお風呂よ」
「そっか……」
「ちょっと、何お風呂行こうとしてんの!」
「え?」
「え、じゃないわよ! こっち来なさい」

 ポンポンと隣に来るよう指示され、俺はメサイアの隣の椅子へ腰かけた。かなり距離が近い。あの甘い匂いもする。これ好きなんだよなー。

「メサイア、こうして二人きりも久しぶりだな」
「え、ええ……」

 頬をほんのり赤く染めるメサイアは、肩を寄せて来た。……おぉ、なんかこういうのも久しぶり。家という空間の中で、まったりとする。

 ――ああ、そういえば昔は家を建てて……それでよく冒険に出たものだ。まぶたを閉じれば懐かしい思い出が蘇る。

「……あのさ、サトル」
「ん」
「私はずっとこうしたかったの。二人きりでゆっくりして、二人きりでお話する……。やっとこうして落ち着けたわね」

 赤い瞳が俺を映し出す。
 そうだな、俺もメサイアと一緒にいたかった。俺の、俺だけの女神。彼女がいなければ、過去も未来も無かったのだから。

 ネメシアやトーチカ、エコと出逢う事もなかった。みんなみんな大切な仲間。絶対に守らなきゃいけない仲間たち。


 だから、


 だからこそ、俺は【オートスキル】を使い続ける。これが俺の最強の武器だからな。こいつでずっと戦い続ける。守り続ける。何があろうとも全員守ってやる。


 今度はもう、生贄にされないように。



「メサイア」



 俺はそっと彼女の頬に触れた。


「……うん」


 メサイアは目を閉じ、待った。
 俺はそのまま彼女の唇に重ね合わせて愛を確かめ合った。……いや、確かめ合うまでもない。俺とメサイアの気持ちは一緒だ。いつもは照れちまって言わないだけで、この気持ちは不変で不滅。



 昔から変わらない。



 なにもかも。
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