上 下
153 / 430

第153話 復活のオートスキル

しおりを挟む
 これは聖地滅亡を回避し……
 世界が平和になってほんの少し経過した後の話だ。

 ◆

 世界最高峰の霊山れいざん――『アヴェレスト』へ向けて、俺、メサイア、リース、フォル、ベルは登山とざんしていた。いや、これは登山というか……。


 女神――メサイアはなぜか俺をおんぶ・・・してくれていた。なんでだ、普通は逆だろう。いやいいんだけど、俺がなんかこう楽しいし。


「なあ、メサイア。重くないか~?」
「へーきへーき。これでも毎日ストレッチできたえているんだから、それにね、サトルをみんなに取られたくないし」


 キレイな白い歯を見せ笑うメサイアは、マジで女神だった。かわいい。ていうか、本当に女神だしな。あと、ストレッチで鍛えるとは言わないんじゃ!?


「むぅ~。メサイアさん……ずるい」

 そう顔をふくらませるのはエルフのリース。頬をぷっくりさせながらも、モンスターを魔法で倒していた。あの火力は八つ当たりレベルだぞ!?


「そうですよ。そろそろ、わたくしと交代してくださいです!!」


 空から降って来る聖女――いや、フォルは『ギガントゴーレム』を手刀で真っ二つにし、さらに突き飛ばしては粉々に分解した。
 相変わらずおっかね~。いやでも、美しくも最強の『聖女』だからな。


「フォル。少しは手加減しろ。山がくずれたらどーする」
「あ、そうですね。では、兄様、わたくしと一緒に遭難しましょう♪ それから、あ~んなことやこ~んなこと、楽しいことをたくさーんしましょうね♡」

 あ~んなことや、こ~~~んなこと?
 いいですねぇ。ぜひぜひ。俺もフォルとすっごいプレイで楽しみたい。


「理くん、顔がオーク並でやばいよ~。ていうか、ボス登場だし! エレメントシールド<バスターモード>!!」


 目の前に現れた『ギガントゴーレムMARKII』は山のように大きく、巨大すぎた。なんだあの【レイドボス】のようなバケモノ。

「なんじゃありゃああ! あんなのアリかよ、反則だ!! チートだチート!! どこに訴えればいい!!」
「落ち着いてよ、サトル。私、あんたを運びながら移動しているんだから、そんな揺らされたら落っことしちゃう」

「分かった! こんなところで落ちたら奈落の底だからな、うーん。メサイア、また【オートスキル】を使えるようにしてくれ」


 ――そう、俺は世界を救った代償に(?)全てを消失していた。

 あるものと言えば、この素敵な仲間たちだけ。

 いや十分すぎる宝物・・・・・・・だな。うん。うんうん。


「なにを勝手に納得しているのよ。
 うーん……そうね、女神権限を行使してみようかしら」

 ウィンクするメサイアは、なにか『奥の手』があるようだ。これは期待していいヤツなのか。俺はまた【オートスキル】で無双できるのか!?

「理くん、シア。援護するよ。わたしの後ろに」

 ベルのシールドに隠れた。落ち着く~。って、そんな場合ではない。

「で、秘策あんのか、メサイア」
「たぶん」
「たぶんって……なんか希望薄いな。でも、お前は女神だもんな。信じているよ、俺は」
「……サトル。うん、がんばる」

 メサイアは目を閉じ、祈った。

 外では、フォルが前衛となり応戦しているようだ。後衛がリース。魔法がドカドカ出ているところ見ると、かなり機嫌が悪そうだ。あー…あとが怖い。

「……駄目だわぁ、サトル。ごめんね……私役立たずで」
「なに言ってるんだ。お前は今まで数々の奇跡を起こしてきただろう。それにな、俺は嬉しいんだ」

「え……」

「なんたって『神』にならなくて済んだからな!!」
「えー…そっち」

 聖地を救った後だった。
 神王は『神』を継がないかと、とんでもない発言をしやがった。
 けれど、俺は断った。断ったけど、神王はしつこかった。宗教の勧誘じゃあるまいし、しつけえよ。けど、普通は神様になれるなんて言ったら断らないだろうな。

