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第159話 星の都・アステリズム

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 リースに誘導され、難なく出口を発見した。
 エルフの『テレパシー』はガチで有能だ。ついでに、俺の体のどこかにGPSみたいな追跡魔法が付属しているらしいが、今だにその正体は分からない。


「お~い! みんな、無事だったかー!」


 白い出口前に辿たどり着くと、そこには三人の姿があった。
 メサイアとリース、そしてベルだ。

「サトル~! 良かったぁ、みんなも無事だったの――――ねぇ!? ちょちょちょちょ、サトル! なぜ全裸なの!! あんたの[ガオー!!][ピヨピヨ]が丸見えよ!?」

「いや~。これには深海より深いワケがあってだな。説明すると日が暮れちまう。ところで、メサイア、葉っぱとかなにか隠すモノないか」
「ないわよ。……ああもう、リースもベルも凝視しない」

 メサイアが俺の前に立つ。

「はぁ、仕方ないわね。最近覚えた『女神スキル』なんだけどね~」
「ん? なんだ、また何か宴会えんかいスキルでも覚えたか」
「なわけないでしょう。なにその駄女神。違うわ、私のはこれよ」

 と、メサイアは何もない空間に手を伸ばしていた。

「うげ。なんだその、けったいなスキル」
「これね――『ホワイト』っていうの。ほら、こうやって、はい、服」
「うわ……なにも無いところから服が出てきた。でもこれ、メイド服では」

「う~ん。残念だけど、これが私の精一杯の一張羅いっちょうらよ。
 嫌かもしれないけれど我慢して。みんなジロジロ見ちゃうし……あとこれから『星の都』に入るのよ。そんな全裸でいられたら不審者すぎて即捕まるわ」

 メイド服の方が余計に不審者な気がする。しかし、全裸よりはマシか。まさかメイド服に身を包む羽目はめになるとはな。


 ――で、数分後。


「………………」


 空気が死んだ。
 いや、どちらかといえば……ウェルカム?


「うわぁ。あんた、馬子にも衣装ね」
「あぅ……。兄様……とても可愛らしいです……素敵です♡」
「そんな、なんだか負けた気分になりました……。でも、なんでミニスカメイドさんなんですか!?」
「こりゃ参ったねぇ。こんなところに思わぬ伏兵がいただなんて。うーん、スクショ機能があったのなら、迷わず百枚くらい撮ったんだけどなぁ」
「しかも、ちゃっかりニーハイも。それに、なんという反則的な美脚。わたし、キッカーとしての自信が……」


 えー、なお、メサイア、フォル、リース、ベル、サイネリアの順で興奮気味に感想を述べてくれた。こんな格好で褒められても嬉しかねーよ……。

 てなわけで――ついに『星の都』へレッツゴーとなった。


 ◆


 【 星の都 アステリズム 】


 都を案内されながら歩くと、なぜか活気がなかった・・・・

「……ん。おい、サイネリア。これはどうこった。人っ子一人いないぞ」
「ど、どうなっているのでしょう……。いつもはもっと雑踏がありまして……人々の笑顔であふれているのに…………なんだか非常に嫌な予感がしますわ」


 彼女が不安がる通り、都の大通りには――


「こ、これは……」
「サトル、これ……この都の人たちよね」
「ああ、そうだろうな、なんでこんな倒れて……メサイア、そっちを頼む。フォル、グロリアスヒールで回復できるかやってみてくれ」

「わ、分かったわ」
「分かりました……」

 二人は、倒れている人たちの救出へ向かった。

「なあ、サイネリア。これは一体どうなってんだよ。ここの住人たち全員ぶっ倒れてるって……こんなことありえるのかよ」


「…………マグネター。まさかこの星の都にまで……」


 多分、そうなんだろうなと思考を巡らせていると……


『これはこれは……おかえりなさいませ、お嬢様』


 道の向こうから、誰がしっかりとした足取りで、歩み寄って来ていた。

「あなた……フェクダ」
「サイネリア、知り合いか」
「ええ、彼女は女準男爵バロネテスですわ」

 いや、知らんし。
 まあでも、サイネリアと顔見知りみたいだし、なにより……。
 あのゴテゴテしたスチームパンク風のドレスで、コーディネートを装っているところを見ると貴族で間違いないな。


