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第126話 聖女はおっさんを癒したい

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 俺たちは『聖地・トリスタン』に向かっていた――はずだった。

 その道中にある【ブロセリアンド】という魔法の森に入ったとき、俺たちは何故かバラバラになってしまい、孤立してしまった。

 なんでやねん。

「なんてこった……。メサイアもベルもリースもどこへ行ってしまったんだ……」
「そうですよ。わたくしと兄様の二人きりだなんて……。何かの手違いで、わたくしが兄様襲っちゃいます」

 そうそう、俺がフォルを、って……

「お前が襲うのかよ!」
「あたりまえじゃないですか!」
「なんでそんな真剣な顔なんだ。こえーよ!!」

 さすがヘンタイ聖女。
 まずいな、このままでは俺の身に危険が……!


 つっても、今は不用意に動くことが出来ず……。
 フォルに膝枕ひざまくらしてもらっているんだけどな。


「兄様、お加減かげん如何いかがですか」

 フォルは俺の頭を撫でてくる。まるで聖母のように。

「……ん。最高」
「……それでは誓いのキスを」
「それは遠慮しておく」
「つれないのですね。けれど、兄様。モンスターに取り囲まれてしまいました」


「なんだって!?」


 よ~~く周囲を見渡すと、『ギガウッドゴーレム』やら『ポイズンゴブリン』、『ジャイアントコボルトアーチャー』までいた。

 なんだ、『ダーティーオーク』もいるじゃないか。

「兄様のお手をわずらわすまでもありません。わたくしが……」
「んや、大丈夫だ。俺には【オートスキル】があるからな」

 俺はフォルに膝枕されたまま、戦闘を開始した。

 モンスター数十体は一斉に襲ってくるが、オートスキル『ヘルリパルサーレイ』が発動。巨大レーザーが一気にモンスターを殲滅した。


 蒸発していくモンスターから、ドロップアイテムがボロボロ出る。


「あら、この森のモンスターのドロップ率かなり良いようですね」

「みたいだな。レアアイテムばかりじゃん。アイテム一括収集スキル【グリード】でっと……よし、一気にレアゲットだな」


 さて、戦闘も終わったし、膝枕続行。

 フォルの膝は寝心地よすぎてな~。天国。

 目蓋を閉じ、風を感じようとした時だった。


 ぐ~っとフォルのお腹が鳴った。


「なんだ、腹減ってんのか」
「……あ、あの。これはその、……はい。朝から何も口にしていないので」
「なんだ、食ってなかったのか。どうしたんだよ」
「その、ダイエットを」

「ダイエット……? いやいや。する必要ないだろ……こんなパーフェクトすぎるウエストしてんのによ」

 俺は、フォルのお腹を両手で掴んだ。
 なんだ、ぜんぜんスリムじゃないか。触り心地も感動的だ。

「ひゃっ……! く、くすぐったいですよぉ……」
「おっと、すまん。贅肉もないし、気にする必要ないだろう」


「いやです! もっと聖女らしく女を磨いて、兄様に振り向いてもらいたいので!」


「もう十分振り向いてるよ」
「……わかってます♡」


 なんてヤリトリしてると――また何か現れた。
 なんだこの森は、やたらアクティブモンスターが多いな……って、あれ。


『ゲヘヘヘ……。こんな森の中でイチャついてるなんてよォ……。俺たちに襲ってくださいって言っているようなモンだよなぁ~』


 なんか柄の悪い連中が六人現れた。
 コンスタンティン軍ではないな――野盗か。


 ……ったく、相手するの面倒だなぁ。

「おい、そこの! 女に膝枕されてるてめーだよてめー!」

「あ?」

「痛い目に合いたくないだろう~? その女聖職者プリーストを俺たちに寄越せ。素直に渡したら、あとは俺たちが楽しんでやるからよォ~ハハハ!!」


 あー…もう静かに寝かせてくれよ!

 ぶっ飛ばすか……。
 いや、その必要はなかった。


 森の奥から出現した『ダーティーオークレディ』約30体が雪崩れ込んできた。


「んぉ……すげえ数」
「兄様、あれ……」
「ああ、野盗たちを狙っているな……」


「え?」
 野盗たちが何事かと後ろを見ると、すでに『ダーティーオークレディ』が迫っていた。


「ちょ、うああああああああああ!! なんだこのバケモノ!!!」


 野盗どもは、ダーティーオークレディに追いかけられて行った。


「うあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」


 ヤツ等は勝手に去った。
 俺とフォルの邪魔をした天罰だな、ざまぁ。


「しっかし……あの『ダーティーオークレディ』って確か、人間を襲っては子孫を増やしていたっけな……こえー」


 捕らえられたら一巻の終わり。
 もう二度と逃げられないという。

 俺は丁度その話を、メサイアに聞かされていた。
 まさかこの森に生息していたとはね。まあ、助かったけど。
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