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第281話 ゆずれない想い - 過去か未来か -
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出来る事ならこんな強引に、ネメシアを問い詰めたくなかった。
でも、ベルは俺の従妹だ。それに、なぜあんな風に眠ったままなのか――気になった。だから、ここは視線を合わせてきちんと話してもらうことにした。
「ネメシア」
「……分かってる。ホワイト中を見たのね。ハティってば……まだこんな早い段階で教える予定じゃなかったのに」
「その口ぶり……やっぱりか、あのビキニアーマーの少女が誰か知っているんだな」
「ヘデラこそ、あの女性が誰なのか知ってるのね」
「ああ、今は覚えている。教えてくれ、ネメシア。俺をどうして――仲間はどうなった……?」
なるべく感情を押し殺し、冷静に聞いたつもりだった。しかし、ネメシアは赤い瞳を潤ませ――すっと涙を――――え。
「ちょ、なんで泣く! うう……悪かった。ちょっと強引すぎたよな」
これは困ったな。
まさか泣かれるとは。
そんなつもりは……数ミリも無かったのだが。
「ううん、これは違うの。この涙は……わたしの我儘なだけ」
「え?」
「だって……もうすぐ【スターダスト】が全て揃ってしまうもの。それは、つまり……本来の世界に修正されるって意味。そうなれば、もうヘデラとは会えないかも」
そんな風に考えていてくれたのか。
……そうかも、しれない。世界改変が起きれば、この未来はなかったことになり、恐らく、何もかもが消え去るだろう。
この未来の記憶さえ覚えてないかもしれない。
――だから、ネメシアは最近、様子がおかしかったのかも。
でも……俺は。
「聞いてくれ、ネメシア。俺はこの未来も好きだ。だって、お前と会えたのだから。こんな奇跡は二度とないだろう。だけど……俺はたくさんのものを失いすぎた。それを取り戻さないと……前へは進めない。心はずっと停滞したままだ」
「……うん、それはママも望んでいる」
「なら……!」
「でも…………」
「え」
「……【スターダスト】は破壊するわ」
「ちょ、ネメシア、なにを言っているんだ……! それじゃあ、世界は変わらないし、戦っている皆だって……!」
「だめよ。ヘデラ……この世界を無かったことにしてはいけないの……」
「――――は?」
「それだけは許されない」
とても強い口調で、ハッキリとネメシアはそう言葉にした。
「…………ま、まて。落ち着け! 別になかったことにするわけじゃない……思い出はずっと胸の中に……」
「いやよ! 思い出の存在なんかになりたくない……わたしは、呼吸して今生きてる。この愛は永遠で不滅。でもその想いは決して過去には届かない……だから、此処にいる。ずっとずっと、ヘデラの傍にいるの。でなければ、わたしは……いっそ、『天帝』の側につく」
「なにを言っているんだ、お前は……! ネメシアらしくないぞ……。お前はそんな考えはしなかったはずだ…………ん!?」
――それは突然起きた。
ネメシアの赤い瞳が濁っていくではないか。
「……ぁ……っぁぁぁぁあああ……!!」
苦しそうに悶え、俺から離れるとネメシアはどんどん苦しんで……。な、なにが起きてる!?
