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第197話 エルフを喰らう超怪人

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 獰猛どうもうなブラックフェンリルは、よだれを垂らしまくり、こちらの出方を伺っていた。……なんて鋭い眼光。殺気が痛いほどに伝わってくる。

 それに、あの大きな爪だ。
 いくら俺でもあんなモノで引き裂かれたら、無事じゃ済まないだろう。


「…………ここは慎重に」


『覇王天翔拳――――――!!!!!』


「そうそう、覇王天翔拳を……って、フォル!?」


 すでに飛び出していたフォルを誰が止められようか。
 繰り出された拳はブラックフェンリル一匹に命中し、それがバックにいた群れへ激突――見事なストライクを出した。


『『『『『キャウゥゥゥウ~~~~~~~~~~~ン!!!!』』』』』


 犬っころは情けないない断末魔を上げてちりとなった。


「~~~~ふぅ」
「フォル、お前なっ……って、うわ! そうだ、下着姿だった!」
「ふふーん。どうでしたか、わたくしの動き」
「今日は絶好調だな。凄かった。……けど、その姿はどうにかならんか」
「ええ、さきほど兄様パワーを戴きましたので。って、なにをおっしゃっているのですか、兄様らしくありませんよ?」

 ずいっと自慢の肉体を見せつけてくる。
 いや、見せつけてくるな!

 仕方ない、俺のアイテムボックスに――えーっと確か……。


 あった。


「ほれ、これでも着ろ」
「こ、これは……?」
「俺の命の次に大事なジャージだ。しかも、ブランドのアビィタスだぞ。買うと高いんだぞ~」

「…………」

 あれ、フォルのヤツ固まってる……?

「どした」
「…………スンスン」

「においをぐな――――!!!」

「あ、兄様のニオイです……うふ、うふふふ……汗のニオイとか……幸せ♡」


 顔がやばいぞ……この聖女。


「やっぱり返せ」
「いやです!! 兄様の物はわたくしの物。わたくしの物もわたくしの物なのです!!」

 ささっとジャージを着るフォル。って、お前は、ジ●イアンかよ。

 ――で、ジャージ聖女の完成だ。

「……ふむ、似合ってるな。でも返せ」
「え、本当ですか!? 嬉しいです♡ って、返しませんよ。ダメです! これは、わたくしの家宝なのですから!」

 ダメだ。もう返してもらえそうにない。
 けど、フォルが俺のジャージを……まあいいか。

 しかし、ジャージの上だけで、下は穿いてないから、そこもポイント高いな。あの自然と強調されるふとももはたまらん。フォルは、足がスラっとしているし……ええ、百点満点です。

「よし、引き続きモンスターを討伐する。けれど、貴族たちの動きも気になるな……。なぜ戻ってきているのだろうか。もしかして、このモンスターの奇襲も貴族たちの仕業か?」

「可能性はあるでしょう。――あ、あそこのエルフちゃんとその家族が大ピンチです!」

 フォルは、しゅたっと軽快に屋根を下りて、その場所まで向かっていった。俺もついていくが、くそ……モンスターがどんどん押し寄せてきてやがる。

「きゃあああああ!!」「助けてくれえええ!!」「うああああああああ!!!」「なんでモンスターが!!!」「こ、子供があああ!!」「おとうちゃ~~ん!!」「ひええええええッッ」

 くっ……!

 次から次へと!!


『アメイジンググレイス・フライング・ニールキック!!』


「おぉ!?」


 何かの大技が一気にモンスターたちを一蹴いっしゅうした。


 おかげで、ほぼ全滅だ!!


 てか、ありゃ……もしかして!!

