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第286話 女神の懺悔 - 選択肢はひとつではない -
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「待ってくれ、ネメシアを放っておけない」
「兄様。そのネメシアですが、さきほど兄様を探しておられていたので、連れて参りました。はい、こちらです」
しゅっとネメシアの背中を押すフォル。
本人登場だった。
「おま……起きてたのかよ」
「…………ごめんね、ヘデラ。わたし」
「何も言うな。お前の気持ちが何よりも一番大切なんだ」
「ヘデラ……分かってくれるの?」
「見極める」
「え……」
「まだ可能性はあるんじゃないかって思う。そもそも、スターダストはなんでも叶う万能の星屑のはず。だったらさ、もっと他の選択だってあるんじゃないか、ネメシア」
そう、なにも選択肢はひとつではない。
誰がひとつだけと定めた? そんなルールはないはずだ。この世界は自由なのだから。いろんな手段を模索してもいいはずだ。
「…………そうね、それは思いつかなかったわ」
盲点だったと、ネメシアは頭を抱えた。
自ら黒髪(金銀メッシュ入り)をクシャクシャと掻くと、叫んだ。
「ごめぇーーーーーーーーーーーーーーーーん!!! 意地はってえええぇ!!! わたしが悪かったわ~~~~~~~~~!!!」
「えぇ!? どうした、ネメシア……落ち着けって。別に怒っちゃいないし、お前の気持ちも痛い程分かる」
「うん……。で、でもね。最初に言ったでしょ……私の我儘だって。でもやっぱり、無理だった」
あ~、んなこと言っていたような気もするな。でも良かった、どうやらそこまで本心ではなかったみたいだな。
――でも。
「ネメシア、お前は死神になってしまったか?」
俺は居ても立ってもいられず、ネメシアの頬に触れ確かめた。
「…………っ、ヘデラ。は、恥ずかしいよ……お母さんたちの目の前で」
「問題はない。――あ、瞳濁ってないな。一瞬だけだったのか」
「そうみたい。寝たら治ってた。ヘデラと一緒ね」
そう、俺も寝たら治っていたっけ。
あの暴走モード。黒聖女。なぜああなったのか未だに分からんけど、これはネメシアにも関連することなのだろうか――?
「まあ無事でよかったよ」
「心配掛けちゃってごめんね。だからね、ヘデラ……」
「ん?」
ネメシアは周囲の視線を気にしながらも、しかし、抱きついて来た。……お、意外と大胆だな。ま、俺にとっては娘を抱くようなものだけど。
「よしよし、辛かったんだよな」
「……うん」
「おほん」
フォルが咳払いした。
このフォルはちょっとだけ怖いな。超絶美人だけど。
「……ネメシア」
「ひぃ!! ごごごごごごめんなさい、お母さん……」
「まーーーーーーーーーーた、駄々をこねましたね。そして、人に迷惑を掛けた。しかも、よりによって兄様に」
「そ、それはそうだけれど……。お、お母さん……お尻ペンペンはやめてよ!?」
「……そんな酷いことはしません。ねぇ、リース」
「ええ、フォルちゃんは優しいですから。もしもそんなお尻ペンペンとかしていたのなら、このあたしが許しませんからっ」
「リースママ……さっすがね! でも、フォルお母さん実はペンペンしてるよ」
ネメシアは容赦なく告発した。
「フォルちゃーーーーーーーーーーーん」
「…………ぇ」
フォルよりリースの方が怖かったか……。
「リ、リース……その、これは……! そうです。愛の鞭です。ネメシアが可愛すぎるがゆえの教育ですよ。そ、その他意はありませんから……これでも、わたくしは聖女ですよ。そんな酷いことなんて……」
「本当かなぁ。ネメシアちゃんを迎え入れてからというもの、ずっと厳しかったじゃない。たまには優しくしてあげてよ」
リースはそう困った顔で言った。
ありゃ、相当厳しい教育だったんだろうな。ま、そりゃ捻くれて無職の配信者になっちゃうわけだわ、ネメシア。
わーわー騒いでいると、今度はサイネリアが咳払いした。
「皆さん、お話はそれくらいに。今や世界の危機ですのよ。ヘデラ様、ひとまずそのフォルとリースさんはお返しします。もし気が変わったのなら、いつでも世界ギルド『フリージア』を訪ねて下さい。割と近くにいますから」
――と、サイネリアは言い残し去った。
え、レメディオスにあったのか!?
ま……ここって元は【花の都】だしな。思えば、見覚えのある顔もいくつかいたわ。そうか、俺は本当にいろいろ忘れていたんだな。
そう思い返していた時だった――
『ドォォォォォォォォォォォォォォ~~~~~~~~~~~~~~~~ン!!!!!!!!!!!!!!!』
――と、レメディオス全体が激しく揺れた。
地震!?
「兄様……奴等です。天帝の【ダークスター】でしょう。この【レメディオス】に直接乗り込んできたようですよ」
「ああ……フォル。この背筋が凍るような気配は間違いないだろう。リースも一緒に来てくれるよな」
「もちろんです。あたしは、あなたのエルフですから」
っしゃあああああああああ、やる気でたあああああ!!
そして、そいつは空から現れた――
『…………ホッホッホホホホホホ……………。【ダークスター】がひとり…………『ソクラテス』でございます……ホホホホ』
不気味な紫の眼光を放つ人影。
こいつは……やべぇな!
