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第233話 黒聖女
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広い部屋の中には、幼い少女がいた。
ふかふかのソファに身を預け――お菓子をボリボリ頬張っていた。
「え……誰」
「紹介するわ。この小さいのは『ハティ』っていうの。ちょっと、トーチカとキャラ被るけど、耳と尻尾もあるわ。ま、このコのは狼で、装備品だけどね」
――とまぁ紹介されたわけだが。
「いやいや、ネメシア。なんで、『ホワイト』の中に人間がいんだよ。そこ詳しく説明プリーズ」
「あ~、それ。いやー、実はこのコね、コミュ障でね、それに重度の引きこもりなの。誰に似たんだかぁ」
「そ、そうなのか。よろしくな、ハティちゃん」
だが、ハティは俺たちを見るなり、走り去った。
足はやっ!
「ありゃ」
「気にしないで。いつもあんな感じなの。また見かけたら話しかけてあげて。それより、みんな、座って。お茶淹れるから」
そう促され、適当な椅子に腰かけた。
「あの~、これってスキルなんですか?」
動揺しまくって、混乱しているラナンがそう口を開いた。
あ、説明し忘れてたわ。
「そ。ネメシアのスキル『ホワイト』の中だ。俺もはじめて入ったよ」
「はぁ……こんなスキルは聞いたことがありませんが、凄いですね」
ポカンとするラナン。
その横にいたエコが頷いた。
「ええ、それには同感です。私も前々から驚くばかりでしたが、ここまでとは。これは、ひょっとして『女神の力』かもしれませんね」
「ん、エコ。お前、猫のクセに女神の力とか分かるのか」
「ええ、これでも長い事生きていますからね。知らないことも多少はありますが、大抵のことなら、なんでも知っていますよ。ですから、私のことは歩く『ウェキペディア』と思って下さいね」
「うっせ、ネコネコ大百科め」
なんとやっとると、お茶が出てきた。
そして、ネメシアも席に座り……俺を見た。俺?
「な、なんだよ……。ネメシア、いい加減に話してくれよ。いつまでも、そんなシリアス展開みたいな渋い顔しやがって。俺に何が起きた」
「…………ぷ。ぷはははっは、あははははははっは!」
いきなり大爆笑する、ネメシア。
おい、そこ腹抱えて笑うなよぅ!?
しかもトーチカも、
「にょもももももっ!」
トーチカの笑い方、こわっ!!! 不気味!!
あれで笑っているらしい。
いやいや、バケモノの笑い方じゃねえか。
「にゃはははっはは!」
猫、テメーもか。あとでシャミセンにする。
王子は、状況が呑み込めていないようで、ただ目を白黒させていた。
俺と同じ立場か、可哀想に。
「いや~笑ったわ。ごめん。本当にごめんなさい。ヘデラ。なんか、あんたの動揺する顔が面白くって。トーチカとエコに協力してもらっていたの」
「……な、なんだ…………良かった。俺はてっきり」
「てっきり何よ。大丈夫。わたしは……」
ネメシアは席を立ち、俺の後ろに立つと――
まるで聖母のように抱きしめてきた。
……おいおい、俺は『聖女』だぜ。まあいいけどさ。
「ネメシア。何があった」
「うん。話す。全部、話すから――」
★ ★ ★
ネメシアによると、
あの調合を間違えた『SPGミナギール』を飲んだあと、俺は、全身真っ黒に染まったらしい。まるで、魔王とか死神のような雰囲気に豹変し、不気味な『赤黒い十字架』を数万規模で放つと、『おでん』共をワンパンでぶっ倒したようだ。
「………………へ」
俺が、あの『おでん』をワンパン?
「なんだ、俺、暴走モードにでもなったか? それとも、闇堕ち!? なんだか気持ち悪いな……くそっ」
「ごめんね。わたしのせいで……もうあんなミスは二度と起こさないから。だから、まだ一緒にいさせて」
「バカ。当たり前だろ。ネメシア、俺にはお前が必要だ!」
「……うん」
あれ……ちょっとウルっときちゃった。ネメシアが。
つーか、俺なに言ってんのー!?
「おい、猫。俺になにが起きたか分からんか。サポート役として、真面目に返答を頼む」
「……それがですね」
エコは、目と閉じ……言おうか、言うまいか悩んでいる様子だった。だが、決心がついたようで、エコはこうキッパリ言った。
「わかりません!!!」
「わかんねーのかよおおおおおおい!!」
やっぱり、分からんことも多いじゃねーか!!
なにが『ウェキペディア』だよ!!
