上 下
251 / 430

第251話 聖女コンテスト - 優勝して世界一の聖女になれ!! -

しおりを挟む
 ラナン(ハリボテ)を使って、俺たちはロドスに見つからないよう現場を後にした。でもちょっと気になって振り返ってみたら、ロドスは目ん玉飛び出して驚いていた。


 サクサクっと『聖女コンテスト』の会場へ向かった。


 会場は、オープン型の闘技場みたいなところだった。

 ――ん、コロシアム?

 いやいや、戦うわけないよな~。俺はおしとやかな『美少女コンテスト』をイメージしているし、うん、きっとそうに違いない。だって、聖女・・だぜ。女同士でそんな激闘バトルするわけナイナイ。

 到着するとガヤガヤ、ワーワー騒がしいじゃないか。なんて人口密度。お客さん何人いるんだよ。多すぎだろ。アイドルのライブ会場じゃあるまいし。

「すげぇ人混み……国中の人たちが集まっていそうだぞこりゃ!」
「うん。てか、これ……殺し合い?」
「まて、ネメシア。そんな物騒なこと言うんじゃない。マジでそうなりそうだから、フラグを立てるのはヤメレい」

「あはは……そ、そうね。ごめん。滅多なことは言うもんじゃないわね」

 髪をいじりながらネメシアは謝るが、しかしすぐに顔色を変えた。まて、なんだそのショッキングなものを見た表情! ヤメレ!! マジで!!


「……まさか……『聖女コンテスト』って……そういうことなのか!?」


「ヘデラさま。どうやら『聖女コンテスト』は武闘大会・・・・のようなものらしいですね。勝ち残ったひとりが世界一になれるってことらしいです」

 ――と親切に説明してくれるエコ。ええ、もう見れば分かります。

 あー…なんだその天下一[ピー]みたいな。

 で、立ちくしているとアナウンスがはじまった。


『まもなく受付を締め切ります! 現在出場人数は『29名』――さあ、自信のある女性はどんどん参加してくれい!! 優勝すれば『世界一の聖女』となれるぞー!! ただーし、血飛沫ちしぶきを見る可能性もある! 参加には十分留意してくれい!!』


 おっと、締め切りが近いようだ。

「あーもう……。受付してくるか」
「がんばれ、ヘデラ。あたしが応援している」

 指でハートを作って健気に応援してくれるトーチカが天使に見えた。いや、天使だ。……よーし、頑張ろう。そうさ、世界一の聖女に俺はなる!!


 ★ ★ ★


 俺は受付を完了・・した。
 これでもう後戻りはできない。
 これから、あの舞台で戦い抜き、優勝を目指さなければ。


 受付の姉ちゃんから待機所を案内され、俺はひとりそこへ向かった。
 くそー…さすがに心細いぜ。しかもこんな時に……ネメシア、トーチカ、エコの顔が脳裏に浮かんできやがる。俺としたことが……恋しい・・・なんてな……。ああ、みんながそばにいないとソワソワする。なんだこれは。なんなんだこの気持ち。

 そいや俺、ひとりだったのはこの国に来た時だけだった。それで、すぐネメシアと出会ったから、ひとりになる時間は少なかった。

 それが今ではどうだろうか。

 まさか、ひとりでこんな『聖女コンテスト』に参加することになるなんてな。あの頃からだったら想像もつかなかった。

 でもやってやる。

 最後までやり抜き通し――勝つ。それだけだ。


 優勝すれば、世界一になれるだけじゃない。
 ロドスの悪事を暴露できる。


 ――で、到着した。

 中に入ると……多っ。なんだこの人数。
 ざっと『30人』はいるぞ。みんなもちろん『女』だ。……う、どいつもこいつも、一癖も二癖もありそうな個性的なヤツばかり。俺も人のことは言えないけれど――なんだあの巨人女。身長二メートル以上はあろうかというヤツがいた。こえー。

 その他には……『覆面ウェイトレス』、『燃える鎖を手に持つ鬼女』、『恐怖のゴースト飼い喪女もじょ』、『真っ赤なウェディングドレスの令嬢(目つき激ヤバ)』『下着姿のメガネのお姉さん』、『なんかの種族の獣人少女』、『ヘンな髪色をしたゴスロリ少女』、『メカ天使の羽を持つ少女』――などなど見渡す限りとんでもないのが沢山――――ちょっとまて。


 『ヘンな髪色をしたゴスロリ少女』だって?


 完全に見過ごしていたが……これは明らかに!!

