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第285話 エルフと聖女の帰還 - 令嬢のアドバイス -
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遅くなってしまったので――翌朝。
<ピンポ~ン!!>
――と、珍しくチャイムが鳴った。なんだ、来客かぁ……起き上がるの超絶面倒臭いなぁ。誰か出てくれないかなぁ?
<ピンポ~ン!!><ピンポ~ン!!><ピンポ~ン!!>
うるせぇなぁ、そんな連打してくれるなよ。頭に響く。
<ピンポ~ン!!><ピンポ~ン!!><ピンポ~ン!!><ピンポ~ン!!><ピンポ~ン!!><ピンポ~ン!!><ピンポ~ン!!>
「だあああああああ、うるせぇし、しつけぇ!! 分かったよ、出ればいいんだろ出れば! ていうか、トーチカとエコはどうした……」
服を着て俺は玄関へ向かった。
……あ、しまった。顔洗ってないや。聖女として身だしなみは大事だよな。その間にも呼び鈴は連打されまくっているが無視だ。
◆
「どなたですか!!」
面倒ながらも俺は玄関を開けた。
するとそこには――
「ちわぁ~、宅配便でぇす。サインおにゃしゃす~!」
そこにいたのは『ミケネコヤマトの宅配便』だった。
独特な作業服を着た爽やか笑顔の少年(?)がいた。
「あ~? 宅配便だぁ? ――――まさか!」
「サインおにゃしゃす~」
「あ……おう」
カキカキっとサインし、俺は荷物を受け取った。
「あざあああっす。ちゃちゃーす!」
なに言っているか分からんが、ありがとうと言いたいらしい。ミケネコヤマトのお兄ちゃんは笑顔で去った――。
この『小包』……まさかな。
この中には聖女コンテストの優勝賞品【スターダスト】が入っているんじゃ。いや、そうに違いない。
さっそく開封を――
「ちゃーす」
小包を開封しようとしたそのタイミングで、また別の誰かがやって来た。今度は違う服の宅配業者のようだ。
「オーバーイーツっす~」
「はい? んなもん頼んでないけど」
「この家で間違いないっすけどね」
「あ、それ私のです。『ちゅぅ~るぅ』を頼んだのですよ」
セクシーボイスが自身の背より低い場所から聞こえた。このエロすぎな声は猫だ。
「エコ、お前かよ! 紛らわしいな。てか、お前の肉球じゃサインできねぇだろ」
「いえ、このオーバーイーツさんは受け取りのサインは不要なんです。本来なら面会も不要ですから。今や定番の置き配ですよ~」
なるほどねー!
てか、猫がんなもん利用すなー!
◆
ネメシアはまだ眠ったまま。敵の気配も不気味なくらいない。
俺は、結局届いた小包を開封できなかった。なぜなら、ネメシアのことが頭を過ったからだ。彼女の言う通りこの世界が消えたら、ネメシアも消えてしまう。
俺はどうしたらいい……。
レメディオスの噴水で、珍しくひとり悩んでいると――
急に風が吹いた。
まるで俺の頬を撫でるような……そんな祝福にも近い、温かみのある風。誰だぁ、俺の悩みを癒そうとする目に見えないモノは。ちょっとホロリとくるじゃん(涙)
「……まったく、なにを湿気ておりますの、聖女・ヘデラ」
「あ、あんた。サイネリアじゃないか」
コウシ戦以来、行方不明だったけど――まだ【レメディオス】にいたんだな。相変わらずの豪華なドレス。美しい風貌をしている。
そういえば、サイネリアのことも思い出した。
ヘールボップ家のご令嬢だった。俺たちと敵対することも暫しあった。そして今は仲間らしい。今まで一体、どこで何をしていたんだろうな。
「グーパーコンビは?」
「ヘデラ様、あなたのヒールのおかげで無事ですわ」
「そうか」
「元気ありませんのね。ひょっとして……ネメシアに何かありましたのです? ……ふぅん、その顔。図星ですわね。実に分かりやすい」
俺、顔に出てたか……悩み過ぎたな。
「ひとつアドバイスを致しましょう」
「アドバイス~?」
「もう少し世界を見渡しなさい。今のあなたは視野が狭すぎですよことよ。この【レメディオス】だけで腐るのではなく――敵を見据え、何が正しいか見極めるのです。そう……あなたは世界の【理】なのだから。
忘れないで欲しいですわ。あなたを必要としている者はたくさんいますの」
「俺を必要としている……?」
「ええ、あなたは今は聖女かもしれませんけれど……それ以上に希望なのですから。だから、ここで心を折られても困りますの。ですから、この大切な二人を託しますわ」
大切な二人?
