上 下
173 / 430

第173話 女神の建築スキル再び

しおりを挟む
 女神専用スキル『ホワイト』の中には空間が広がっていた。
 なにもない白い空間だ。

 そんな中に、俺たちはいた。
 まさかホワイトに入れるだなんてな……予想外すぎた。

「なにもないぞ、メサイア」
「そらそうよ~。これから作っていくんだから」
「これから作る……?」
「お忘れ? 私は【建築スキル】を持っているのよ。家を建てるの」
「まさか……! また・・作るのか家を! しかもこのホワイトの中に!」
「そう。私たちは今まで『小屋』や『家』を作ってきたじゃない。今度はでっかい邸宅ていたくでも作ってしまおうと思うの!」

 ばーんと手を広げ、顔を輝かせるメサイアの顔はまぶしかった。てか、女神スキルで輝かせてる? やたら神々こうごうしいぞ。


「姉様! またわたくしたちの家が!?」
「そうよ、フォル。また住めるわ。しかも今度はより安全にね!」
「大好きです! 姉様!」

 フォルはメサイアに抱きつく。

「家……なんだか懐かしい響きですね。久しぶりに、あたしの【掃除スキル】が役に立ちそうですね……!」
「それあったな、リース。ずいぶん、ご無沙汰ぶさただったけど、また輝く日が来そうだな。頼んだぜ」
「はい、サトルさん。家事全般はお任せください!」

 そう意気込むリースは可愛かった。
 しかし、フォルは聞き捨てならなかったようで、割って入ってきた。

「わたくしは聖女ですが、【料理スキル】に特化しているのです。ですから、料理に関しては譲る気はありません。いいですね、リース」
「わ、分かっていますよ、フォルちゃん。顔が近いよ……でも、少しは手伝わせて欲しいかな」

 むぅっとフォルは意地を張っていた。
 変なところで頑固がんこだからなぁ。

「フォル、以前と同じようにみんなで楽しもう」
「そ……そうですね。ごめんなさい、リース」
「いいんです。譲れないものってあると思いますし、その気持ちはよく分かります」


「あの~、すみませんでげすが、この白い空間はなんざんしょ」

 そうだ、ミザールの存在を忘れていた。
 するとメサイアが説明を始めた。

「これは『ホワイト』っていう女神スキルの特殊空間よ。私が認めた人しか入れない空間。外から入ってこれないし、抜け出してしまうと入ってこれなくなる。絶対領域アブソリュートなの。だから、外出時は気を付けてちょうだい」

 ふーむ。あんまり、不用意にウロチョロしない方がよさそうだ。

「で、メサイア。家をどうやって建てる? しかも、前はすげぇ時間掛かっていただろ。今回はバトルロイヤル中なのもあるし、いくら時間無制限といっても、そんなに待っていられんぞ~」

 ふふーんと鼻を鳴らすメサイアは、得意げに腕を組んだ。
 なんだ、あのたくらむような顔。

「サトル、今の私は女神よ? しかも、スキルも1000もあるの。これだけあるとね、便利なスキルでいっぱいなの。『高速建築・・・・』くらい可能よ」
「おお、高速建築か! そりゃいいな。――で、肝心の材料・・は?」

「え……材料?」

「おう、材料だ。ほら、木材とか石、布とか必要だろう?」
「…………にょ?」
「にょ~?」

 汗をダラダラ流すメサイア。
 おい……。

「まさか、材料もなしに建築するとか言ってんじゃねえだろうな!?」
「…………うぅ」

 泣き出した。
 いや、泣くなよ。

「ぽんこつ女神め……。そのポジションは、リースのはずだったけどなぁ」

 100人貴族事件といい、なんかメサイアのぽんこつ具合がアップしていないだろうか。まあ、馬鹿な子ほど可愛いとも言うけれど。
 仕方ない、俺のあまりない知恵を絞って、CPUをフル回転させますか。

 う~~~~~~ん……そうだなぁ。


 <ピコーン!!>


「発想の転換といこう」
「え? なにかあるの、サトル」
「ホワイトから飛び出て、森の木々を伐採すればいいんじゃね?」

「あぁ~~~っ!! サトル、すごいそれ! 名案!」

 喜んで飛びついてくるメサイア。
 よしっ……! ダブル凸《とつ》の感触がたまらんッ。

「兄様すごいですー!! わたくしも飛びつきます!」

 フォルも続いて自慢の肉体をり寄せてきた。
 もうそれはわざとらしく。すことなく徹底的に。おかげで天国だが、やりすぎた。さすがヘンタイ聖女だ。なお、これは最上級のめ言葉だ。

「サトルさん、家が作れるんですね!」
「もちろんだ。そのためにはリースの力も必要だ。手伝ってくれ」
「もちろんです! ですから……あたしも」

 ピトっと小さな体を寄せてきた。
 俺は思わず打ち震える。リースは小さくて可愛くて、金髪でバインバインの世界一可愛いエルフだからだ。それがこんなピトっと……ピトっと……。


「げふんげふん。あー、森の木々はいくら切ってもまた生えてきますし、石もその辺にいくらでも落ちていますでえ。ええと思いますだ。そいじゃぁ、オイラは護衛でもしますかね」

「すまん、ミザール。それじゃ一度、外へ出ますか! メサイア、頼む」
「分かったわ。ホワイト解放!」

 ――なんてメサイアが叫ぶと、そこには森が見えた。
 なるほど、あのホワイトホールから出ればいいらしい。


 よし――建築材料の『木材』と『石』をさっさと集めてずらかろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗
ファンタジー
 元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。  仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。  気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗
ファンタジー
 帝国の第三皇子・ラスティは“無能”を宣告されドヴォルザーク帝国を追放される。しかし皇子が消えた途端、帝国がなぜか不思議な力によって破滅の道へ進む。周辺国や全世界を巻き込み次々と崩壊していく。  ラスティは“謎の声”により無人島へ飛ばされ定住。これまた不思議な能力【無人島開発】で無人島のレベルをアップ。世界最強の国に変えていく。その噂が広がると世界の国々から同盟要請や援助が殺到するも、もう遅かった。ラスティは、信頼できる仲間を手に入れていたのだ。彼らと共にスローライフを送るのであった。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星
ファンタジー
仕事の修羅場を乗り越えて、徹夜明けもなんのその、年2回ある有○の戦場を駆けた夏。長期休暇を取得し、自宅に引きこもって戦利品を堪能すべく、帰宅の途上で食材を購入して後はただ帰るだけだった。しかし、学生4人組とすれ違ったと思ったら、俺はスマホの電波が届かない中世ヨーロッパと思しき建築物の複雑な幾何学模様の上にいた。学生4人組とともに。やってきた召喚者と思しき王女様達の魔族侵略の話を聞いて、俺は察した。これあかん系異世界勇者召喚だと。しかも、どうやら肝心の勇者は学生4人組みの方で俺は巻き込まれた一般人らしい。【鑑定】や【空間収納】といった鉄板スキルを保有して、とんでもないバグと思えるチートスキルいるが、違うらしい。そして、安定の「元の世界に帰る方法」は不明→絶望的な難易度。勇者系の称号がないとわかると王女達は掌返しをして俺を奴隷扱いするのは必至。1人を除いて学生共も俺を馬鹿にしだしたので俺は迷惑料を(強制的に)もらって早々に国を脱出し、この異世界をチートスキルを駆使して漫遊することにした。※10話前後までスタート地点の王城での話になります。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...