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第142話 終焉王 - 終わる世界 -

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 激しく燃える音が聞こえた。
 炎が建物や人を容赦なく焼き尽くしている。どうして、こんな事に。


「………………く、そ! くそおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


 やられた。

 俺は、何もかもを失った。


 まさか、仲間全員を【獄麻痺】にされた挙句、『聖地・モードレット』を焼かれ――終いには、アーサーを連れていかれてしまった。


「く。う、動けん……」

 俺は……『右腕』と『両足』を失っていた。

 聖地は炎に包まれ、ほぼ全滅。そんな中で無様に仰向けに倒れていた。


 ……想定外・・・の襲撃があった。


 ……これが、敵の――『本当のやり方』だったということだ。


 あー…チキショウ。順調だと思ってんだがな。

 敵は、これまで真の力をまったく発揮していなかった。
 切り捨てられるところは、呆気なく切り捨て、しかし、いざとなれば想定もしていない猛反撃を仕掛けてくる――そんな決死の覚悟が向こうにはあったのだ。

 いやだが、ちょっと不審ふしんな点もあった。
 情報が洩れてやがる……。誰だ、俺たちの情報を意図的に流しやヤツは……。グースケとパースケ? ……いや、あいつらは違う。確かにあんなゴロツキ共だが、信用には値する。

「がっ……」

 く、痛覚遮断つうかくしゃだんをしているとはいえ、これは……もう死ぬな。


 クソ……どうしてだ。

 どうして――『コンスタンティン』がいきなり現れやがった!!!


 ◆


 【 聖地・モードレッド - 陥落前 】


「さあ、貴様たちはおしまいだ!! 我らが王・コンスタンティン様の終焉の炎に焼かれるがいい!!

 プロキシマが叫ぶ。

 俺は『パニッシャートライデント』を出そうとしたが、


「がはっ――――!」

「レッドスカーフ!」

 なんてこった……レッドスカーフの胸が貫かれてしまっていた。

「ふっざけんな!!」

 俺は、突然現れたそいつに『パニッシャートライデント』を放った。しかし、呆気なく槍を掴まれ、それをこちらへ戻してきやがった。


「うわっ!! 俺の槍を!!」


 あぶね、自分の槍にやられるところだった。
 つか、なんか巨躯きょくな男が……誰がこいつは?

 いつの間にいたんだ。

 視界が悪くて顔がよく見えない。

「くそ、こうなったら聖槍・エクスカリバーで一気にカタをつけて――――」

 あれ……


 俺、右腕が――――


 ナクナッテイタ。


「え……」


 男は、目にも止まらぬ速さで俺の頭を掴み、そのまま地面に、強引に押し込んできた……


「ぐあああああああッ!!!」


 なんだ、何が起きてやがる……!! なぜ【オートスキル】が発動しない・・・・・!! こんなこと今まで一度も無かったのに!!!


『……弱い。弱すぎる。これが我を阻む者の力か。つまらん……実につまらぬ存在だ。貴様はあの神王・アルクトゥルスに認められた男ではなかったのか……』


 この低い声。
 なんだ――『プロキシマ』と『ケンタウリ』じゃない。顔面を地面に激しく押し付けられ、敵の顔が、顔が見えない。くそ、なんて力だ……。顔を上げられん!


「ほう、我の顔がそんなに気になるか――では、これはどうだ」


 不気味に笑う男は、スキルで【世界終焉剣・エクスカイザー】を生成した。……馬鹿な! あ、あの剣は……アヴァロンのグラストンベリィにあった……!


 俺は、その剣の斬撃を受け、両足を失った。


「があぁぁぁあぁぁあぁっ!!!」


 ……幸い、『痛覚遮断』スキルがパッシブで発動している。
 ――ので、痛みはないが、激しい不快感はあった。吐きそうだ……。


 次には、俺はブン投げられ、宿屋に激突した。
 ……あぁ、我ながら、こりゃひでえや。


「…………ぁ、ダメージが。これ以上は……まずいな」


「ほう。まだ息があるか」
「……あんた、コンスタンティンか」

「そうとも。我自らが戦場におもむく、想定外の出来事であったろう」
「いや、そうでもないさ……ただ、このタイミングとは思わなかったけどな……。で、俺を殺すのか。爺さん」

