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第291話 死者復活 - シュピネダンジョン① -
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この世界は正常なのか?
それとも異常なのか――。
それを知る術はなかったように思えた。だが、今や俺の頭は完全覚醒し、己の生い立ち、持つ最強能力【オートスキル】を理解し、果ては自身が梅干し嫌いである記憶を鮮明に思い出した。
本来の俺は、女でもなければ聖女でもない。
ただのおっさんだ。
そんなヘンタイギリギリを攻める俺には、奇跡みたいな仲間がいた。彼女たちは俺の真の姿を知らないが、世界を救おうとする同志である。
出逢ってから【スターダスト】などという、三つの願いが叶う星屑を掻き集めていたけれど、それもつい最近になって達成された。
改めて紹介しよう。
まずは俺の傍を離れようとしない少女だ。
変わった頭髪、そういうファッションらしい――黒(金銀メッシュ)、しかも片目隠し。これはベルをリスペクトしていると思われる。そんな変わった髪型をしていた。
もちもちかつ透き通るような肌もポイントが高い。そんな漆黒のゴスロリに身を包むライブ配信大好きっ子のライバー少女は――ネメシア。
明るく元気で、繊細な心を持つ乙女だ。
その正体は『女神』であり、俺の娘でもあった。
だが、俺はまだ本人には真実を打ち明けていない。でもきっと、そのうちその時がくるだろう。今はこれでいい。
それから、俺の前を歩くネコミミメイド。
名をトーチカ。
俺のかつての友人『ぽむぽむ』改め『ぼむぼむ』――超絶マッチョに成り果てたおっさんの娘なのだ。髪は、母親譲りなのだろうか桃色。そして、あの虚ろな瞳。どうして、そんな目なのか分からんが、会った当初からああだったので……生まれつきなのかもしれない。
それから、俺の頭の上に乗っている黒猫。
シャミセンだ。以上。
「ちょぉぉぉぉっと!! ヘデラ様、私の紹介は以上です!? 扱い酷くありません!? 猫権侵害ですよ!」
ギャアギャア頭の上から抗議してくる猫。
「……いやだって、お前は猫だし」
「元の姿はエルフですよぉ!」
コッソリ耳打ちしてくるセクシーボイスが鼓膜を刺激した。なんて心地よい。ほんのりエクスタシーを感じてしまう。仕方ない、こいつも紹介しよう。
――この何処にでもいそうな黒猫は、エコ。
リースが召喚した万能生物である。その正体はロリエルフであり、なぜか俺しかその正体を視認できない謎仕様である。
時と場合によっては、目からビームを出し、口から火を吐く。もはや、猫なのか鵺あるいはキメラなのかたまに混乱する時がある。
誰か答えを教えてくれ。
そんな俺を含め三人と一匹は、険しい森の中を歩いていた。どうやら湿地帯のようで、湿度が高く――虫も多かった。
で、ここは『シュピネダンジョン』という。
なかなかの高レベルダンジョンだった。
俺たちは『パロブ』という国を目指していたのだが、そこへ辿り着くにはこのダンジョンを突破しなければならなかった。
超絶面倒だが仕方あるまい。
しかし、こうしてダンジョンへ赴く。
そういった経験はこの聖女の姿になってからは、なかったので新鮮だ。久しぶりの冒険のニオイに俺は少し高揚した。
「ヘデラ、ちょっと楽しそうね」
俺の顔を覗いてくるネメシアは、自身も楽しそうにそう言った。そういえば、今日はご機嫌だな。
「ん、分かるのか? 実はちょっとな、こう皆で出かけるって久しぶりだったからさ」
「そうね、ずっとレメディオスばかりだったし、たまには外のダンジョンとか篭もるのも気晴らしになっていいかもね。世界の事ばかり考えていても息が詰まっちゃうもの」
顔を更に近づけてくるネメシアからは、良い匂いがした。
今日は甘い匂いではなく、柑橘系のさっぱりしたものだった。これは、リースの……へぇ、香水を借りたのかな。俺も今度借りようかな。
「よし、今日はモンスターを狩ってレアアイテムをゲットして、それでパロブへ向かおう。いいな?」
「うん。そうしましょう、ライブ配信もバッチリしておくし――――」
ネメシアが笑顔でそう答えている最中だった。
彼女の服がいきなり溶けて――
「え……」
なんと、ほぼ裸になってしまったのである。
「? どしたの、ヘデラ」
「いや……見えてる」
「見えてる? なにが?」
「胸とか肌が……」
「へ……って、きゃああああああああああああああ!! ヘデラのバカー! えっち! ヘンタイ、うあああああああん!」
やっと気づいたようで、ネメシアは取り乱しその場に座り込んだ。激しく赤面して手などで必死に身体を隠している。
って、
「待てコラ! 女同士だろうがっ。トーチカも一応、猫も性別は女だ。だから恥ずかしがる必要はないぞ。堂々としてりゃいいだろ」
「そ、そうだけどー…」
不満そうに赤い瞳で抗議してくる。
やれやれ、何を意識しているんだかネメシアのヤツは。今まで散々一緒に風呂とか入ったろうに。
まあ、それにしても――凄い肌の露出。
ゴスロリはほとんど溶けてしまっている。
いったい、どうして?
「ヘデラ! あぶないっ!!」
「うわっ!!」
突然、トーチカが俺の背中を押した。
なにが危ないっていうんだ!?
