282 / 466
第282話 本当の名 - 理の再生と修復 -
しおりを挟む
ネメシアは全身真っ黒に染まり、倒れた。
まるで毒に侵されたかのように酷い有様だ。
そんな緊急事態につき、トーチカとエコもまとめて抱えて――速攻で邸宅へ戻った。そして、ネメシアを俺の部屋に寝かせていた。
なにがどうなっている。サッパリだ。分からん。一体全体、誰の仕業だ。ついに『天帝』とかいうアホが動き出したのか!?
だが、ネメシアが倒れる際、『ママ』と言っていた。
――ママ?
ネメシアのママ?
いったい誰のことを指している。フォル? リース? ベル? それとも…………そうか。一番大切な人物を忘れていた。
だがこれは、あくまで推測。
本当かどうかは分からんが……『メサイア』の事ではなかろうか。
だとすれば、合点がいく。
もしも、メサイアの意思が介入したというのなら、ネメシアが突然、死神に変わってしまったのも頷ける。
あの例の夢――アイツは、あの時『頼むわね』と俺に言い残して消えた……。俺に何をしろというんだ……? ネメシアは、俺にとってどんな存在なんだ?
そう深く考えた事は無かったな。
彼女は……
俺にとって…………
女神? 相棒? 友達? 恋人? 愛人? 嫁? ただの知り合い?
答えは全部『NO』だ。
――――あぁ、いい加減に認めないとな俺よ。
もう記憶だって割かし戻ってきている。
分かっていたよ、本当は。
まさか、ここが『未来』で、ネメシアが『俺の娘』とか思わんだろう、普通。神の悪戯か? 本当になんの因果だよ。
娘から世話されまくってる俺っていったい……。
――でもま、だからこそ、ネメシアのあの駄々は分からんでもない。そりゃ、せかっく会えた父親だからな。甘えまくりたいだろ、普通。
しかも、こんな超絶美人聖女だぞ。おっさんではない、聖女。魅力満点の聖女。だからむしろ、母親代わりになっていたのかも。
向こうは気づいていたんだろうな、俺の本当の正体とか。
全部、最初から。
でなければ、ネメシアがあんな子供の様な事を言うはずがない。
世界が大きく変化し、天帝とかいう邪悪に支配されようとも、未来が好きになっちまったんだよな。……分かるよ、俺も昔が好きだった。あの星々のようにキラキラしていた時代に戻れれば、どれほどいいか。
でも、今も好きだ。
成長した激カワの娘と会えるとか――最高に幸せすぎだろ。もちろん、トーチカやエコもな。トーチカはともかく、エコはそういえば……リースの召喚した黒猫だったな。
そう思えば、昔の名残は多く存在している。
むしろ、未来から過去へ逆行しているようにさえ思えるような。
少しずつ……本当に少しずつだけれど――『戻っている』気がする。これは誰の意思だろう。……ああ、もう気づいているよな。
俺だよ。
俺なんだよ。
この世界を『戻したい』という欲求とか願望が強く反映されつつある。そうだ、世界を正常な形に戻すだけ。バタフライ効果とかそんなんじゃねぇ! んなもん無視するくらいの力が俺にはある。そう、なにもネメシアの存在が消えるわけじゃない。この世界も消えない。
消えるのは『スターゲイザー』とそれを統括する『天帝』だ。
へっ……なにが天帝だ。ふざけやがって。
すべてを思い出した以上、ぶっ潰してやんよ。
そうだ、俺はやっとあるべき自分へ戻った。
俺は――――
俺の名は――――
彼岸花 理だ――――。
それが、俺の本当の名。
超絶面倒臭がりのおっさんなんだよ。
まるで毒に侵されたかのように酷い有様だ。
そんな緊急事態につき、トーチカとエコもまとめて抱えて――速攻で邸宅へ戻った。そして、ネメシアを俺の部屋に寝かせていた。
なにがどうなっている。サッパリだ。分からん。一体全体、誰の仕業だ。ついに『天帝』とかいうアホが動き出したのか!?
