全スキル自動攻撃【オートスキル】で無双 ~自動狩りで楽々レベルアップ~

桜井正宗

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第200話 理

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 兄様も姉様も、ベルさんもいなくなってしまった。
 どうして、いつも居なくなってしまうのだろう。そういう星の元に生まれたってことでしょうか。それが運命ということなのでしょうか。


 世界がそのようなことわりであるから、そのようになるということなのでしょうか。


「……どこ」


 あれから一週間が経過。
 スターゲイザーと名乗る集団はどこかへ消えた。どうやら、聖地を襲ったようで、今はもう滅んだと風の噂で聞く。

 となると、アーサーさんたちはもう……。

「どうしてこんなことに……」
「フォルちゃん……」

「もう探すのも疲れた……わたくしは……」

 ずっとずっと飲み食いも、十分な睡眠も取らず、ずっと兄様たちを探し続けた。だけど、ぜんぜん見つからない。その片鱗すらも。

「諦めるの?」

「え……」

「諦めてるよね、フォルちゃん」
「…………わたくしは」

 その時、頬を叩かれました。

「……リース」
「フォルちゃん、前にバトルロイヤルの時に、あたしに言ってくれたじゃない。諦めたらダメだって。投げ出したらダメだって。だから、諦めちゃだめだよ」

「そうですね、わたくしは諦めの悪い聖女ですから」


 でも、どうすれば――。


 今は『星の都』を抜けて、『花の都』に来ていました。
 王に、神王に会うため。しかし、なかなか拝謁はいえつが叶わずいました。どうやら、多忙を極めているとのこと。

「もう我慢の限界……乗り込みましょう、リース」
「え、乗り込むって、あのポインセチア城へ!?」
「そうです。でなければ、いつまで経っても兄様たちを取り戻せませんから」
「わ、分かったけど、どうやって?」

「正面から堂々とです。いいですね」


 ◆


 精鋭の騎士たちの固い守りがありましたが、今のわたくしの敵ではありませんでした。奥義で全てを蹴散らし、眠って戴きました。

「フォ、フォルちゃんすごい……本気すぎて、倒れてる人が心配」
「大丈夫です。力は押さえました。あれなら脳震盪のうしんとう程度でしょう」

 そうして、王の間。


「やっと来られましたね、フォルトゥナ様、リース様」

「神王・アルクトゥルス!! あなたはいったい何をしているのです!!! そんなボサッとしているくらいなら、聖地を……星の都を……兄様たちをなぜ守らないのですか!!! あなたはそれでも神様ですか!!!」

「…………」

 神王は悲しそうな顔をして、口を開いた。

「申し訳ない。今の私にはもう力がほとんどないのです」
「え……」
「以前、サトル殿に、ほとんどを分け与えてしまったからです。ですが、彼はまだ本当の力を発揮していない。むしろ、弱体化・・・さえしてしまっている。それは、少し前の事です。彼のレベルがマイナスになったことがあったのです。あれは、バグの一種であり、ことわりの逸脱でもあった」

「な、なにをおっしゃっているのか分かりません……」

「でも、サトル殿、メサイア様、ベルは生贄・・にされてしまったのですね」

 神王は、状況が分かっていたようです。
 だったなぜ、救えなかったのか――。

「今、なぜと思ったでしょう。
 言ったでしょう、私にはもう神の力なんてわずかしかないんです。この王座を立ち上がるのさえ難しい」

「そ、そんな……」

「ですので……今は私の妻であるソフィアに任せております」

 奥から美しい人が現れた。
 姉様メサイアにそっくりな、とてもキレイな女性ひとだった。


「あ、姉様!?」「メサイアさん!?」


「いいえ、こちらは私の妻でソフィア。まあ、言ってしまえば、メサイア様の母といえるでしょう。あとは…………任せましたよ、ソフィア」

「神王様!?」

 神王様の……彼の体が消えかけている。


「私は、ようやく長い長い旅路から解放される。……長かった。本当に。やっと……やっと安らかに眠れる。ですから、をお願いします」


 フッっと神王様の姿が消えた。


「そんな……これでは、兄様が救えない」
「いいえ、そんなことはありませんよ、フォルトゥナ」
「え……」
「今、彼は――アルクトゥルスは最後の魂・・・・を生贄に捧げました。これにより、は壮絶な転生を繰り返し、我々の前に帰ってくることでしょう」