もう怒った。
エコには『ネコペディア』の称号を強制的につけておこう。
「はー…もう、頭痛い」
「ヘデラ~、ごめんね~」
トーチカは、申し訳なさそうに、俺の頭を優しく撫でてくれた。
「うぅ……。ちょっと、泣きそう」
ふかふかのソファに身を預け――お菓子をボリボリ頬張っていた。
「え……誰」
「紹介するわ。この小さいのは『ハティ』っていうの。ちょっと、トーチカとキャラ被るけど、耳と尻尾もあるわ。ま、このコのは狼で、装備品だけどね」
――とまぁ紹介されたわけだが。
「いやいや、ネメシア。なんで、『ホワイト』の中に人間がいんだよ。そこ詳しく説明プリーズ」
「あ~、それ。いやー、実はこのコね、コミュ障でね、それに重度の引きこもりなの。誰に似たんだかぁ」
「そ、そうなのか。よろしくな、ハティちゃん」
だが、ハティは俺たちを見るなり、走り去った。
足はやっ!
「ありゃ」
「気にしないで。いつもあんな感じなの。また見かけたら話しかけてあげて。それより、みんな、座って。お茶淹れるから」
そう促され、適当な椅子に腰かけた。
「あの~、これってスキルなんですか?」
動揺しまくって、混乱しているラナンがそう口を開いた。
あ、説明し忘れてたわ。
「そ。ネメシアのスキル『ホワイト』の中だ。俺もはじめて入ったよ」
「はぁ……こんなスキルは聞いたことがありませんが、凄いですね」
ポカンとするラナン。
その横にいたエコが頷いた。
「ええ、それには同感です。私も前々から驚くばかりでしたが、ここまでとは。これは、ひょっとして『女神の力』かもしれませんね」
「ん、エコ。お前、猫のクセに女神の力とか分かるのか」
「ええ、これでも長い事生きていますからね。知らないことも多少はありますが、大抵のことなら、なんでも知っていますよ。ですから、私のことは歩く『ウェキペディア』と思って下さいね」
「うっせ、ネコネコ大百科め」
なんとやっとると、お茶が出てきた。
そして、ネメシアも席に座り……俺を見た。俺?
「な、なんだよ……。ネメシア、いい加減に話してくれよ。いつまでも、そんなシリアス展開みたいな渋い顔しやがって。俺に何が起きた」
「…………ぷ。ぷはははっは、あははははははっは!」
いきなり大爆笑する、ネメシア。
おい、そこ腹抱えて笑うなよぅ!?
しかもトーチカも、
「にょもももももっ!」
トーチカの笑い方、こわっ!!! 不気味!!
あれで笑っているらしい。
いやいや、バケモノの笑い方じゃねえか。
「にゃはははっはは!」
猫、テメーもか。あとでシャミセンにする。
王子は、状況が呑み込めていないようで、ただ目を白黒させていた。
俺と同じ立場か、可哀想に。
「いや~笑ったわ。ごめん。本当にごめんなさい。ヘデラ。なんか、あんたの動揺する顔が面白くって。トーチカとエコに協力してもらっていたの」
「……な、なんだ…………良かった。俺はてっきり」
「てっきり何よ。大丈夫。わたしは……」
ネメシアは席を立ち、俺の後ろに立つと――
まるで聖母のように抱きしめてきた。
……おいおい、俺は『聖女』だぜ。まあいいけどさ。
「ネメシア。何があった」
「うん。話す。全部、話すから――」
★ ★ ★
ネメシアによると、
あの調合を間違えた『SPGミナギール』を飲んだあと、俺は、全身真っ黒に染まったらしい。まるで、魔王とか死神のような雰囲気に豹変し、不気味な『赤黒い十字架』を数万規模で放つと、『おでん』共をワンパンでぶっ倒したようだ。
「………………へ」
俺が、あの『おでん』をワンパン?
「なんだ、俺、暴走モードにでもなったか? それとも、闇堕ち!? なんだか気持ち悪いな……くそっ」
「ごめんね。わたしのせいで……もうあんなミスは二度と起こさないから。だから、まだ一緒にいさせて」
「バカ。当たり前だろ。ネメシア、俺にはお前が必要だ!」
「……うん」
あれ……ちょっとウルっときちゃった。ネメシアが。
つーか、俺なに言ってんのー!?
「おい、猫。俺になにが起きたか分からんか。サポート役として、真面目に返答を頼む」
「……それがですね」
エコは、目と閉じ……言おうか、言うまいか悩んでいる様子だった。だが、決心がついたようで、エコはこうキッパリ言った。
「わかりません!!!」
「わかんねーのかよおおおおおおい!!」
やっぱり、分からんことも多いじゃねーか!!
なにが『ウェキペディア』だよ!!
もう怒った。
エコには『ネコペディア』の称号を強制的につけておこう。
「はー…もう、頭痛い」
「ヘデラ~、ごめんね~」
トーチカは、申し訳なさそうに、俺の頭を優しく撫でてくれた。
「うぅ……。ちょっと、泣きそう」
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