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第303話 聖者と聖女 - 分身して二つの存在で世界を救え!! -

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 メサイアの家で一晩を過ごした後、俺は早々に本家・・へ帰宅。ネメシア達のいる邸宅いえの方だ。勿論もちろん、聖女の姿でな。

「ヘデラ……どこ行ってたの」

 なんと玄関前にたたずむネメシアの姿があった。
 心配そうな顔で今にも泣きだしそう。うぅ……あんな顔されると弱いんだよね、俺。ていうか、心配してくれていたんだなぁ。

「おはよう、ネメシア」
「おはようじゃないわよ……何処どこへ行っていたの。朝起きて姿が無かったから……邸宅いえ中探し回ったのよ」

 ずっと玄関で立ち尽くしていたようだ。おいおい、裸足じゃないか! 泥が付着しているように見えるし……深刻だなこれは。

「待たせてすまん」
「もう何処どこにも行かないで。わたし……ヘデラがいないと元気でないし、食欲も湧かない。辛すぎる……」

 なんか朝から重いぞ、ネメシアさん!
 けどまあ、それほど心配してくれたんだよな。ああ、嬉しいよ。嬉しすぎてちょっと胸がキュンときた。


 しかし困った……。


 たまにはメサイアたちと冒険と思ったのだが……俺の身体はひとつ・・・しかない。当然、可愛い娘であるネメシアの相手もしてやりたいけど、メサイアも気掛かりだ。二人とも大事だ。何かいい方法は――。


 あった。


 願望星屑【スターダスト】を使えばいい!!


 かなり悪魔的発想ではあるが、コンスタンティンの分身スキルの応用で俺の分身・・を作る。なぁに、俺の姿は元々おっさん姿本来の『サトル』と聖女『ヘデラ』が存在する。それを分離するだけ。

 だが、それは両方紛れもない俺なのである。意思も記憶も共有されるし、魂すらも同期される。ふたつだけどひとつの存在となるのだ。

 これは断じてクローンとかコピーロボとかドッペルゲンガーではない。まして、別の世界線とかパラレルワールド的な存在でもない。

 マジのガチで本人なのだ。だから、これでネメシアもメサイアも悲しませる事はない! サトルもヘデラも俺は俺なのだから問題ない。


「ネメシア、俺はもう何処にも行かないよ」
「ほんと~!? じゃあ許してあげる」

 ぱぁと顔を輝かせ、上機嫌になった。
 ふぅ、良かった。

 ――――そして、今頃はもうひとりの俺というか、本人おれもメサイア達の方へ向かっている頃だろうというか、向かっている。全ての感触とか感覚が共有されているから分かる。こりゃあ便利だ!


 一粒で二度美味しい的な!!


 ということで、俺はしばらくメサイア側を主軸にすることにした。こちらはこちらで活動するけどな。


 さ~て『サトル』側へ。



 ◆◇ ◆◇ ◆◇


「――兄様?」

 フォルの青桃オッドアイが目の前にあった。
 ここは家の中。椅子に座り、俺のひざの上にフォルがいた。向き合うようにまたがられており、距離がかなり近い。ふんわりした感触とか、聖女独特の香りとか……たまらん。

 俺は彼女の引き締まった腰に手を当て、抱き寄せた。もっと距離がグッと縮まり、もういろいろ接触しまくっていた。

「フォルもすっかり大人びたなぁ」
「人間ですから成長しますよ~」
「そうだな、胸とか凄いし」
「ええ、あれから三年経ちましたからね」

 えっへんと目の前で胸を張るフォル。
 確かに、目に見えて大きく成長していた。
 それを独り占めできる俺。幸せ!

 そんな風にイチャイチャしていれば、リースが身体を伸ばしながらリビングに入ってきた。

「おはよ~、フォルちゃん……って、サトルさんとナニしてるのー!! ちょっと、そこ変わって!!」

 慌しい様相で走って来るリースは、フォルを引き剥がそうとした。しかし、そこへメサイア登場。

「あー、ねむ。……って、朝っぱらから何してるのよ」

 目をりボケボケしている女神。
 まあ昨日遅かったしな。――にしても、服が乱れ肩肌が見えていた。メサイアの服は黒のTシャツ一枚で大胆にフトモモを露出していた。目の保養にバッチリである。


「よ、メサイア。さっそくだが、ギヨティーネをぶっ潰そうぜ!」


「ギヨティーネ? ああ、あの裏切りギルド。ギルドマスターはパラディンキングの『トゥース』でしょ。元々は『聖者祭』アルビオンにも来ていたギルドね。けれど、あのギルドは協力的ではなかったし、反抗的だった。だから、表舞台から姿を消していた……」


 メサイアの説明通りだった。
 彼らは裏で暗躍し、レイドボスやコンスタンティン、あの『星の都』の事件にも密かに関わっていたようだ。

 中でも驚いたのは『アルクトゥルス』から『聖者』の力を与えられているらしい事。つまり、俺と同等の存在だ。……いや、そうでもないな。俺には【スターダスト】がある。違いがあると言えば、それ・・だ。


「ま、裏切者には報いをな」
「そうね、おかげで私たちの生活めちゃくちゃだもん。そんな馬鹿共には痛い目を合わせなきゃね、こちらの気が晴れないわ」

「よくぞ言った、メサイア。……よし、リースよ、さっそく『テレポート』を頼む。目的地は、ギヨティーネの潜伏先と噂されている『デン』だ」

「分かりました! では、一定の範囲内に寄って下さい。テレポートを開始しますね」

 ぎゅと手を握り、気合を入れるリース。
 そんな太陽のような笑顔を向けられ、俺はキュンと来てしまった。……この金髪エルフ超可愛い。

 とりあえず、ひざの上に乗せているフォルをお姫様抱っこし、立ち上がった。

「……ひゃぅ、兄様♡ こんな風に抱かれて……わたくし幸せ過ぎて死んでしまいますぅ~♡」

 俺の腕の中でとろけるフォル。
 このまま向かうか!
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