「帰ってくる?」


「ええ、もまた『さとる』であり――『ことわり』なのです。ですから、安心してください。彼は必ず帰ってきます」

「いつです!? それはいつになるのですか!!」

「三年、十年、あるいは二十年かもしれません」
「そんな……長すぎる」


「でも希望は常にあります。この娘をお願いします」


 娘?
 そう言われて、わたくしもリースも首をかしげました。
 すると、奥から十歳ほどの女の子が現れました。なんと可愛らしい、どことなく姉様に似ているような。

「わぁ、可愛い子。だれの子なんですか?」

 リースがソフィア様に質問する。

「この子は、本来なら五年後に生まれる予定だった、理とあなた方の娘。現在は十二歳です。彼女は、スターゲイザーの出現と共に、なぜか未来から送られてきたのです」

「み、未来から……!? どうして!?」

「分かりません。突然、時空の歪みが生じ、この王の間に送られてきたのです。
 もしかしたら、未来で何かが起こり、未来のあなた方が結束し、なんとか娘だけでも逃がそうとした結果なのかもれません」

「まって、ソフィア様。何か起きたというのなら、本人に聞けば……」

 ソフィア様は首を横に振った。

「残念ですが、彼女は自分の名前と、あなた方の名前しか覚えていないのです。おそらく、時間跳躍の反動かと」

「そんな……」


「彼女は『希望の星』です。ですから、フォルトゥナ、リース……どうか――『ネメシア』をよろしくお願いします」


 この子が希望――。
 わたくしたちの娘。

「ネメシア……。あなたはネメシアというのですね」
「……はい」

 ネメシアは少しおびえて、震えていた。でも、すぐにわたくしたちを認識し、僅かだけれど笑顔を見せた。

「もう大丈夫ですよ。わたくしはあなたのお母さんなんですから、そして、リースも」
「ええ、あたしもネメシアちゃんのママですよ」

「母様」

 ネメシアは、意外にも素直に受け入れ、わたくしに抱きついてきました。なんだか、懐かしい甘い匂い。これは姉様の――。


 ◆ ◆ ◆


 【 花の都 - 自宅 】


 ソフィアは言っていました。
 ネメシアは、女神の血を色濃く継いでおり、その才があるのだと。

 彼女を大切に育て、能力を開花させることが出来れば、きっと道筋は見えてくると、助言をくださいました。

「リース。わたくしは、命にかえてもネメシアを育てます。立派な女神にしてみせますから……!」
「その気持ちは一緒だよ、フォルちゃん。サトルさん、メサイアさん、ベルさんを取り戻すためだもの。それにね、嬉しいの……あたしたちに娘が出来るなんて」

 そうリースは、ネメシアを優しく抱きしめた。

「そうですね。本当なら、わたくしたちは幸せな家庭を築いて、ネメシアと共にほのぼのと暮らしていたでしょう。そんな素晴らしい未来があったのでしょう。
 でも、スターゲイザーなる脅威が現れ、その未来は変わってしまった……ですから、取り戻さなければなりません。わたくしたちの未来を」

「うん。ソフィア様が言っていたけど、三年あればきっとネメシアちゃんは凄い女神になるって言っていた。だから、がんばろう」

 きっと、その間にも『聖地』は全滅し、変わり果てているでしょう。いや、すでにもうほとんどが消え去ったと聞く。
 恐るべき七人のスターゲイザーは、ついに全聖地の名を変え、世界の名さえ変えてしまって支配しているいう噂を耳にしました。

 幸い、この花の都は姿を消し、外界から遮断されています。

 隔絶かくぜつされた狭い都での活動、とても大変なことですが、今は耐えるしかありません。今出来ることをし、その日が来るのを待つのです。

 きっと――いえ、必ず取り戻して見せます。


 過去も、現在も、未来も。



 ★ ★ ★


 ――――――。


 俺はなぜか『勇者』をやっていた。でもこれじゃない。次は『魔王』。これでもない。『テイマー』? うーんこれも違う。
 じゃあ『アルケミスト』――これも違った。
 なぜか『悪役令嬢』……いやいや、おかしいでしょ。

 じゃあ『王様』!!


 ないわー。


 いろんな世界線・・・・・・・を巡ったと思う。
 なぜかそうしなきゃいけなくて、なぜか多くの敵と戦った。

 その転生回数――六回目。

 でも、どれも合わなかったし、どれもやる気が出なかった。
 超絶面倒だったのもあったけれど、しかしそれよりも、ピンとくるモノがなかった。なにか物足りないし、重要な仲間も必要な気がする。

 そもそも、スターゲイザーとかいうヤツ等は強すぎる。
 俺は何度も殺されてしまっていた。


「…………これで七度目か」


 謎の女神と再契約を交わした。


 七回目の転生。


 長く果てしない転生劇だったと思う。なぜそんなことを繰り返したか、俺にも分からん。なにか理由はあったはずだけれど、でも、決して無駄ではなかった。

 なにひとつ・・・・・無駄なんてない・・・・・

 それらは、過去、現在、未来を紡ぐ王道となるのだから。


 きっかけ・・・・は出来ていた。


 ようやく、彼女と巡り合えた。



 【 王国 - レメディオス - 】


「――――キミは?」
「わたしは、ネメシア。これから、あなたを勝利へ導いていく最強の女神よ」



 【 星屑編・完 】
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