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第194話 約束と忘却の優勝賞品

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 何か忘れている気がする。
 思い出せない。なぜか思い出せない。

 そんな時が度々たびたびあるような。

「う~ん……」
「どうなされたんですか、サトルさん」

 俺の部屋、しかもベッドの上で横になっているリースが、生足を見せつけるようにして言った。……白いふとももがまぶしい。

「んや~…なんか違和感を感じるんだよなぁ。なんだろう」
「違和感、ですか」

 リースはスカートに手を伸ばして、なぜかたくしあげていた。なぜだろう。
 もう、見えるギリギリの領域に達している。
 いや……そっちよりも断然、あのムチムチのふとももだ。

「…………そ、そうなんだ、違和感つーか……ふとももっていうか」

「その違和感、あたしも感じるんです。大切な何か・・を忘れている気がするんです。でも、まったく思い出せない……。あたしたちはそれ・・を求めて、この星屑の都までやってきたはずだったのに」

 そう悲しげにリースは遠くを見つめた。
 ……ふとももを大胆に露出して。

 てか、なぜ俺にそんなキレイな足を猛烈アピールしてくるー!? いや、最高だけども! 大興奮だけども!!

 超絶級のふとももを直視していると、リースはこっちにやってきた。やはり、ツヤツヤのふとももを全面に押し出してきて。

 ……はさまれたい。


「リース、この違和感の正体は分からない。けど、きっと何かあるはずなんだ。それを明日は突き止めようと思う。それに……七剣星じゃなくて――なんつたっけ……『スターゲイザー』だっけな。そいつらもこの真・アヴァロンに攻めてくるかもしれないし」

「はい。あたし、このアヴァロンを守るためなら、なんでもします。ですから、サトルさんのお力も借りたいんです」
「ああ、そうだな。星屑の都を守っていこう。ところで、第二・アヴァロンの親父さんたちはどうする?」


 俺の顔の横にフトモモが――。


「テレパシーで呼びかけておきました。ですから、三日後にはこちらに来ると思います。ただ……」

「ただ?」

「あのアヴァロンに住み慣れている人もいますから……全員が移住してくるわけじゃありません。でもいいんです。今は自由・・なんですから」


 そうだ、エルフは自由となった。もう奴隷なんかじゃない。


「これも、全部サトルさんのおかげです♪」


 エルフを代表して感謝すると、リースは心をめて感謝の意を表した。

 ぎゅっと頭を抱きしめられ、俺はリースに包まれた。なんて幸せ。


 ――でも。やっぱり、何か・・、大事な何かを忘れている。この忘却はどこからやってきた――?


 ◆


 女神のスキル『ホワイト』で一泊した俺たちは、星屑の都・アヴァロンへ舞い戻った。そこに以前のような貴族たちの姿はまったくなく、今はエルフたちだけが明るい笑顔で街を歩いていた。

「今までとはまるで違う光景だな」
「そだね。これが本来あるべき姿なんだよ、理くん」

 今日は珍しく清楚せいそな、清楚すぎる服装のベル。
 けど、胸元ははだけていて大胆だ。髪はリボンでまとめ上げ、眼鏡めがねなんて掛けている。それは伊達だてか?

「なあ、ベル。どういう風の吹き回しだ?」
「わたしだって、たまには可愛い服くらい着るよ」
「そ……そか」

 いつもビキニアーマーのくせに、なんで今日は……。
 その答えはすぐに分かった。


「優勝おめでとう」


 ……あ、そっか。


 約束だった。


「バトルロイヤルで優勝したら、キスしてくれるんだっけ。でもなぜ、二人きりでこんなデートみたいな雰囲気なんだよ?」
「デートだからだよ。いいかい、ただキスするだなんて、そんなの一瞬でつまんないよ。それにね、わたしは形から入るタイプだから、だったら、デートした後でいいじゃないかなって。――で、今日はサトルくんを貸し切ってみた」

 キメ顔というかドヤ顔というか……。
 まあそんな顔で、ベルは勝ち誇ったかのような清々すがすがしい表情だった。なるほど、形ってそういうことね。ベルらしいよ。

「それでメサイアたちの姿がないわけだ。……分かったよ、デートしよう。最後にはキスしてくれるんだよな」
「うん。最後にね。じゃあ、行こうか」

 腕を組んでくるベル。
 なんかいつもより顔が赤いな。緊張しているのか……てか、そんな風にドキドキされたら、こっちまで変にドキドキするじゃないか。

 こ、これがデートかぁ。


 ◆


 星屑の都を歩いていると、俺はエルフたちから話しかけられまくった。
 老若男女ろうにゃくなんにょ問わず、あらゆる世代が囲んできた。

「おにーちゃんかっけー!」「あなたが神か!!」「あんたはエルフの希望だよ~」「これ持っていきな!! もともと貴族のだけどなっ」「リースちゃんにもお礼を言っておいてくれい!」「あ、あの好きですっ!!」「今度家へおいで~」「わーわー!」「すっげえ、あの人が神様かぁ」

 なんか神扱いされている。

 告白も多数……しかも、エルフは超絶美人ばかり。よし、まとめて受けてや――――ベルの殺意の波動が襲ってきたのでヤメタ。


 アブネ……。


「…………理くん。ちょっと」
「え……」

 強引に腕を引っ張られて、裏路地に連れていかれた。

「他の女の子にデレデレしないでよっ」

 なっ……!
 あのハイパー冷静沈着、アルティメットクールのベルが嫉妬しっと!?

 あんなムスッとして……。


「す、すまん。……悪い癖が出た。謝る。それにそうだった、これは俺とベルのデートだったな。せっかく誘ってくれたんだから、楽しもう」

「……うん」

 まったく、こうキャラ崩壊されると調子狂うなぁ~。よしよし、あの都全体を見渡せる展望台まで飛びますか。

 俺は、ベルをお姫様抱っこした。

「きゃ!? な、なにするの……」
「誰にも邪魔されないところへ行く!!」


 ダークニトロを爆発させ、俺は空高く飛んだ。


「ひゃっほーーーーーーーーい! すげえ、見晴らし」
「……す、すごいね。空を飛んでる。星屑の都があんなに豆粒に」
「じゃ、あそこへ着地するぞ」
「分かった」

 俺の首に腕を回す、ベル。
 ベルはただでさえバストがあるから、豊満な胸が……いや、集中だ。気がそれると落下してしまう。


 さて、着地を試みようとした時だった。


「――――死ねえええええええええええええええええええッ!!!」


「な、なにいいいいいィ!?」


 巨大な黒い影がいきなり襲ってきやがった!


 何者だ……!?
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