それとも異常なのか――。
それを知る術はなかったように思えた。だが、今や俺の頭は完全覚醒し、己の生い立ち、持つ最強能力【オートスキル】を理解し、果ては自身が梅干し嫌いである記憶を鮮明に思い出した。
本来の俺は、女でもなければ聖女でもない。
ただのおっさんだ。
そんなヘンタイギリギリを攻める俺には、奇跡みたいな仲間がいた。彼女たちは俺の真の姿を知らないが、世界を救おうとする同志である。
出逢ってから【スターダスト】などという、三つの願いが叶う星屑を掻き集めていたけれど、それもつい最近になって達成された。
改めて紹介しよう。
まずは俺の傍を離れようとしない少女だ。
変わった頭髪、そういうファッションらしい――黒(金銀メッシュ)、しかも片目隠し。これはベルをリスペクトしていると思われる。そんな変わった髪型をしていた。
もちもちかつ透き通るような肌もポイントが高い。そんな漆黒のゴスロリに身を包むライブ配信大好きっ子のライバー少女は――ネメシア。
明るく元気で、繊細な心を持つ乙女だ。
その正体は『女神』であり、俺の娘でもあった。
だが、俺はまだ本人には真実を打ち明けていない。でもきっと、そのうちその時がくるだろう。今はこれでいい。
それから、俺の前を歩くネコミミメイド。
名をトーチカ。
俺のかつての友人『ぽむぽむ』改め『ぼむぼむ』――超絶マッチョに成り果てたおっさんの娘なのだ。髪は、母親譲りなのだろうか桃色。そして、あの虚ろな瞳。どうして、そんな目なのか分からんが、会った当初からああだったので……生まれつきなのかもしれない。
それから、俺の頭の上に乗っている黒猫。
シャミセンだ。以上。
「ちょぉぉぉぉっと!! ヘデラ様、私の紹介は以上です!? 扱い酷くありません!? 猫権侵害ですよ!」
ギャアギャア頭の上から抗議してくる猫。
「……いやだって、お前は猫だし」
「元の姿はエルフですよぉ!」
コッソリ耳打ちしてくるセクシーボイスが鼓膜を刺激した。なんて心地よい。ほんのりエクスタシーを感じてしまう。仕方ない、こいつも紹介しよう。
――この何処にでもいそうな黒猫は、エコ。
リースが召喚した万能生物である。その正体はロリエルフであり、なぜか俺しかその正体を視認できない謎仕様である。
時と場合によっては、目からビームを出し、口から火を吐く。もはや、猫なのか鵺あるいはキメラなのかたまに混乱する時がある。
誰か答えを教えてくれ。
そんな俺を含め三人と一匹は、険しい森の中を歩いていた。どうやら湿地帯のようで、湿度が高く――虫も多かった。
で、ここは『シュピネダンジョン』という。
なかなかの高レベルダンジョンだった。
俺たちは『パロブ』という国を目指していたのだが、そこへ辿り着くにはこのダンジョンを突破しなければならなかった。
超絶面倒だが仕方あるまい。
しかし、こうしてダンジョンへ赴く。
そういった経験はこの聖女の姿になってからは、なかったので新鮮だ。久しぶりの冒険のニオイに俺は少し高揚した。
「ヘデラ、ちょっと楽しそうね」
俺の顔を覗いてくるネメシアは、自身も楽しそうにそう言った。そういえば、今日はご機嫌だな。
「ん、分かるのか? 実はちょっとな、こう皆で出かけるって久しぶりだったからさ」
「そうね、ずっとレメディオスばかりだったし、たまには外のダンジョンとか篭もるのも気晴らしになっていいかもね。世界の事ばかり考えていても息が詰まっちゃうもの」
顔を更に近づけてくるネメシアからは、良い匂いがした。
今日は甘い匂いではなく、柑橘系のさっぱりしたものだった。これは、リースの……へぇ、香水を借りたのかな。俺も今度借りようかな。
「よし、今日はモンスターを狩ってレアアイテムをゲットして、それでパロブへ向かおう。いいな?」
「うん。そうしましょう、ライブ配信もバッチリしておくし――――」
ネメシアが笑顔でそう答えている最中だった。
彼女の服がいきなり溶けて――
「え……」
なんと、ほぼ裸になってしまったのである。
「? どしたの、ヘデラ」
「いや……見えてる」
「見えてる? なにが?」
「胸とか肌が……」
「へ……って、きゃああああああああああああああ!! ヘデラのバカー! えっち! ヘンタイ、うあああああああん!」
やっと気づいたようで、ネメシアは取り乱しその場に座り込んだ。激しく赤面して手などで必死に身体を隠している。
って、
「待てコラ! 女同士だろうがっ。トーチカも一応、猫も性別は女だ。だから恥ずかしがる必要はないぞ。堂々としてりゃいいだろ」
「そ、そうだけどー…」
不満そうに赤い瞳で抗議してくる。
やれやれ、何を意識しているんだかネメシアのヤツは。今まで散々一緒に風呂とか入ったろうに。
まあ、それにしても――凄い肌の露出。
ゴスロリはほとんど溶けてしまっている。
いったい、どうして?
「ヘデラ! あぶないっ!!」
「うわっ!!」
突然、トーチカが俺の背中を押した。
なにが危ないっていうんだ!?
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