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第228話 聖女になった日 - オートスキルの前兆 -

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 隣国【クリスピア】の王子様っぽいのを捜索そうさくすることになった。
 けど、そんな直ぐに見つかるはずもない――そう思っていた。


 が、


 例の噴水のところに入ったところ、ごっつい盗賊らしき三人組が、誰かを取り囲んでいた。あー…。あのガラの悪そうな連中に囲まれている『青年』は見覚えがあるなぁ。


「ヘデラ、あれ」

 トーチカが指さす。ああ、間違いないな。
 しゃーない。俺がなんとかすっか。聖女として。

「おい、お前ら! 弱い者いじめするんじゃねえ」

「あぁ!?」「なんだオメー!」「うわ、コイツこの前の、目つき悪聖女!」

 盗賊たちは俺の方へ寄ってくる。

「この女ぁ、この前はよくもやってくれたな!!」
「ア、兄貴、でもまたビームくらいますよ!?」
「そうでっせ。逃げましょうぜ……」


「ばぁーか。なにを弱気になってんだ! いいか、俺はあの日以来、このウ●コ聖女に復讐すると胸に誓った! こうやって暴れてりゃ、いつか現れると思っていたからな」


 そういうことか。って、おい!! 誰がウ●コだ!!
 兄貴と呼ばれている一番ゴッつい盗賊は、俺の胸倉むなぐらつかもうとした――が。


「ごわぁっ!!」


 魔弾を食らい、噴水に頭から突っ込んでいた。
 ナイス、トーチカ!

「ヘデラに気安く触れるな」

 おー。トーチカのやつ、珍しくブチ切れてるな。
 あんな怖い顔は初めてみた。いつも淡泊クールなのに。

 俺はその隙に、

「青年、大丈夫か」
「あ……ありがとうございま……あ、聖女さま!」

 青年、たぶん王子(仮)は顔を赤くした。

「そ、その手を貸して戴けるなんて…………」
「当然のことをしただけさ。む、ケガしてるじゃないか……『ヒール』してやるよ」
「え、そんな! 悪いですよ」
遠慮えんりょするなって。ほれ」
「……あ、ありがとう。聖女さまはやっぱり優しいのですね」
めるくらいなら、まず名前を教えろよ」
「そうでした。僕は『ラナン』と申します」
「そか。俺は『ヘデラ』な。で、ラナン、君は隣国【クリスピア】の王子なのか?」
「え、なぜそれを! はい、そうです。僕は【クリスピア】の王子です。ですが……うわ、危ない!!」

 ラナンが何か事情を話そうとしたところ、突然、俺を押し倒した。


「うわ、なにをする! ……って、あっぶね!!」


 よく見ると、ナイフが飛んできていた。
 アイツらか!


「チッ……。外したか! もう少しズレていれば仕留しとめられたのだがなぁ……。あの憎たらしい顔面に、一生消えることのない傷を与えられたよなァ」


 いやいや! そんなレベルではない。危うく顔面にナイフが突き刺さるところだったろうが、クソが!

「バカ野郎! お嫁に行けなくなっちゃだろうが!! 行く気もないけど!」
「うるせぇブス! てめぇのような醜悪しゅうあくで、口悪すぎ聖女がいてたまるか!!」


「……な」


 そ、そんな……。

 俺は、地面に両手をつけ……
 神器レベルの鈍器で殴られたようなショックを受けた。

「お、おふ………………」

「なーにショック受けてるのよ、ヘデラ。あんたブスではないでしょ。そんな、女だったら誰もが嫉妬しっとするような容姿ようしなクセに」


 ネメシアははげましてくれるが、そうじゃない。


「いや……ね、ネメシア、今まで悪かったな……」

「え、どうしたの。……あ、まさか! あんた、『口悪すぎ』にショックを受けたのね。え、今更気にするの!?」

「ヘデラはそのままでいい」
「そーですよ。敬語のヘデラさまなんて、むしろ気色悪いですよ~」

 トーチカもエコもなぐさめてくれる。


 っておい、猫!!!


 フォローになってねええええええッ!!


 やっぱり、シャミセンにしたるか!!!


 そんな時だった。
 気づけば、街の人たちが噴水を――いや、盗賊三人組を取り囲んでいた。


「なっ、なんだコイツ等!」「兄貴、これやばいっすよ!」「なんで街のヤツ等が……!」


 人々は、盗賊を殺す勢いでにらんでいた。
 うあ、みんな、激おこプンプンバーニングだな。


「聖女さまを傷つけるな、この盗人!!」「盗賊は街から出てけ!!」「そうだそうだ!」「お前らだろ! 大量のモンスターを王国に入れてるのは!」「絶対そうだ! 追い出せぇ!!」「聖女さまたちを守るんだ!!」


『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!』


「みんな……。俺のために!?」

「みたいね、ヘデラ。あんた、最近ずっと王国を守っていたから認められたみたいよ。これでいよいよ本当の聖女になったわね。……あ、今ので閲覧者数すごい上がった! わぁ、【ウルチャ】もすごいわよ! えぇ! 【56,000セル】も入ったわよ! ばんばん稼いでいつか……オートスキルも」

 ネメシアは狂喜乱舞していた。
 ん、なんか気になる単語を聞いた気がするが、気のせいか。

 てか、おい! 真面目な顔から一転して、顔がほころびすぎだろ!?
 この金の亡者め。まあ、可愛い笑顔だから許すけどっ!


 かくして盗賊共は、街の人々の、狂ったような憤怒ふんぬに押され――情けなく敗走した。……へっ、俺に向かって『口悪すぎ聖女』なんて言ったばつだ。


 ざまぁみろ。
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