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第192話 エルフが自由になった日

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 星の決闘大会――バトルロイヤルはついに決着がついた。
 だが、戻ったら、とんでもないことになっていた。

 会場が粉々に吹き飛ばされており、更地さらちになっていた。人の気配はまったくなく、静かだった。

「どうなってんだこれ……。みんなは!?」
「サトル、あっちの方に気配を感じるわ」

 メサイアの指さす方向に気を集中すると、確かにそっちに人だかりのような気配が――。向かってみよう。


 ◆


 ん――あれは、戦闘不能になってしまった貴族や、参加者、あとフォルやリース、ベルたちだ。もちろん、サイネリアやスイカ、アグニたち、死神三人衆もいた。


「みんな、無事でよかった!!」

「兄様!」「理くん、おかえり」「戻ってくると思っていましたわ」


「――で、どうしたんだこの人だかり。って……七剣星が取り囲まれている!?」


 そう――『星の都』の貴族や参加者たちの数千人規模が七剣星を問い詰めていた。怒号が飛び交い、喧々囂々けんけんごうごうであった。


「どーなってんだ!!」「俺の大事な仲間が殺されてたぞ!!」「ふっざけんな!!」「マグネターと手を組んでいたって聞いたぞ!!」「花の都の王がこの星の都の噂を聞きつけたって話だぞ!!」「だから、奴隷制度が撤廃されるんだってな」「これも、あんたたちのせいだぞ!!」「そうだそうだ!!」「どうしてくれる! ウチは何百もエルフを手放さなきゃならなくなったぞ!!」「私のエルフがぁぁぁ……」


 どいつもこいつも。

 まあ、これに関しては神王というか、花の都の王・ミクトランが何とかしてくれるだろうか。いや、そうじゃないな。


「おい、七剣星! ドゥーベは倒した!! お前たちは今日を持って解散にする! だから、守護者でもなんでもねえ!」


 俺は、大声でその事実を飛ばした。


「なんだって!?」「そんなバカな……」「七剣星が消えるということは、星の都も終わりか……」「貴族はどうなる!!」「私たちの生活は!?」


 ざわつく貴族たち。
 七剣星はだんまりだった。すると、奥から――。


『我はヘールボップ家のクシャスラ辺境伯である。花の王の命より、この星の都の貴族および奴隷制度は撤廃された!!!』


「馬鹿な!!」「そんな横暴な!!」「俺たちが貴族じゃなくなるだって!?」「馬鹿ば馬鹿な、俺は信じないぞ!!」「エルフは俺のモンだああ」


 荒れ狂う貴族たち。
 まずいな、このままだと暴動に発展しかねない。

「こうなったら、俺が……」
「理くん、あれ」

 ベルが俺の肩を叩いた。


 ――ん、あれ?


 別の方角から、また何かやってきた。


『我々はハレー家のクエーサー!!! 貴族の者よ…………逃げろ」


 ――――と、ハレー家の男は強く重い口調で言った。


 な…………?



 すると、更に奥から何百、何千の足音が向かってきていた。


『ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…………!!!!』


 ま、まさか……!!


 リースがそれを察知さっちした。


「サトルさん、あれはエルフたちです」


「自由だああああああああああああ!!」「私たちは自由になったああああああああああ!!」「うおああああああああああああ!!」「もう奴隷なんかじゃない!!」「この星の都は俺たちの故郷だ!!」「アヴァロンを返せ!!!」「貴族は出ていけええ!!」「よくもやってくれたなああ!!」「今度は貴族を奴隷にする番だ!!」「そうだそうだ!!」「全員、縛り首だ!!」「ギロチンでやっちまえええ!!」「今まで受けた屈辱、味わうがいい!!」


 うわぁ、とんでもない事になったぞ!!

 一方、貴族たちは一気に萎縮いしゅく
 あのエルフの数ではな……。


「サトルさん。ここは、あたしに任せてください」
「リース……いいのか」
「はい」


 リースは一歩前へ出て、目を閉じた。

 テレパシーか。


 それが段々伝わっていったようで――。


「…………なんだって、第二のアヴァロン?」「あのサトルという男が解放を!?」「同胞が助けに来てくれたんだ……!」「平和的、解決を……?」「だけど、それじゃあ……」「いや、あの娘はネモフィラの……」「そうか、そういうことなら」


 興奮していたエルフたちは段々、落ち着き始めていた。
 ナイス、リース。


 でも、この先はどうすれば……?


 今のところ、貴族vsエルフの戦争勃発は回避されているが――。
 なにか余計があれば、途端に……。


 どうするべきか悩んでいると、ヘールボップ家のクシャスラ辺境伯は言った。


「我々貴族は、花の都へ移住を決定した。皆の者もすべてを放棄し、撤退せよ。逆らう者は、花の都の騎士たちによって断罪を受けることになるぞ」


 そう警告を言い残し、クシャスラ辺境伯は去った。


「うああああ、花の都の騎士だって!?」「おいおい、そんなのアリかよ!」「あのバケモノ集団だろ……」「レイドボスを相手にしていた連中だろう!?」「帰ろう……」「星の都は終わりだ……」「くそぉ、この生活、好きだったんだけどなぁ」


 トボトボと出入口へ向かっていく貴族たち。もう覇気はなかった。


 そして、残ったのは俺たちと七剣星、エルフだった。

「七剣星、お前らも帰れよ」

 今の七剣星は、メラク、メグレズ、アリオト、アルカイド&ベネトナシュしかいなかった。それ以外のドゥーベとフェクダは消えた。ミザールは行方不明となっている。

「ぐっ……サトル、貴様……よくも!」
「やめとけ。お前らの前には、俺と俺の仲間と数千のエルフがいる。勝てると思うか?」

「ぐぬぬぬぬぬぅ……」


 七剣星の生き残りたちは、しぶしぶ星の都を後にした。


「ふぅ……」


 これでもう貴族たちはいなくなった。
 この星の都は再び『アヴァロン』となり、エルフたちの故郷となる。

 そして、俺は叫んだ。


「エルフは自由だ~~~~~~!!!」


「「「「「おおおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」


 この日、エルフは奴隷から解放された。
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