まさか、グーパーじゃないだろうな。いらんぞ、あんなマッチョ。てか、ぼむぼむと言い、マッチョ率たけぇなオイ。
なんだ、今はそういう筋トレマッチョブームなのかぁ?
そうして、その二人は現れた。
「…………っ」
驚いた。
予想外のサプライズに、俺は腰を抜かしたほどだ。
「…………え、うそ」
「はじめまして――ではりませんね。この前の大会振りですね、兄様」
「お久しぶりです。えーっと……今はヘデラさんよね。本名呼んでもいいのかな?」
あー…、これはビックリだ。
先に挨拶したのは、銀髪の聖女でフォルトゥナ。フォルだ。俺の姿の元になった少女。ちょっと大人びてはいるけど、変わらず綺麗で……出てるところ爆裂に出ている。
もう片方は言うまでもないな。世界一可愛いエルフ、リースだ。
金髪のロングヘアが風で靡いている。あぁ……いつの時代もリースは可愛いな。あんなふにふにのつるつる肌。……こんな女姿の俺ですら、見惚れてしまう。
「兄様。なにをへこんでいらっしゃるのですか。兄様らしくないですよ」
とか言ってフォルは、いきなり抱きついてきた。
もう理性すら抑えきれていないじゃないか!? いつしかのように腹筋をペロペロされそうだな。要警戒だ!
「フォルちゃんの言う通りです。サ……ヘデラさん。あなたは全てを手に入れられる力を持っているのです。全てです。いきましょう、外へ」
リースが手を引っ張ってくる。
俺は……
<ピンポ~ン!!>
――と、珍しくチャイムが鳴った。なんだ、来客かぁ……起き上がるの超絶面倒臭いなぁ。誰か出てくれないかなぁ?
<ピンポ~ン!!><ピンポ~ン!!><ピンポ~ン!!>
うるせぇなぁ、そんな連打してくれるなよ。頭に響く。
<ピンポ~ン!!><ピンポ~ン!!><ピンポ~ン!!><ピンポ~ン!!><ピンポ~ン!!><ピンポ~ン!!><ピンポ~ン!!>
「だあああああああ、うるせぇし、しつけぇ!! 分かったよ、出ればいいんだろ出れば! ていうか、トーチカとエコはどうした……」
服を着て俺は玄関へ向かった。
……あ、しまった。顔洗ってないや。聖女として身だしなみは大事だよな。その間にも呼び鈴は連打されまくっているが無視だ。
◆
「どなたですか!!」
面倒ながらも俺は玄関を開けた。
するとそこには――
「ちわぁ~、宅配便でぇす。サインおにゃしゃす~!」
そこにいたのは『ミケネコヤマトの宅配便』だった。
独特な作業服を着た爽やか笑顔の少年(?)がいた。
「あ~? 宅配便だぁ? ――――まさか!」
「サインおにゃしゃす~」
「あ……おう」
カキカキっとサインし、俺は荷物を受け取った。
「あざあああっす。ちゃちゃーす!」
なに言っているか分からんが、ありがとうと言いたいらしい。ミケネコヤマトのお兄ちゃんは笑顔で去った――。
この『小包』……まさかな。
この中には聖女コンテストの優勝賞品【スターダスト】が入っているんじゃ。いや、そうに違いない。
さっそく開封を――
「ちゃーす」
小包を開封しようとしたそのタイミングで、また別の誰かがやって来た。今度は違う服の宅配業者のようだ。
「オーバーイーツっす~」
「はい? んなもん頼んでないけど」
「この家で間違いないっすけどね」
「あ、それ私のです。『ちゅぅ~るぅ』を頼んだのですよ」
セクシーボイスが自身の背より低い場所から聞こえた。このエロすぎな声は猫だ。
「エコ、お前かよ! 紛らわしいな。てか、お前の肉球じゃサインできねぇだろ」
「いえ、このオーバーイーツさんは受け取りのサインは不要なんです。本来なら面会も不要ですから。今や定番の置き配ですよ~」
なるほどねー!