「兄様。そのネメシアですが、さきほど兄様を探しておられていたので、連れて参りました。はい、こちらです」
しゅっとネメシアの背中を押すフォル。
本人登場だった。
「おま……起きてたのかよ」
「…………ごめんね、ヘデラ。わたし」
「何も言うな。お前の気持ちが何よりも一番大切なんだ」
「ヘデラ……分かってくれるの?」
「見極める」
「え……」
「まだ可能性はあるんじゃないかって思う。そもそも、スターダストはなんでも叶う万能の星屑のはず。だったらさ、もっと他の選択だってあるんじゃないか、ネメシア」
そう、なにも選択肢はひとつではない。
誰がひとつだけと定めた? そんなルールはないはずだ。この世界は自由なのだから。いろんな手段を模索してもいいはずだ。
「…………そうね、それは思いつかなかったわ」
盲点だったと、ネメシアは頭を抱えた。
自ら黒髪(金銀メッシュ入り)をクシャクシャと掻くと、叫んだ。
「ごめぇーーーーーーーーーーーーーーーーん!!! 意地はってえええぇ!!! わたしが悪かったわ~~~~~~~~~!!!」
「えぇ!? どうした、ネメシア……落ち着けって。別に怒っちゃいないし、お前の気持ちも痛い程分かる」
「うん……。で、でもね。最初に言ったでしょ……私の我儘だって。でもやっぱり、無理だった」
あ~、んなこと言っていたような気もするな。でも良かった、どうやらそこまで本心ではなかったみたいだな。
――でも。
「ネメシア、お前は死神になってしまったか?」
俺は居ても立ってもいられず、ネメシアの頬に触れ確かめた。
「…………っ、ヘデラ。は、恥ずかしいよ……お母さんたちの目の前で」
「問題はない。――あ、瞳濁ってないな。一瞬だけだったのか」
「そうみたい。寝たら治ってた。ヘデラと一緒ね」
そう、俺も寝たら治っていたっけ。
あの暴走モード。黒聖女。なぜああなったのか未だに分からんけど、これはネメシアにも関連することなのだろうか――?
「まあ無事でよかったよ」
「心配掛けちゃってごめんね。だからね、ヘデラ……」
「ん?」
ネメシアは周囲の視線を気にしながらも、しかし、抱きついて来た。……お、意外と大胆だな。ま、俺にとっては娘を抱くようなものだけど。
「よしよし、辛かったんだよな」
「……うん」
「おほん」
フォルが咳払いした。
このフォルはちょっとだけ怖いな。超絶美人だけど。
「……ネメシア」
「ひぃ!! ごごごごごごめんなさい、お母さん……」
「まーーーーーーーーーーた、駄々をこねましたね。そして、人に迷惑を掛けた。しかも、よりによって兄様に」
「そ、それはそうだけれど……。お、お母さん……お尻ペンペンはやめてよ!?」
「……そんな酷いことはしません。ねぇ、リース」
「ええ、フォルちゃんは優しいですから。もしもそんなお尻ペンペンとかしていたのなら、このあたしが許しませんからっ」
「リースママ……さっすがね! でも、フォルお母さん実はペンペンしてるよ」
ネメシアは容赦なく告発した。
「フォルちゃーーーーーーーーーーーん」
「…………ぇ」
フォルよりリースの方が怖かったか……。
「リ、リース……その、これは……! そうです。愛の鞭です。ネメシアが可愛すぎるがゆえの教育ですよ。そ、その他意はありませんから……これでも、わたくしは聖女ですよ。そんな酷いことなんて……」
「本当かなぁ。ネメシアちゃんを迎え入れてからというもの、ずっと厳しかったじゃない。たまには優しくしてあげてよ」
リースはそう困った顔で言った。
ありゃ、相当厳しい教育だったんだろうな。ま、そりゃ捻くれて無職の配信者になっちゃうわけだわ、ネメシア。
わーわー騒いでいると、今度はサイネリアが咳払いした。
「皆さん、お話はそれくらいに。今や世界の危機ですのよ。ヘデラ様、ひとまずそのフォルとリースさんはお返しします。もし気が変わったのなら、いつでも世界ギルド『フリージア』を訪ねて下さい。割と近くにいますから」
――と、サイネリアは言い残し去った。
え、レメディオスにあったのか!?
ま……ここって元は【花の都】だしな。思えば、見覚えのある顔もいくつかいたわ。そうか、俺は本当にいろいろ忘れていたんだな。
そう思い返していた時だった――
『ドォォォォォォォォォォォォォォ~~~~~~~~~~~~~~~~ン!!!!!!!!!!!!!!!』
――と、レメディオス全体が激しく揺れた。
地震!?
「兄様……奴等です。天帝の【ダークスター】でしょう。この【レメディオス】に直接乗り込んできたようですよ」
「ああ……フォル。この背筋が凍るような気配は間違いないだろう。リースも一緒に来てくれるよな」
「もちろんです。あたしは、あなたのエルフですから」
っしゃあああああああああ、やる気でたあああああ!!
そして、そいつは空から現れた――
『…………ホッホッホホホホホホ……………。【ダークスター】がひとり…………『ソクラテス』でございます……ホホホホ』
不気味な紫の眼光を放つ人影。
こいつは……やべぇな!
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