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第130話 モンスターレースの結果
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勝負の世界は甘くなかった。
一番人気『スプリンターラビット』が一着。
二番人気だった『エンシェントタートル』は最下位に終わった。
「くそっ……固かったか」
しかも、『スプリンターラビット』は開始0.5秒で一着ゴールというバケモノだった。あんなの反則だろ!! くそが!!
「ちきしょーーーーーー!!!」
おかげで……全財産の『100万プル』を失った。
オワッタ……。
「ど、どうするの、サトル!」
「メサイア……。金貸してくれ」
「あるわけないでしょう……。あってもこれだけよ」
チャリン……と、俺の掌の上で虚しく音が鳴った。
たったの『130プル』しかない。ジュースかよ……。
「ベル、お前は……!」
熱に魘されているような顔をして……指で輪っかを作るベル。あー…あの意味は『0』ってことか。だめだこりゃ。
最後の頼みの綱は……リース!
「リース……。お金は…………」
「……えっとぉ、その……あたしは、お父さんに預けてしまっているので……」
「全部!?」
「はい……」
そうか、だからお金がないのか!
この前のアヴァロンの時に置いていったようだ。だめだー!
「万事休す……」
◆
お金がない以上、もうどうしようもない。
一度、ホテルに戻り『イゾルデ』に再交渉するしか。
超高級ホテル『タントリス』に戻ろうかと思ったが――レース参加者の話し声が聞こえた。俺はその会話を聞き逃さなかった。
『なんでもよ~。あの超高級ホテル『タントリス』がこのモンスターレースを主催をしているらしいぜ。だからよ~、あのオーナーが不正しているじゃないかなって、オラは思うんだよ~』
――!
不正……まさか、そんなまさか!?
でもまてよ……。
『スプリンターラビット』は開始0.5秒で一着ゴール……。
いくらなんでも違和感バリバリの速さ。
普通のモンスターの移動速度ではない。つまり……スキルによる不正があった!!
『イゾルデ』――あの女!!
「おい、みんな……大至急でホテルに戻るぞ!!」
「え? どうしたのサトル」「サトルさん?」「理くんどうしたの?」
みんな状況が呑み込めていないようだが、俺は真相が見えてきていた。……もしかしたら、これは最初から『罠』だったのではないかと――。
◆
【 ホテル・タントリス 】
「――私が不正を? はあ、どのような根拠があって仰るのでしょうか」
イゾルデは白々しく惚けた。
「ふっざけんな! あのモンスターレース……このホテルが主催しているそうじゃないか。俺たちがあのレースに参加すると分かっていて、不正をしたんじゃないのか!」
「そ、そうなの!?」
メサイアが驚く。
「はあ、確かにあのモンスターレースは当ホテルが主催しております――ですが、不正などと……そのような言い掛かりは止めて戴きたい。それより、500万プルはどうしたのですか。支払えないのなら……そうですね、担保としてお預かりしている聖女様は我がホテル――いえ、聖地・トリスタンの聖女になって戴きます」
なん…………だと……?
「なに言ってやがる! 担保は『エクストラチケット』だろうが! それで充分だろう」
「いえ、私は最初から聖女様を担保に指定しておりました。それが何か?」
クイッと眼鏡を上げるイゾルデ。
こ、こいつ……!
「フォル、こっち来い……ホテルを出るぞ!」
「そうはいきません。もし聖女様を連れ出すのであれば、『トリスタン』様が黙っておりません。あのお方は偉大な十聖騎士ですから。それに、他の十聖騎士も賛同し、あなた方を容赦なく討伐するでしょうね」
「……くっ」
十聖騎士――さすがに『聖者』相手は分が悪すぎる。
それが複数ともなると余計に。
「……兄様。わ、わたくし、その…………兄様の為でしたら」
手が震えている。
バカ…………フォル、お前なに無理してんだよ。
大粒の涙なんかボロボロ流しやがって。
お前が泣く必要なんかない。
イゾルデ……! あの魔性の女が……俺たちを騙しやがったんだ!!
許せん……。
絶対に許せん!!!
「イゾルデ…………」
「…………もう用件は済みましたね。聖女様はこちらで大切にさせて戴きますので。ホテル代は気になさらず。……さあ、出口はあちらですよ、お客様」
「…………兄様」
フォルはずっと泣き続けていた。
俺は、そんなお前を見たくない。だから……!
「フォル…………俺は……お前を絶対に取り返す…………! 待っていろ……必ずだ。必ず助けてやる。だから、今は泣くな!! 涙はその時が来るまで取っておけ!! 俺を信じろ!!!」
「…………はい。分かりました……わたくし、兄様を信じております」
……なんとか感情にブレーキを掛けたようで、フォルは持ち直した。
「イゾルデ……! あえて言っておくぞ……」
俺は、イゾルデをぶち殺す勢いで睨んだ。
「おっさんを舐めんなよ」
「…………」
イゾルデもまた、俺を鋭い目つきで睨み返してくる。
……その瞬間だった。
ドンと慌ただしく扉が開くと、そこにはホテルのスタッフが。
「大変です、オーナー!!! 聖地・モードレッドから……ごふぁぁ……!?」
スタッフが突然、血を吐き、倒れた。
「なっ…………」
みんな衝撃の光景に固まる。
なんだ……なにが起きやがった?
