全スキル自動攻撃【オートスキル】で無双 ~自動狩りで楽々レベルアップ~

桜井正宗

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第164話 聖地巡礼の儀式

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 部屋に戻るとフォルの姿はなかった。
 俺はメサイアをベッドに座らせ、隣に座った。

「このまま寝るか? 無理はしてほしくない」
「大丈夫。会話するくらいの気力はあるから……」

 相変わらず熱っぽいっていうか、風邪っぽい。
 てか、女神が風邪を引くものなのだろうか。今までそんな場面に遭遇したことはなかったような。やはり、あの『夢』が関係しているのか。

「メサイア、呼吸荒くないか……。それにどんどん辛くなってきているよな。……こうなったら、フォルを呼んでグロリアスヒールを――」

「ま、まって……」

 うっ……そんなうるんだ瞳で見つめられたら、離れられないじゃないか。むしろ、ずっとそばにいてやりたい。

「分かった。それで、俺はどうすればいい」

 そう聞くと、メサイアはうつむき……なにやらブツブツ言い始めていた。……ちょ、こわっ。なんかの呪詛じゅそ!?


「もうね、この都の息苦しい空気には我慢ならないわ。
 ……ああもう、イラつく! ほら、私って女神じゃない……なんかこの都に入ってから、ずっと体中に異変が起きてるの。苦しいし、なんか痒《かゆ》いのよね。あんな変な夢も見るし! あ~、イライラするー!」


 ガ~っと不満を吐き出しまくるメサイア。
 なんだか支離滅裂だ。まあでもそうか、ストレス溜まっていたんだな。そうやって全ての不平不満を漏らすと、やっと落ち着いた。

「どうだ、少しは気分が良くなったか」
「…………うん。ぼうっとしていた頭も今はスッキリした」

 顔色もよくなったし、どうやら回復したようだ。

「サトル、オートスキルなんだけどね」
「やっと本題か」
「覚醒には、あとひとつ条件が必要」
「なに!?」
「聖地巡礼はきっかけ・・・・だった」
「きっかけ……いやだが、あれは『不老不死』だったんだろう? これといって俺の体に変化はないし、不死になった感じでもないぞ」

「そりゃそうよ。だって、みんなで巡礼していたでしょう。だったら、みんな『不老不死』なってなきゃおかしいもの」

 そう言われてみればそうだ。

「だとすれば……なんだ?」
「不老不死なんて言ってしまえば、神の力よ。……つまり、聖地巡礼とは『神王』になるための生贄の儀式の一部だったの」


「なァにィ! くぅ……あの神ヤロウ……! 俺たちをはかったな!!」


 そもそも『聖地巡礼』は神王のススメでもあったのだ。
 この状況を見越していたというのか。だとしたら、とんでもねぇタヌキだな。ああ、そうだ、思えば何か企んでいやがる・・・・・・・とは思っていたんだ。

 そうか、それで最近やたら神になれだの推してきていたワケか。

「てか、このままだと俺……『神王』になっちまう!?」
「それはまだ分からない。けど、何にしてもこの『星の都』をどうにかしないとね。明日の大会で全てが分かると思うから」

「ああ……」

 俺はリースから預かっていた『ユニリング』を取り出した。


 ◆


 ようやく就寝となった。
 ――のだが、久しぶりにメサイアと同じ部屋、しかも同じベッドで寝ることになった。そういえば、小屋以来だな。かつての懐かしい記憶が鮮明に蘇る。

 昔はよくこうやって一緒に寝ていたっけな。
 けど、久々なせいか距離はちょっとだけ離れていた。

「今更遠慮するなよ、メサイア。こっちこい」
「え……でも」

 なに無駄に緊張してんだよ。
 こっちの方が心臓バクバクだってーの。

「いつもの気丈な振る舞いはどうした。らしくねぇぞ」
「う、うるさい……分かったわよ。そんなに言うんだったらね、こうよ」

 と、メサイアは手足を伸ばし、思いっきりからみついてきた。

 なんという不意打ち。

 そんな抱き枕みたいにされるとは思わなかった……。

「おぉ、柔くて気持ちい。これなら安眠、ぐっすり寝れそうだな」
「……ばか」

 女神に挟まれながら寝る、なんという天国。
 さすがに眠くなってきたなぁ。

「おやすみ~」
「はい♡ おやすみなさいませ、兄様♡」
「おう~…………おぉ!? まて、なんかフォルの声が……」

 振り向くとフォルがいた。いつの間に。
 更に、扉が勢いよく開くと――

「サトルさーん! 一緒に寝ましょう~♪」

 リースが飛んできた。

 更にさらに宿の窓をぶち破って(いや破るなよ!?)、ベルも降ってきた。

「うあぁぁぁ――――!? ベル、お前なんて登場の仕方してんだよ! ちゃんと弁償しておけよ!」

「いけずだなぁ理くん。わたしも混ぜてくれなきゃ~」


 みんな集合してしまった。

 部屋を別にした意味がねええ~~~~~~!!!!

 結局、みんなで寝た。


 ◆ ◆ ◆


 ヘールボップ家へ戻ったサイネリアは、今回の急な呼び出しに苛立いらだっていた。本来であればサトルたちを引き入れ、『マックノート家』と『ハレー家』の権力を失墜させる展望であったはずだが、事態が急変したのだ。

「な、なんですって!? お父様……それは本当ですか」
「そうだ、サイネリアよ。マックノート家が不可侵領域『七剣星』を掌握したのだ。彼らはこの『星の都』のバランスだった。だが、ついに崩れ去ってしまった……その原因は定かではないが、この意味するところは、我々はマックノート家とは対等な関係ではなくなったということ」


「意味が分かりませんわ。
 だって、七剣星のフェクダはわたしの味方を……」


「彼女は、ヘールボップ家に長年仕えてくれていたからな。せめてもの義理立てだったのだろう……」

「そんな……」

「ヘールボップ家はこのままでは、マックノート家の隷属れいぞくとなろう」
「れ、隷属って……まるで奴隷みたいではありませんか」
「奴隷よりはマシだろう。なあに、このままヤツ等の言いなりになるつもりは毛頭ない。サイネリアよ、お前の『力』はもうこの『星の都』に迎えているのだろう」

「はい……」

「では、待とうではないか――その時を。例え悪役にてっする羽目はめになったとしても、いつかきっと彼らは分かってくれるはず。この腐敗しきった都を正すには……これしかないのだと」

「お父様……分かりました。この都の奴隷制度を撤廃するためにも……わたしは『力』の敵にもなってみせますわ」

「すまないな。お前には辛い役目ばかりを押し付けてしまっている」
「構いませんわ。これこそがヘールボップ家の悲願なのですから」

 サイネリアは決意を胸に、明日の星の決闘大会『コメット』の出場を決めた。
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