だが、ネメシアが倒れる際、『ママ』と言っていた。
――ママ?
ネメシアのママ?
いったい誰のことを指している。フォル? リース? ベル? それとも…………そうか。一番大切な人物を忘れていた。
だがこれは、あくまで推測。
本当かどうかは分からんが……『メサイア』の事ではなかろうか。
だとすれば、合点がいく。
もしも、メサイアの意思が介入したというのなら、ネメシアが突然、死神に変わってしまったのも頷ける。
あの例の夢――アイツは、あの時『頼むわね』と俺に言い残して消えた……。俺に何をしろというんだ……? ネメシアは、俺にとってどんな存在なんだ?
そう深く考えた事は無かったな。
彼女は……
俺にとって…………
女神? 相棒? 友達? 恋人? 愛人? 嫁? ただの知り合い?
答えは全部『NO』だ。
――――あぁ、いい加減に認めないとな俺よ。
もう記憶だって割かし戻ってきている。
分かっていたよ、本当は。
まさか、ここが『未来』で、ネメシアが『俺の娘』とか思わんだろう、普通。神の悪戯か? 本当になんの因果だよ。
娘から世話されまくってる俺っていったい……。
――でもま、だからこそ、ネメシアのあの駄々は分からんでもない。そりゃ、せかっく会えた父親だからな。甘えまくりたいだろ、普通。
しかも、こんな超絶美人聖女だぞ。おっさんではない、聖女。魅力満点の聖女。だからむしろ、母親代わりになっていたのかも。
向こうは気づいていたんだろうな、俺の本当の正体とか。
全部、最初から。
でなければ、ネメシアがあんな子供の様な事を言うはずがない。
世界が大きく変化し、天帝とかいう邪悪に支配されようとも、未来が好きになっちまったんだよな。……分かるよ、俺も昔が好きだった。あの星々のようにキラキラしていた時代に戻れれば、どれほどいいか。
でも、今も好きだ。
成長した激カワの娘と会えるとか――最高に幸せすぎだろ。もちろん、トーチカやエコもな。トーチカはともかく、エコはそういえば……リースの召喚した黒猫だったな。
そう思えば、昔の名残は多く存在している。
むしろ、未来から過去へ逆行しているようにさえ思えるような。
少しずつ……本当に少しずつだけれど――『戻っている』気がする。これは誰の意思だろう。……ああ、もう気づいているよな。
俺だよ。
俺なんだよ。
この世界を『戻したい』という欲求とか願望が強く反映されつつある。そうだ、世界を正常な形に戻すだけ。バタフライ効果とかそんなんじゃねぇ! んなもん無視するくらいの力が俺にはある。そう、なにもネメシアの存在が消えるわけじゃない。この世界も消えない。
消えるのは『スターゲイザー』とそれを統括する『天帝』だ。
へっ……なにが天帝だ。ふざけやがって。
すべてを思い出した以上、ぶっ潰してやんよ。
そうだ、俺はやっとあるべき自分へ戻った。
俺は――――
俺の名は――――
彼岸花 理だ――――。
それが、俺の本当の名。
超絶面倒臭がりのおっさんなんだよ。
0
お気に入りに追加
1,263
あなたにおすすめの小説
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~
桜井正宗
ファンタジー
元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。
仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。
気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?
月が導く異世界道中extra
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
こちらは月が導く異世界道中番外編になります。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ
桜井正宗
ファンタジー
帝国の第三皇子・ラスティは“無能”を宣告されドヴォルザーク帝国を追放される。しかし皇子が消えた途端、帝国がなぜか不思議な力によって破滅の道へ進む。周辺国や全世界を巻き込み次々と崩壊していく。
ラスティは“謎の声”により無人島へ飛ばされ定住。これまた不思議な能力【無人島開発】で無人島のレベルをアップ。世界最強の国に変えていく。その噂が広がると世界の国々から同盟要請や援助が殺到するも、もう遅かった。ラスティは、信頼できる仲間を手に入れていたのだ。彼らと共にスローライフを送るのであった。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる