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第244話 猫も風呂に入りたい
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のぼせた猫、いやエコはトーチカに任せた。
姿を見ないと思ったら、まさか風呂に潜っていたなんてな。つーか、猫って風呂に入っていいものなのか!?
まあでもアイツは喋るしなぁ、う~ん。
……ま、いっか!
などと思考を巡らせていると――、
「どーしたの、ヘデラ」
背中を洗ってくれていたネメシアが、俺の胸の方に手を伸ばす。
「ひゃっ! ちょ、おいネメシアっ。そ、そこはいいだろ……」
「なに言ってんの。ちゃんと洗わないと」
くっ……。そこは敏感なんだよ、俺。あー…くそ、顔が熱いぜ。激熱だ。そんな湯気でも出そうな気分になりつつも、なぜか悪知恵を働かせてしまった。なんでだろうな~。
<ピコーン!!>
「ネメシア。今度はお前がここに座れ。洗ってやる」
「え……。う、うん。って、ヘンなとこ触らないでよ! 絶対だからね、約束よ」
「バカ。女同士だろうが」
「ほら、親しき仲にもなんとやらでしょ」
ネメシアは、むっと口を噤む。あの美しい瞳を潤ませ、どこかソワソワしていた。そんな緊張するほどか?
「へぇ、ネメシアのうなじは新鮮だな。綺麗だし」
「ど、どこ見てんのよ」
「おいおい、うなじくらいで怒るなよ。心より大絶賛しているんだ」
「あ、ごめん……ていうか、嬉しい……」
へぇ、こうして背後から観察するとネメシアの体は滑らかで、芸術的な曲線を描いていた。余計な穢れや傷痕も一切ない。純白といっても良いほどに真っ白だ。
「じゃ、洗うぞ」
「……うん」
俺はまずは慎重にネメシアの背中に石鹸をつけ、優しく洗っていった。
「うまいわね、ヘデラ。加減が絶妙よ~」
そう素直に褒めてくれるネメシア。なんだか気持ちよさそうな顔をして、こっちも気合が入ってきた。よしよし。
それからお湯で石鹸を洗い流していく――そして。
いまだ!!
こことぞばかりに俺は舌を出し、ネメシアの肩を舐めた。
「……ひゃあああああああああああああッ!?」
絶叫し、飛び上がるネメシアは体を仰け反らせ、倒れそうになるほどだった。……おっと、あぶね。俺はそれを支えた。
「ななななな、なにすんのよ! ヴァカヘデラ!!」
ネメシアはこちらを向き、ガ~っと詰め寄ってくる。うわ、バカ。そんな勢いで来られたら……うわっ!
俺は姿勢を崩し、仰向けに倒れた。ネメシアもこちらへ倒れた。
「……いてて」
「あ……」
あ…………今度は俺が押し倒された。
「………………」
えっと……どうしよう。
目と目が合って……。
これから先がまったく思い浮かばない。考えていなかった。ていうか、俺はどうしたい……ネメシアと……。
すると、急にぽつぽつと雨が降った。
――いや、違う。ネメシアの目から涙が零れていたんだ。
あ、やべ……泣かせてしまったか。
「……ぁ。すまん。俺そんなつもりはなくて……ごめんな」
「ううん。これは違うの」
「え、違うって……でも、俺のせいだろ」
「そうじゃないの。なんでもない」
「なんでもないわけないだろ。悪かったって」
謝罪をするもの、ネメシアは『違う』の一点張り。違わないだろ。
「なあ、言ってくれ。嫌だったんだろ」
「そんなわけない!」
声を荒げるネメシア。
「え……」
「だって、ヘデラってば顔が可愛すぎるんだもん……。なんであんたってこんな母性くすぐる容姿してんのよ……そんな顔されたらさ、なんでも許しちゃうわ。だから思わず胸がいっぱいになっちゃって……それで」
「なに――――――――――!!!!!」
どいうこった!!
ていうか、予想外すぎて軽くビビった。俺はてっきり嫌われてしまったかと。……危うく八回目の転生を考えたほどだ。いや、絶対にしないけど。
「……ごめんね。突然泣いちゃって」
「いいよ。俺も悪かった。つーか、俺がカワイイとかそういう理由で泣くなよ……びびるし、まぎらわしいな!」
謝罪の気持ちも込めて、俺はネメシアの頭を撫でた。すると、ネメシアは微笑みを向けてくれた。なんだかな。
なんてやっとると、
「愛はアイテムショップでも買えるらしいですよ~」
「なにやつ!?」
「ふっふふ。私復活しました~! またお風呂にきたんですよ。これでも超綺麗好きですからね」
「なんだエコか。逆上せて倒れていたんじゃなかったのか」
「ええ。ですがご覧の通り復活しました。もう大丈夫です。では、私は温泉へ」
トコトコと向かい、お湯に浸かる猫。
『ぶくぶくぶく……』
「っておま! 溺れてるうううううううううう!!」
また湯に浮かんできたよ……。
なにがしたいんだよお前は!!!
姿を見ないと思ったら、まさか風呂に潜っていたなんてな。つーか、猫って風呂に入っていいものなのか!?
まあでもアイツは喋るしなぁ、う~ん。
……ま、いっか!
などと思考を巡らせていると――、
「どーしたの、ヘデラ」
背中を洗ってくれていたネメシアが、俺の胸の方に手を伸ばす。
「ひゃっ! ちょ、おいネメシアっ。そ、そこはいいだろ……」
「なに言ってんの。ちゃんと洗わないと」
くっ……。そこは敏感なんだよ、俺。あー…くそ、顔が熱いぜ。激熱だ。そんな湯気でも出そうな気分になりつつも、なぜか悪知恵を働かせてしまった。なんでだろうな~。
<ピコーン!!>
「ネメシア。今度はお前がここに座れ。洗ってやる」
「え……。う、うん。って、ヘンなとこ触らないでよ! 絶対だからね、約束よ」
「バカ。女同士だろうが」
「ほら、親しき仲にもなんとやらでしょ」
ネメシアは、むっと口を噤む。あの美しい瞳を潤ませ、どこかソワソワしていた。そんな緊張するほどか?
「へぇ、ネメシアのうなじは新鮮だな。綺麗だし」
「ど、どこ見てんのよ」
「おいおい、うなじくらいで怒るなよ。心より大絶賛しているんだ」
「あ、ごめん……ていうか、嬉しい……」
へぇ、こうして背後から観察するとネメシアの体は滑らかで、芸術的な曲線を描いていた。余計な穢れや傷痕も一切ない。純白といっても良いほどに真っ白だ。
「じゃ、洗うぞ」
「……うん」
俺はまずは慎重にネメシアの背中に石鹸をつけ、優しく洗っていった。
「うまいわね、ヘデラ。加減が絶妙よ~」
そう素直に褒めてくれるネメシア。なんだか気持ちよさそうな顔をして、こっちも気合が入ってきた。よしよし。
それからお湯で石鹸を洗い流していく――そして。
いまだ!!
こことぞばかりに俺は舌を出し、ネメシアの肩を舐めた。
「……ひゃあああああああああああああッ!?」
絶叫し、飛び上がるネメシアは体を仰け反らせ、倒れそうになるほどだった。……おっと、あぶね。俺はそれを支えた。
「ななななな、なにすんのよ! ヴァカヘデラ!!」
ネメシアはこちらを向き、ガ~っと詰め寄ってくる。うわ、バカ。そんな勢いで来られたら……うわっ!
俺は姿勢を崩し、仰向けに倒れた。ネメシアもこちらへ倒れた。
「……いてて」
「あ……」
あ…………今度は俺が押し倒された。
「………………」
えっと……どうしよう。
目と目が合って……。
これから先がまったく思い浮かばない。考えていなかった。ていうか、俺はどうしたい……ネメシアと……。
すると、急にぽつぽつと雨が降った。
――いや、違う。ネメシアの目から涙が零れていたんだ。
あ、やべ……泣かせてしまったか。
「……ぁ。すまん。俺そんなつもりはなくて……ごめんな」
「ううん。これは違うの」
「え、違うって……でも、俺のせいだろ」
「そうじゃないの。なんでもない」
「なんでもないわけないだろ。悪かったって」
謝罪をするもの、ネメシアは『違う』の一点張り。違わないだろ。
「なあ、言ってくれ。嫌だったんだろ」
「そんなわけない!」
声を荒げるネメシア。
「え……」
「だって、ヘデラってば顔が可愛すぎるんだもん……。なんであんたってこんな母性くすぐる容姿してんのよ……そんな顔されたらさ、なんでも許しちゃうわ。だから思わず胸がいっぱいになっちゃって……それで」
「なに――――――――――!!!!!」
どいうこった!!
ていうか、予想外すぎて軽くビビった。俺はてっきり嫌われてしまったかと。……危うく八回目の転生を考えたほどだ。いや、絶対にしないけど。
「……ごめんね。突然泣いちゃって」
「いいよ。俺も悪かった。つーか、俺がカワイイとかそういう理由で泣くなよ……びびるし、まぎらわしいな!」
謝罪の気持ちも込めて、俺はネメシアの頭を撫でた。すると、ネメシアは微笑みを向けてくれた。なんだかな。
なんてやっとると、
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「なにやつ!?」
「ふっふふ。私復活しました~! またお風呂にきたんですよ。これでも超綺麗好きですからね」
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「ええ。ですがご覧の通り復活しました。もう大丈夫です。では、私は温泉へ」
トコトコと向かい、お湯に浸かる猫。
『ぶくぶくぶく……』
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