「これはご丁寧に、ご紹介ありがとうございます。
 ですがね、サイネリアお嬢様、お父上様がお呼びなんですよ。それ以外は……消せ・・とのご命令です」


「な、なんですって……彼らは『力』よ。なぜ」

「なぜぇ!? そんなこと、詮索せんさくせぬ方が長生きできますよ、お嬢様。さあ、こちらへ。あなたはお父上様には逆らえないはずですよ」

 ギリっと唇をむサイネリアは……俺の方を向いた。


「申し訳ないですわね、サトル。どうやら、ここまでのようです……。裏切者とののしって戴いても構いませんわ」


 と、サイネリアはキックスキルで俺を襲った。

「当たらんよっと。ついでに、お前を傷つけるつもりもないよっと」

 ブリッジして、俺は緊急回避。
 ……まあ、サイネリアのスキルの特性は分かってるし、動きは簡単に読めた。とりあえず、顎を砕かれなくて良かったぜ。


「みんな、横やり不要。いいな」


「分かってるよ~理くん。好きなだけ暴れちゃいなよ~。みんなはわたしが責任をもって盾で守ってあげるからさ」

「おう、ベル。ところで――こうブリッジして観察して悪いが……お前、ビキニアーマーを新調していたんだな」

「ん~? 今更気づいたのかぁ。でも、あんまりジロジロ見ないでね、恥ずかしいから。ていうか、このまま理くんの顔面を容赦なく踏みつけるから」

「踏み……それはそれでアリだな。――っと、頭に血が上る前に起き上がろうっと……おととととと!!」

 ――っぶね、あのフェクダとかいうヤツのレイピアが、俺の頭上をかすめていた。その剣先はベルの方へ飛んでいったが、シールドスキルが防いだ。


「チィ……外したか!」
「なぜ俺たちを狙う。この都の人たちもお前がやったのか」

「そう思うのなら……この私をどうするつもりかな。メイド姿をしたヘンタイさん」

「どうもしない」

「どうもしないだと……戦わないというのか、負け犬が!!」
「戦わないだなんて、一言も言ってないぜ。
 言っておくが、俺はそこらの冒険者とは戦法が違うんでね」


「なに!?」


 ヤツの攻撃に反応し――【オートスキル】が発動。


『チェンジマテリアル!!』


 ヤツのレイピアを物質変換し、グニャグニャのドロドロにした。
 早い話、ゴミになった。

「……っ! なんだこれは……! なぜ勝手に『武器破壊』が!?」
「悪いんだけどさ、俺たちの邪魔しないでくれるか。えーっと……フェ、フェンスさん? ん、違う、フェイバリット?」


フェクダだ・・・・・!!」


「――っと、あぶねっと」

 サイネリアのキックが飛んできていたが、病気のような弱弱しい蹴りだったし、本気じゃなかったので俺は彼女の足首を掴んだ。
 すると、逆さまになって、重力に引っ張られてドレスもめくれた。
 へえ、純白か。

「サイネリア。邪魔するなよ。俺たち仲間だろ」
「さあ、なんのことでしょうか。ですけれど、わたしは一旦、邸宅うちに帰りますわ。お父様に事情を聞いてみようと思いますの。ですから、こちらの邪魔はしないで戴きたいですわ」

 あんな真剣マジに訴えられてはな。

「分かった。好きにしろ」

 手を放すとサイネリアは、宙で飛躍しクルクル回転してフェクダの元へ着地した。それから、なにか耳打ちし背を向けた。


「次に会う時は敵かもしれませんわよ、サトル」
「ああ、そん時はそん時だ。でも、助ける方法を必ず見つけるよ」


「………………メルシー」


 彼女はぼそっとそう言い残し、去った。


 ◆


 しばらくして、都は元に戻った。
 誰もが普通の日常を取り戻し、活気に満ちていた。

 どうやら、メサイアたちのおかげで人々は回復したようだ。――にしても、どんな毒を盛られたのやら。


「サトルさん♪」
「おうリース、どうした。なんか機嫌良さそうだな」
「ええ、見てください! この国の人たちを」


 んー? 普通に見えるけど。
 まあさっきは、みんなぶっ倒れて、正直死んでいるかと思っていたくらいだけど。どうやら、気絶していただけだった模様。いったい誰が何の目的で、あんなことを。

「――んぉ? ちらほら『エルフ』がいるな。へえ~、アヴァロン以外にもエルフがいたんだな。しかも、あんな美女ばかり……」

「むぅ~~~~~~…」

「おいおい怒るな。リースが世界一可愛いエルフに決まっているじゃないか」
「許しました♡」

「けど、あっちの娘も捨てがたいなぁ……お尻とか」
「……殺しますよ」
「リースが世界一可愛いエルフ」
「許しました♡」

「おほー! あのお姉ちゃんエルフの服……すげぇスケスケだぞ」
「……殺しますよ」
「リースが世界一可愛いエルフ」
「許しました♡」


 なんて繰り返していると、さすがにメサイアからお叱りを受けた。


「こら、サトル。リースで遊ばないの。
 お腹空いたし、なにか美味しいモノでも食べましょう」

「そうだな。都も元に戻ったし、まずは腹ごしらえだな」

 俺たちは良さげなお店を求めて歩き始めた。


 ふ~む……それにしても。
 『エルフ』と『星の都』……関係は深いな。
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