 けど、俺は断った。


「だって、超絶面倒・・・・だし」

「ふーん」


 ぬめっとした目で見てくるメサイアは、自慢の黒い髪をつまらなさそうにいじっていた。いやホント、つやつやでキレイなんだけどね。ってそっちじゃねえ。


「なあ、メサイア。神様は別れ際にこうも言っていた」
「?」


『女神と再契約・・・をすれば新たな可能性が開けます。新の世界があなたに訪れるでしょう。ですが、その選択肢せんたくしは常にあなたにゆだねられている。
 平和にほのぼのと暮らすもよし、新しい力を手に入れ――冒険するもよし。
  いいですか、サトル。私はどのような場合においてもあなたを理解し、あなたを認めます。なぜなら、あなたは後継者。なにも選択肢はひとつやふたつではない。さあ、どうでしょう。『神』になるなら今のうちですよ~~~!! さあ、さあさあさああ~!!』

 語尾はうるさいのでスルーしておく。


「再契約……やっぱり、今の状態は『契約が切れている』状態なのかしら」
「らしい。だってさ【オートスキル】が使えないんだぜ。ヘンだろ」

 まあ、心当たりはあった。
 コンスタンティンとの対決の時だ。


 俺は一度死んだ。


 あれが引き金になっているというのなら、少し要因はあったかもな。いやだけど、あれは【イクシード】の効果でもあったはずだけどなー。うーん。
 とまあ、いろいろと考えを巡らせていると……。

「分かった」
「え、どうしたメサイア。なにが分かったんだよ?」
「サトル。再契約しましょう」

「え」

 メサイアは俺の頬を両手で押さえるなり、割と勢いよく――キスを。


「――――――ぁ」


 で、光った。赤く。……うお、俺とメサイアが光ってるー!!

 キスを続け、なにかエネルギーのようなものを俺は得ていた。なんだこの不思議なパワー。まるで、女神の神聖な力が血となって駆け巡っているみたいだ。


 ンギモヂイイイイイイイイイイイ!!


 そう、なんか気持ちよかった。
 キスしている状況なのもあるかもしれないけど、それ以上にヤバかった。なんだこの人間を超越していく圧倒的優越感。高まる高揚感。ついでに変な臨場感。


『神~』『うっせえ!!』


 なんか一瞬、余計な声・・・・が脳裏を過ったけど、華麗にスルーする!!
 ――で、俺はつい、その気持ち良すぎるエネルギーをもっと追い求めたくて……メサイアに対し、激しくしてしまった。

 唐突とうとつだった行為にメサイアは驚き、口を放した。

 そして、


「ば……ばかっ。今は戦闘中よ。そ、そういうのは夜にしなさいよ」
「す、すまん。なんか体が勝手に。――って、お!?」


 なんか知らんが体が軽い。
 感覚を確かめていると、ベルが声を荒げた。

「――ちょっと! 二人ともそろそろシールドから離れてくれないかな。ゴーレムが拳を向けて来ていてね! このままだとペシャンコだよ~」


「ハハ…………ハハハハハ」


「え、どうしたの理くん。頭おかしくなっちゃった?」



「フハハハハ!!! フッゥ~~~~~~~~~~~ハッハハハハハハハ!!!」



「え、兄様が笑っていらっしゃいますね? どうしてですか?」

 フォルは不思議そうに俺を見た。
 で、リースは、

「さ、さあ……なにか良い事でもあったのかな。あ、フォルちゃん。ゴーレムの取り巻きが現れたよ。あたしが処理するね」


「ちょっとまったあああああッ!!」


「「え」」


 二人とも動きを止めた。

 今だ!!!

 俺は彼女たちの前へ飛び出し、ギガントゴーレムの拳と対峙たいじした。
 猛烈な勢いで接近してくる巨大な拳。もし常人であれば即死どころか、木っ端みじんになって骨も残らす死ぬだろう。だけど、今の俺はもう常人なんかではない。

 手をかざし、俺はその瞬間・・・・を待った。


 そうして、それは突然――自動発動オートしたのだ。さあ、来やがれ!!