 コンスタンティンは老体だった。

 随分と老けてはいるが、体は大きく、白髭を蓄えていた。……なんだ、こんなクソジジイだったとはな。体鍛えすぎだろ、筋肉ムキムキだな。


「殺す? くだらぬ。
 ……いいか、雌雄はとっくに決した。――とあれば、この先は我の【真世界】が必然的に訪れる。それを貴様には見届けてもらう。その道化のような愚かしい姿でな……フハハハハハ、ハハハハッハアハッハハハハハハハハハハハハ!!!!!!」


「……やめておけ。最後に笑うのは俺だぜ……」


「なんだと? 貴様、まだそのような戯言を。どこからそのような自信が湧いてくるのか知らんが、さっさと諦め、この絶望を受け入れるがよい。貴様は敗北したのだ。
 そして、もう間もなく全聖地は滅ぶ。滅び、そして――神王などという何の役にも立たたん幻、偶像は抹消される。人々は神ではなく、この我を崇め奉るのだ。それが【真世界】なのだ!! どうして分からぬ!!!」


「わかんねーよ、ボケ……ぐあああああああああああああああ!!」


 腹を思いっきり踏まれた。

 …………く、体力はレッドゾーンに近付いている。やべえな……。

 更に、俺はボコボコに徹底的に殴られた。


「ご、ごふぉ…………」


「愚かしい。これでも理解しようとせぬか……。全ては終焉へと向かっておる。この勝負は我、コンスタンティンの勝利に終わったのだ。次の時代を見届けたくば、素直に受け入れろ。さすれば、命は助かろう」


「ふへへ…………。わからねぇな」


「なにを! なにを! なにを! なにを! なにを!! なにをほざいているんだ!! 認めろ! 認めろ! 認めろ! 我を認め、あがめ、たてまつれ!! 神は死ぬ! 神は死んだ! 神は死ぬ! 神は死んだ! 我こそが世界を統べるに相応しい!」

「ごふぁぁあぁ!!」

 敵の拳を顔面に受けまくる俺。
 ……た、耐えてやる。今は耐えるだけでいい!!

 HP残り1でもいい……体力ギリギリまで持たせて、それで!!


 ついにコンスタンティンは大きく振りかぶり――


「がああああああああああああああああ!」


 俺は外に吹き飛ばされ、倒れた。


 ――――それから、俺は気を失った。


 ◆


 ……ああ、終わった。

 確かに、この戦い・・・・は終わったさ。


 けどな……諦めたらそこで終了なんだよ。


 俺は、地面に倒れている状態で偶然、メサイアを発見した。――ああ、敵のヤツ等、アーサーだけを連れ去ったらしい。もう気配を感じない。

 俺の仲間は放置ってわけか。

 なるほど、どのみち『聖地・モードレッド』は焼かれるから、ほとんど放置ってことか。

 だから……受けているのは【獄麻痺】だけか。


「………………っ、メ……サイア」


 だめだ。反応はない。
 【獄麻痺】が強力すぎて気絶しているようだ。


 俺は最後の力を振り絞り――左腕を使って匍匐前進ほふくぜんしんしていく。


「………………っ」


 あと少し。あともうちょっと。


 ――ああ、ちょっと楽しみすぎたんだ。これはその罰か。


 チクショウ、意識が……飛びそうだ。


 ……間に合え……体力がゼロになる前に……生命いのちが尽きる前に……


 メサイアのあの――【女神のネックレス】に手が届けば――!!


 こんな時に、アイツの笑顔が脳裏に浮かびあがって来た。……まったく、勘弁してくれ。これじゃあ走馬灯じゃないか。


「――――ァァァ!!!!!」


 あと少し、あとほんの僅かでネックレスに手が届くっていうのに、なぜか遠い。ものすごく遠い。

 なにか、せめて長い棒があれば………………あ。


 ウソだろ……。


 さっき俺が投げた『パニッシャートライデント』……ははは……なんでこんなところに落ちてんだよ。こりゃ笑うしかないだろう。


 不幸中の幸い、左腕だけでもあって――――良かったぜ。


 俺は、左腕で『パニッシャートライデント』を使い、メサイアの首にあるネックレスを引っ掛け……取った。
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