「おい、ネメシア・・・・。なんでいる……!」
「あ、バレた~?」
「あのな、そんな髪色かつ超目立つゴスロリ姿は世界でお前しかいないわ。て、参加するのか?」
「ううん。わたしはヘデラの応援。近くから見守りたいの」

「…………そ、そか」

 ちょっと照れた。
 うー…不意打ちずるいなぁ。とか顔を赤くしていると、ネメシアは『ホワイト』に手を突っ込み何かを取り出した。

「はいこれ」
「あ……これ『SPGミナギール×3』と『スキルポイントが1つ増える不思議なドリンク』じゃないか! いいのか」
「うん。使ってほしいの。わたしはヘデラに優勝して欲しいし、ヘデラの為なら全力でサポートする。これはわたしの素直な気持ち」

 やべ……けっこうウルっときちゃった。泣きそう。
 ネメシアって割と『女神属性』あるよな。
 実はそうだったりな。なわけないと思うけど。

 俺は、ネメシアからアイテムを受け取りふところに忍ばせた。よし、これなら希望はかなりあるぞ。絶対に勝つ、そう意気込んだ時だった。

 あの最初に見かけた『巨人女』が寄ってきていた。

 すると開口一番で――

「そこのちっこいの。本当に小さいな」

 ――とまぁ悪口を言ってきたんだな。俺は別に本当のことだから気にしなかった。それくらいのスルースキルは持ち合わせいるし。つーか、身長は小さいほうが俺は好きだね。
 だが、巨人女は言葉を続けた。

「噂は聞いているぞ。そんなチビのくせに国を救っているようだな。ははは、くだらない。そもそもそんな細腕で私に勝てると――――」


 そうヤツが言い終わる瞬間、凄い轟音ごうおんがして――

 巨人女は待機所の屋根を突き破り、空へふっ飛んでいた。あの巨体があんなバカスピードで飛行してやがる。あ~もう見えない。

 いやはや……すげえ音がしたが、これは、この容赦ない攻撃は…………ネ、ネメシア!? お前なのか。手元がまるで見えなかったけれど。


「…………ヘデラを侮辱ぶじょくするな」


 ……え?


 ネメシアさん、なんか顔が怖い。なんか……いつものネメシアじゃない!!


「いいかテメェ等!! わたしのヘデラに心の傷だろうが、傷ひとつでもつけたらぶち殺す!! 覚悟しろ!!!」


「あわわわわわわ……!! ちょ、キャラ変わってるキャラ変わってるって、ネメシアアア! 戻ってこおおおいッ!!」

 俺は必死に訴えた。すると、ネメシアは落ち着きを取り戻し……

「あ…………。まず……ごめん、わたしトーチカたちのところへ戻るね……」

 なんか両手で顔をおおい、恥ずかしそうに出て行った……。


 ~~~すぅ……はぁ…………。


 これ、夢?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗
ファンタジー
 元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。  仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。  気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗
ファンタジー
 帝国の第三皇子・ラスティは“無能”を宣告されドヴォルザーク帝国を追放される。しかし皇子が消えた途端、帝国がなぜか不思議な力によって破滅の道へ進む。周辺国や全世界を巻き込み次々と崩壊していく。  ラスティは“謎の声”により無人島へ飛ばされ定住。これまた不思議な能力【無人島開発】で無人島のレベルをアップ。世界最強の国に変えていく。その噂が広がると世界の国々から同盟要請や援助が殺到するも、もう遅かった。ラスティは、信頼できる仲間を手に入れていたのだ。彼らと共にスローライフを送るのであった。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。 異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。 異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。 自分の領地では奴隷は禁止していた。 奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。 そして1人の奴隷少女と出会った。 彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。 彼女は幼いエルフだった。 それに魔力が使えないように処理されていた。 そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。 でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。 俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。 孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。 エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。 ※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。 ※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。

封印されていたおじさん、500年後の世界で無双する

鶴井こう
ファンタジー
「魔王を押さえつけている今のうちに、俺ごとやれ!」と自ら犠牲になり、自分ごと魔王を封印した英雄ゼノン・ウェンライト。 突然目が覚めたと思ったら五百年後の世界だった。 しかもそこには弱体化して少女になっていた魔王もいた。 魔王を監視しつつ、とりあえず生活の金を稼ごうと、冒険者協会の門を叩くゼノン。 英雄ゼノンこと冒険者トントンは、おじさんだと馬鹿にされても気にせず、時代が変わってもその強さで無双し伝説を次々と作っていく。

とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星
ファンタジー
仕事の修羅場を乗り越えて、徹夜明けもなんのその、年2回ある有○の戦場を駆けた夏。長期休暇を取得し、自宅に引きこもって戦利品を堪能すべく、帰宅の途上で食材を購入して後はただ帰るだけだった。しかし、学生4人組とすれ違ったと思ったら、俺はスマホの電波が届かない中世ヨーロッパと思しき建築物の複雑な幾何学模様の上にいた。学生4人組とともに。やってきた召喚者と思しき王女様達の魔族侵略の話を聞いて、俺は察した。これあかん系異世界勇者召喚だと。しかも、どうやら肝心の勇者は学生4人組みの方で俺は巻き込まれた一般人らしい。【鑑定】や【空間収納】といった鉄板スキルを保有して、とんでもないバグと思えるチートスキルいるが、違うらしい。そして、安定の「元の世界に帰る方法」は不明→絶望的な難易度。勇者系の称号がないとわかると王女達は掌返しをして俺を奴隷扱いするのは必至。1人を除いて学生共も俺を馬鹿にしだしたので俺は迷惑料を(強制的に)もらって早々に国を脱出し、この異世界をチートスキルを駆使して漫遊することにした。※10話前後までスタート地点の王城での話になります。

処理中です...