「サトル、わたしも都をお守りに参上しましたわ!」
「おお、まだいてくれたか、サイネリア!!」
「ええ、お父様が残れとおっしゃるので。しばらくは共闘ですわ……よぉ!?」


 大量のドロップアイテムで足をツルンと滑らせるサイネリアは、コケてしまいスカートがめくれた。


 …………あ。


「いたたた……どうして、こんなにアイテムが! ――――ぁ!」


 ばっとスカートを押さえ、恥じらうサイネリアは俺をにらむ。いや、それは俺のせいじゃないからな。ちなみに……赤かぁ。

「足元に気をつけろ、サイネリア。今攻めてきてるモンスター倒すと、アイテム落としまくるからな」
「そ、そいうことは早く言って戴けませんこと……」

 言うも何もなかったけどな。

「と……ところで、フォルはいませんの?」
「んぁ? 気になるのか」
「気になりませんわ。ただ、お元気かどうかお聞かせ願いたいだけですわ」

 いや、それ気になるってことだろう。

「フォルは、あそこだ。今しがた家族エルフを救ったとこ」


 俺が指さす方向には、すでにエルフを救出した後の光景があった。


「へぇ、あんなところで人助けを。素晴らしいですわ、人々の為に命を顧みず戦う……まさに聖女」
「なんだ、褒めてくれたのか」
「ええ、たまには褒めますわ。褒めれば人は成長するものですから」

「どうせなら俺じゃなくて、直接本人に言ってやれよ」

「残念ですが、フォルは褒めて伸びるタイプではなさそうですから、あえて鞭を取りますわ」

「じゃあ、なんでめたんだよ!?」

「つまり、回りまわってサトルを褒めてるってことですわ」
「意味がわからんわ!!」


 けどま、間接的に仲間を褒めてくれたって解釈でいいんだよな……?

 嬉しいけど! 嬉しいけれど!!

 なんか違う気が……?


「さて、困っている人たちはまだまだいますわよ。わたしは、あっちを。サトルはどうしますの?」

「俺はそうだな――――って、サイネリア!!」

「きゃ!? なにを!?」


 空から火が降ってきた。


 俺はサイネリアを抱えて、ギリギリ回避した。あっぶねえ~~~!

「……な、なんですの」
「分からん。けど、ヤバイのは確かだぜ」


『ウォォォオオアアアアアアアアアアアア!! サトル、キサマアアアアアアアアアアアアアアア!! ヨクモオオオオオオオオオ!!』


「あ、ミザール。まだ生きていたのか。いい加減にしつけーぞ」


『サトルウウウ!! キサマヲコロスウウウウウウウウッ!!』


「うるせーよ」


 いい加減に、あのヘドロみたいな顔面を見るのもイヤになってきた。ので……。


「いけえ! サイネリア!!」
「ちょ、なんでわたしですの!?」
「いやぁ、ミザールの相手もう面倒で……」
「まあ、確かに醜悪ですわ。それに悪臭も。申し訳ないのですが、大切な一張羅いっちょうらが汚れてしまいますので、わたしはご遠慮を……」

「まて」

「……ちょっと、肩に触れないで戴けませんか。セクハラですわよ」
「うるせえ。ひとりだけ逃げ出そうとしてんじゃない。共闘はどうした!?」
「え」
「え、じゃねえ~~~!!」

「あれくらい親指で一突きなさい」
「んなムチャな!!」


『ナアアアアニヲ、イチャイチャヤッテルカアアアアア!! シネエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!』


 しまった……サイネリアと遊んでいたら、ミザールがしびれを切らして、突撃してきた。だが、しかし、俺は!!


『親指ニトロ突きィ――――!!!!!!!!!』


『ナニイイイイイイイイイイイ!? ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』


 ダークニトロがミザールを穿うがち、大爆発した。


『クソォォオォォォオアアアアアアア…………』


 メラメラと黒い炎に焼かれていく。


「本当に親指で倒すなんて信じられませんわ……」


 その様子に、サイネリアはドン引きしていた。


『チカラダ……エルフヲクエバ……!!』


 まだ余力があるのか!!

 そんな時だった。


「サトルさ~~ん! みなさんの安全は確保できましたー! 向こうの方はもう平気です。こちらはこれから、あたしが――――」


「リースくるな!!!」


「…………え」



『リース!! オマヲクワセロオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』


 ミザールが最期の力を振り絞り、リースを襲った。


「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
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