一番人気『スプリンターラビット』が一着。
二番人気だった『エンシェントタートル』は最下位に終わった。
「くそっ……固かったか」
しかも、『スプリンターラビット』は開始0.5秒で一着ゴールというバケモノだった。あんなの反則だろ!! くそが!!
「ちきしょーーーーーー!!!」
おかげで……全財産の『100万プル』を失った。
オワッタ……。
「ど、どうするの、サトル!」
「メサイア……。金貸してくれ」
「あるわけないでしょう……。あってもこれだけよ」
チャリン……と、俺の掌の上で虚しく音が鳴った。
たったの『130プル』しかない。ジュースかよ……。
「ベル、お前は……!」
熱に魘されているような顔をして……指で輪っかを作るベル。あー…あの意味は『0』ってことか。だめだこりゃ。
最後の頼みの綱は……リース!
「リース……。お金は…………」
「……えっとぉ、その……あたしは、お父さんに預けてしまっているので……」
「全部!?」
「はい……」
そうか、だからお金がないのか!
この前のアヴァロンの時に置いていったようだ。だめだー!
「万事休す……」
◆
お金がない以上、もうどうしようもない。
一度、ホテルに戻り『イゾルデ』に再交渉するしか。
超高級ホテル『タントリス』に戻ろうかと思ったが――レース参加者の話し声が聞こえた。俺はその会話を聞き逃さなかった。
『なんでもよ~。あの超高級ホテル『タントリス』がこのモンスターレースを主催をしているらしいぜ。だからよ~、あのオーナーが不正しているじゃないかなって、オラは思うんだよ~』
――!
不正……まさか、そんなまさか!?
でもまてよ……。
『スプリンターラビット』は開始0.5秒で一着ゴール……。
いくらなんでも違和感バリバリの速さ。
普通のモンスターの移動速度ではない。つまり……スキルによる不正があった!!
『イゾルデ』――あの女!!
「おい、みんな……大至急でホテルに戻るぞ!!」
「え? どうしたのサトル」「サトルさん?」「理くんどうしたの?」
みんな状況が呑み込めていないようだが、俺は真相が見えてきていた。……もしかしたら、これは最初から『罠』だったのではないかと――。
◆
【 ホテル・タントリス 】
「――私が不正を? はあ、どのような根拠があって仰るのでしょうか」
イゾルデは白々しく惚けた。
「ふっざけんな! あのモンスターレース……このホテルが主催しているそうじゃないか。俺たちがあのレースに参加すると分かっていて、不正をしたんじゃないのか!」
「そ、そうなの!?」
メサイアが驚く。
「はあ、確かにあのモンスターレースは当ホテルが主催しております――ですが、不正などと……そのような言い掛かりは止めて戴きたい。それより、500万プルはどうしたのですか。支払えないのなら……そうですね、担保としてお預かりしている聖女様は我がホテル――いえ、聖地・トリスタンの聖女になって戴きます」
なん…………だと……?
「なに言ってやがる! 担保は『エクストラチケット』だろうが! それで充分だろう」
「いえ、私は最初から聖女様を担保に指定しておりました。それが何か?」
クイッと眼鏡を上げるイゾルデ。
こ、こいつ……!
「フォル、こっち来い……ホテルを出るぞ!」
「そうはいきません。もし聖女様を連れ出すのであれば、『トリスタン』様が黙っておりません。あのお方は偉大な十聖騎士ですから。それに、他の十聖騎士も賛同し、あなた方を容赦なく討伐するでしょうね」
「……くっ」
十聖騎士――さすがに『聖者』相手は分が悪すぎる。
それが複数ともなると余計に。
「……兄様。わ、わたくし、その…………兄様の為でしたら」
手が震えている。
バカ…………フォル、お前なに無理してんだよ。
大粒の涙なんかボロボロ流しやがって。
お前が泣く必要なんかない。
イゾルデ……! あの魔性の女が……俺たちを騙しやがったんだ!!
許せん……。
絶対に許せん!!!
「イゾルデ…………」
「…………もう用件は済みましたね。聖女様はこちらで大切にさせて戴きますので。ホテル代は気になさらず。……さあ、出口はあちらですよ、お客様」
「…………兄様」
フォルはずっと泣き続けていた。
俺は、そんなお前を見たくない。だから……!
「フォル…………俺は……お前を絶対に取り返す…………! 待っていろ……必ずだ。必ず助けてやる。だから、今は泣くな!! 涙はその時が来るまで取っておけ!! 俺を信じろ!!!」
「…………はい。分かりました……わたくし、兄様を信じております」
……なんとか感情にブレーキを掛けたようで、フォルは持ち直した。
「イゾルデ……! あえて言っておくぞ……」
俺は、イゾルデをぶち殺す勢いで睨んだ。
「おっさんを舐めんなよ」
「…………」
イゾルデもまた、俺を鋭い目つきで睨み返してくる。
……その瞬間だった。
ドンと慌ただしく扉が開くと、そこにはホテルのスタッフが。
「大変です、オーナー!!! 聖地・モードレッドから……ごふぁぁ……!?」
スタッフが突然、血を吐き、倒れた。
「なっ…………」
みんな衝撃の光景に固まる。
なんだ……なにが起きやがった?
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