『オートスキル【ダークニトロ】――――――!!!!!!』


 敵の拳に向けて暗黒の爆発が駆けだしていく。その勢いは光の速さを突破し、ゴーレムへ瞬く間に命中。連鎖爆発を数百、数千繰り返し崩壊した。ざまぁみろ!!


「っしゃああああああッ!!!」


 【Amazingアメイジング!!】
 【Congratuコングラチュlationsレーションズ!!】


「やったわね! 【オートスキル】が復活したんだ、サトル」
「おう、お前のおかげだメサイア」

「あ、サトルさん……あの、今の爆発で山が……」


「え!?」


『ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド…………!!!』


 リースが指差す方向、超至近距離で山が崩れていた。
 どうやら俺のスキル【ダークニトロ】の威力が強すぎた影響らしい。岩がゴロゴロ転がってくるや否や、俺たちは死にかけた。



「「「「「うああああああああああああああああああああ!!!!!」」」」」



 やりすぎたー!!!


「サトルのあほー!! でも、それがあんたね!」
「兄様は手加減知らずですからね♪ わたくしにもいつもそんな感じですし♡」
「そんな大胆なところが大好きです♡」
「理くんだもの。うん、でもそんな豪胆さが好きなのさ」


 メサイア、フォル、リース、ベルはそれぞれ感想を述べていたが、そんな場合ではない。さっさとずらかるぞー!!


「す、すまねえ、みんな! 逃げるぞー!!」


 俺たちは全速力で山をくだった。

 だけど、この時の俺たちは知るよしもなかった。
 この『霊山崩壊事件』がとんでもないことへの引き金になるだなんて――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~

桜井正宗
ファンタジー
 元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。  仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。  気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?

無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ

桜井正宗
ファンタジー
 帝国の第三皇子・ラスティは“無能”を宣告されドヴォルザーク帝国を追放される。しかし皇子が消えた途端、帝国がなぜか不思議な力によって破滅の道へ進む。周辺国や全世界を巻き込み次々と崩壊していく。  ラスティは“謎の声”により無人島へ飛ばされ定住。これまた不思議な能力【無人島開発】で無人島のレベルをアップ。世界最強の国に変えていく。その噂が広がると世界の国々から同盟要請や援助が殺到するも、もう遅かった。ラスティは、信頼できる仲間を手に入れていたのだ。彼らと共にスローライフを送るのであった。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!

桜井正宗
ファンタジー
 辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。  そんな努力もついに報われる日が。  ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。  日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。  仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。 ※HOTランキング1位ありがとうございます! ※ファンタジー7位ありがとうございます!

とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~

剣伎 竜星
ファンタジー
仕事の修羅場を乗り越えて、徹夜明けもなんのその、年2回ある有○の戦場を駆けた夏。長期休暇を取得し、自宅に引きこもって戦利品を堪能すべく、帰宅の途上で食材を購入して後はただ帰るだけだった。しかし、学生4人組とすれ違ったと思ったら、俺はスマホの電波が届かない中世ヨーロッパと思しき建築物の複雑な幾何学模様の上にいた。学生4人組とともに。やってきた召喚者と思しき王女様達の魔族侵略の話を聞いて、俺は察した。これあかん系異世界勇者召喚だと。しかも、どうやら肝心の勇者は学生4人組みの方で俺は巻き込まれた一般人らしい。【鑑定】や【空間収納】といった鉄板スキルを保有して、とんでもないバグと思えるチートスキルいるが、違うらしい。そして、安定の「元の世界に帰る方法」は不明→絶望的な難易度。勇者系の称号がないとわかると王女達は掌返しをして俺を奴隷扱いするのは必至。1人を除いて学生共も俺を馬鹿にしだしたので俺は迷惑料を(強制的に)もらって早々に国を脱出し、この異世界をチートスキルを駆使して漫遊することにした。※10話前後までスタート地点の王城での話になります。

神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。

猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。 そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。 あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは? そこで彼は思った――もっと欲しい! 欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。 神様とゲームをすることになった悠斗はその結果―― ※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

処理中です...