上 下
255 / 466

第255話 決勝戦 - 最強の覆面ウェイトレス -

しおりを挟む
 長かった戦いも、ようやく終わりが見えた。


 ついに【決勝戦】となったのだ。


『皆様、ついにこの時がやって参りました……! 聖女世界一を決めるこの大会…………ついに決勝戦です!!!』


 すると会場は一気に大盛り上がりし、



「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」」」」」



 おぉ、すげえヒートアップしている!!


 かつてない絶叫のような歓声が上がった。


「っしゃぁ……気合が入るってモンだぜ」
「ヘデラさま、ちょっと楽しい顔をしていらっしゃいますよ」
「ああ、少しだけどな。戦闘民族じゃねーけど、俺ワクワクしてきたぞ」


 血が本格的に騒いできた。
 この場合は『聖女の血が騒ぐ』といった方が表現としてはいいかもな。


『――それでは両者入場!!』


 司会にうながされ、俺と相手は舞台へ立った。


『それでは最終決戦です……!
 さて、皆さまご存じ……最強の聖女となりうるかもしれないこの女性ひと……美しい花には棘がある――『ヘデラ』選手!』


「て、まて、それってあんまり誉め言葉になっていないだろう!?」
「まあまあ、落ち着いてください、ヘデラさま」

 エコになだめられるも、に落ちん。


『そして、ここまで圧倒的な実力で上り詰めた謎多き覆面ふくめん――戦うウェイトレス……『匿名希望さん』選手で~~~~~~す!!!」


 相手はまさかのウェイトレスの『匿名希望さん』か。
 俺はてっきりメカ天使のマスティマが勝ち残ってくると思ったんだがな。どう見ても、あれラスボスっぽい感じだったし。
 まさか倒されるなんてな。


「それにしても……あの匿名希望さん……いったい何者なんだ?」

「ヘデラさま、あの人の素顔が気になるところですね。しかも、彼女の凄いところは、目すら隠している覆面を被っていることです。つまり、あの方は『心眼』を極めている可能性があります」


「心眼……、心の眼か」


「はい、心眼スキルは滅多に発現しない超レアスキル。それを持っているとしたら……非常に厄介です」


 まさかな……。
 可能性はあるかもしれない。けど負けるわけにもいかない。



『それでは…………【決勝戦】…………試合開始ィィィィイイ!!!!!』



 ついにゴングが鳴った。


 その瞬間だった。


 ウェイトレスはすでに俺の上にいた。


「は、はや……! つーか、なんにも見えなかったけどな……」


 拳が飛んでくるところを、俺は『レンブラント』を地面に放ち、その衝撃で回避した。その咄嗟とっさの判断が功を奏したが、しかしウェイトレスは猛烈な勢いで距離を詰めてくる。

「チクショウ! なんて速さだ、バケモンかよ!!」

「ここは私にお任せを!!」


 エコは俺の頭の上で立ち上がり――――


『目からビーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーム!!!!!!!!!!!!!!』


 ――を、放った。


「ナイス!!」


 赤いビームはウェイトレス目掛けて飛んでいく。


 光の速さでヤツの胸の直前まで届き、勝利を確信した。



「勝ったか!?」



 だがウェイトレスは体を見事にらせ、回避しやがった。……なんつー、柔らかい体してるんだよ!

 それからだった。


 ウェイトレスは体をくねらせ、高速回転して上空へねた。



「まじかよ……! あのウェイトレス、動きがヤバすぎるぞ。人間じゃねえ!!」
「まさか私のビームが避けられるとは……」


 エコはショックを受けていたが、そんなことよりもだ。
 これはまずいぞ!!


 会場もウェイトレスの動きに熱狂している。ああ、くそ、やかましい。……やべ、そんな雑音にかまけている余裕はない。
 俺はヤツの滞空の隙に……!


「ほーりー☆くろす!!」


 残りの『SPGミナギール』を飲み、スキルを発動した。


 空一面ビッシリと出現した『十字の光ホーリークロス』が天空から降り注ぎ、ウェイトレスへ――。

 しかしウェイトレスは空の方へ体勢を向け、俺のスキルに対抗しようとしていた。……させるか!! てか、背中ががら空きだぜ!!



「いまだ、奥義!!! 覇王拳――――――!!!!!」



 拳をヤツの背に向けて放った。



『スカッ……』



 ――――――――――え。



「すか……?」
「ヘ、ヘデラさま……その『覇王拳』は接近物理攻撃用ですよ……」

「まじ」


 エコは申し訳なさそうな顔をして、なずいた。


「あかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!!」


 やべ、この奥義飛び出ないんかーい!!

 叫んでいると、


「バカヘデラああああああああ!! バカバカバカ! スキルの説明くらいちゃんと読みなさいよ!! アホー!!」


 場外からネメシアが罵倒ばとうしてくれていた。
 言いたい放題だなおい!


 まず、余所見よそみしている場合じゃないぞ。


 気付けばウェイトレスは両手を構え始め――――



『奥義・覇王天翔拳――――――――――!!!!!!!!!』



 ……などと、とんでもない大技というか奥義を撃ち放っていた。


「なんぞそれ!!」


 衝撃波で空が真っ白になり、雲すらキレイに吹き飛んでしまった。


「く…………」


 俺も観客たちも、あまりの光に目をつむった。


 耳鳴りがする。クラクラする。


「ちくしょ……俺のほーりー☆くろす、潰されたか」


 ようやく視界が晴れると、空は雲一つない晴天となっていた。視線を泳がすと、ちょうどのウェイトレスが体を高速回転させながら着地していた。

 なんだよ、あの武闘家みたいな……むちゃくちゃすぎんだろ。


「………………」


 ウェイトレスが俺を見つめる。いや、視線分からんけど。てか、なんでそんなこっちを凝視する。この対峙たいじの内に俺は、ヤツにスキルをお見舞いしてやれば、少し――ほんの少し勝機が見いだせるような気がしていたが……何故だろう。


 ……まったく隙がねぇ!!


 焦っていると、ウェイトレスは頭に手を掛け――ついに覆面を取った。


「え…………うそ」


『お~~~~~~っと! どうしたことか!! 匿名希望さん選手、ついに覆面を取ったぞ~~~!!!』


 司会がそう実況すると、会場もまた――


「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」」」」」


 さすがに気になるもんな素顔が。

 俺だってそうだ――


 で、ウェイトレスはついに本性を見せた。

「…………え」



「えええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」



 なぜか、ネメシアが目ん玉飛び出るくらい驚いていた。


 え……ネメシア!?
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗
ファンタジー
 元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。  仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。  気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗
ファンタジー
 帝国の第三皇子・ラスティは“無能”を宣告されドヴォルザーク帝国を追放される。しかし皇子が消えた途端、帝国がなぜか不思議な力によって破滅の道へ進む。周辺国や全世界を巻き込み次々と崩壊していく。  ラスティは“謎の声”により無人島へ飛ばされ定住。これまた不思議な能力【無人島開発】で無人島のレベルをアップ。世界最強の国に変えていく。その噂が広がると世界の国々から同盟要請や援助が殺到するも、もう遅かった。ラスティは、信頼できる仲間を手に入れていたのだ。彼らと共にスローライフを送るのであった。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる

けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ  俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる  だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...