「ど、どうしたの、ヘデラ!」
トーチカが慌てて来た。
「な、なんです、これ!? てか、どうしてヘデラ様とネメシア様は言い争っていたのですか……! もう仲間割れとからしくないですよ! そもそも、ヘデラ様の方がずっと大人でしょう。子供を正しく導くのが大人の役目ですよ」
黒猫に説教されるとはな。
一応、長寿のエルフか。
「ヘ……へでら…………。わ、わたしは……」
全身が黒く変色していくネメシアは、ついに完全に真っ黒になった。……これって、俺が以前同じようなことになっていたと思う。
思えば、これは……『死神』のような……。
「…………ぁぁぁ……そんな、女神の力が……消えて……ゆく。ママ……わたしを許して……くれないの……。やっぱり、パパを愛しているんだね…………うあああああああああああああああああ……」
ネメシアは絶叫し、倒れてしまった。
「ネメシア!!」
でも、ベルは俺の従妹だ。それに、なぜあんな風に眠ったままなのか――気になった。だから、ここは視線を合わせてきちんと話してもらうことにした。
「ネメシア」
「……分かってる。ホワイト中を見たのね。ハティってば……まだこんな早い段階で教える予定じゃなかったのに」
「その口ぶり……やっぱりか、あのビキニアーマーの少女が誰か知っているんだな」
「ヘデラこそ、あの女性が誰なのか知ってるのね」
「ああ、今は覚えている。教えてくれ、ネメシア。俺をどうして――仲間はどうなった……?」
なるべく感情を押し殺し、冷静に聞いたつもりだった。しかし、ネメシアは赤い瞳を潤ませ――すっと涙を――――え。
「ちょ、なんで泣く! うう……悪かった。ちょっと強引すぎたよな」
これは困ったな。
まさか泣かれるとは。
そんなつもりは……数ミリも無かったのだが。
「ううん、これは違うの。この涙は……わたしの我儘なだけ」
「え?」
「だって……もうすぐ【スターダスト】が全て揃ってしまうもの。それは、つまり……本来の世界に修正されるって意味。そうなれば、もうヘデラとは会えないかも」
そんな風に考えていてくれたのか。
……そうかも、しれない。世界改変が起きれば、この未来はなかったことになり、恐らく、何もかもが消え去るだろう。
この未来の記憶さえ覚えてないかもしれない。
――だから、ネメシアは最近、様子がおかしかったのかも。
でも……俺は。
「聞いてくれ、ネメシア。俺はこの未来も好きだ。だって、お前と会えたのだから。こんな奇跡は二度とないだろう。だけど……俺はたくさんのものを失いすぎた。それを取り戻さないと……前へは進めない。心はずっと停滞したままだ」
「……うん、それはママも望んでいる」
「なら……!」
「でも…………」
「え」
「……【スターダスト】は破壊するわ」
「ちょ、ネメシア、なにを言っているんだ……! それじゃあ、世界は変わらないし、戦っている皆だって……!」
「だめよ。ヘデラ……この世界を無かったことにしてはいけないの……」
「――――は?」
「それだけは許されない」
とても強い口調で、ハッキリとネメシアはそう言葉にした。
「…………ま、まて。落ち着け! 別になかったことにするわけじゃない……思い出はずっと胸の中に……」
「いやよ! 思い出の存在なんかになりたくない……わたしは、呼吸して今生きてる。この愛は永遠で不滅。でもその想いは決して過去には届かない……だから、此処にいる。ずっとずっと、ヘデラの傍にいるの。でなければ、わたしは……いっそ、『天帝』の側につく」
「なにを言っているんだ、お前は……! ネメシアらしくないぞ……。お前はそんな考えはしなかったはずだ…………ん!?」
――それは突然起きた。
ネメシアの赤い瞳が濁っていくではないか。
「……ぁ……っぁぁぁぁあああ……!!」
苦しそうに悶え、俺から離れるとネメシアはどんどん苦しんで……。な、なにが起きてる!?
「ど、どうしたの、ヘデラ!」
トーチカが慌てて来た。
「な、なんです、これ!? てか、どうしてヘデラ様とネメシア様は言い争っていたのですか……! もう仲間割れとからしくないですよ! そもそも、ヘデラ様の方がずっと大人でしょう。子供を正しく導くのが大人の役目ですよ」
黒猫に説教されるとはな。
一応、長寿のエルフか。
「ヘ……へでら…………。わ、わたしは……」
全身が黒く変色していくネメシアは、ついに完全に真っ黒になった。……これって、俺が以前同じようなことになっていたと思う。
思えば、これは……『死神』のような……。
「…………ぁぁぁ……そんな、女神の力が……消えて……ゆく。ママ……わたしを許して……くれないの……。やっぱり、パパを愛しているんだね…………うあああああああああああああああああ……」
ネメシアは絶叫し、倒れてしまった。
「ネメシア!!」
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