てか、猫がんなもん利用すなー!
◆
ネメシアはまだ眠ったまま。敵の気配も不気味なくらいない。
俺は、結局届いた小包を開封できなかった。なぜなら、ネメシアのことが頭を過ったからだ。彼女の言う通りこの世界が消えたら、ネメシアも消えてしまう。
俺はどうしたらいい……。
レメディオスの噴水で、珍しくひとり悩んでいると――
急に風が吹いた。
まるで俺の頬を撫でるような……そんな祝福にも近い、温かみのある風。誰だぁ、俺の悩みを癒そうとする目に見えないモノは。ちょっとホロリとくるじゃん(涙)
「……まったく、なにを湿気ておりますの、聖女・ヘデラ」
「あ、あんた。サイネリアじゃないか」
コウシ戦以来、行方不明だったけど――まだ【レメディオス】にいたんだな。相変わらずの豪華なドレス。美しい風貌をしている。
そういえば、サイネリアのことも思い出した。
ヘールボップ家のご令嬢だった。俺たちと敵対することも暫しあった。そして今は仲間らしい。今まで一体、どこで何をしていたんだろうな。
「グーパーコンビは?」
「ヘデラ様、あなたのヒールのおかげで無事ですわ」
「そうか」
「元気ありませんのね。ひょっとして……ネメシアに何かありましたのです? ……ふぅん、その顔。図星ですわね。実に分かりやすい」
俺、顔に出てたか……悩み過ぎたな。
「ひとつアドバイスを致しましょう」
「アドバイス~?」
「もう少し世界を見渡しなさい。今のあなたは視野が狭すぎですよことよ。この【レメディオス】だけで腐るのではなく――敵を見据え、何が正しいか見極めるのです。そう……あなたは世界の【理】なのだから。
忘れないで欲しいですわ。あなたを必要としている者はたくさんいますの」
「俺を必要としている……?」
「ええ、あなたは今は聖女かもしれませんけれど……それ以上に希望なのですから。だから、ここで心を折られても困りますの。ですから、この大切な二人を託しますわ」
大切な二人?
まさか、グーパーじゃないだろうな。いらんぞ、あんなマッチョ。てか、ぼむぼむと言い、マッチョ率たけぇなオイ。
なんだ、今はそういう筋トレマッチョブームなのかぁ?
そうして、その二人は現れた。
「…………っ」
驚いた。
予想外のサプライズに、俺は腰を抜かしたほどだ。
「…………え、うそ」
「はじめまして――ではりませんね。この前の大会振りですね、兄様」
「お久しぶりです。えーっと……今はヘデラさんよね。本名呼んでもいいのかな?」
あー…、これはビックリだ。
先に挨拶したのは、銀髪の聖女でフォルトゥナ。フォルだ。俺の姿の元になった少女。ちょっと大人びてはいるけど、変わらず綺麗で……出てるところ爆裂に出ている。
もう片方は言うまでもないな。世界一可愛いエルフ、リースだ。
金髪のロングヘアが風で靡いている。あぁ……いつの時代もリースは可愛いな。あんなふにふにのつるつる肌。……こんな女姿の俺ですら、見惚れてしまう。
「兄様。なにをへこんでいらっしゃるのですか。兄様らしくないですよ」
とか言ってフォルは、いきなり抱きついてきた。
もう理性すら抑えきれていないじゃないか!? いつしかのように腹筋をペロペロされそうだな。要警戒だ!
「フォルちゃんの言う通りです。サ……ヘデラさん。あなたは全てを手に入れられる力を持っているのです。全てです。いきましょう、外へ」
リースが手を引っ張ってくる。
俺は……
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