上 下
125 / 440

第125話 レアガチャが引けるエクストラチケット

しおりを挟む
 久々の我が家。
 最近【アーク】と名付けた俺とメサイアの共同建築した一軒家。

 俺の【運搬スキル】で、家をミニチュアサイズにして、持ち運んでいた。それが今では、リースの故郷である『アヴァロン』のすぐそばに建っていた。


 ――さて、お風呂っ……とお!?


 中に入るとメサイアが風呂にかっていた。


「ノックくらいしなさいよ……バカ」

 あれ、怒ってはいないな。
 てっきり、ぶっ飛ばされるかと思ったけど――ああ、フォルもいたのか。


 ほーん。どれ。俺はフォルは後ろに立ち、肩に触れた。


「ひゃぁ~~~!? あ、兄様!?」

 俺はさらに、うなじに息を吹きかけてみた。


「ふぁぁん……っ」


 そんな甘ったるい声を出すフォル。
 それに伴い、メサイアの目つきが鬼へと変化していた。

 おーっと、これ以上はやめておくか。

「あ……兄様。わたくし、頭を洗っているので……その、そういう高度なプレイはあとで……。姉様もいらっしゃるので……」

「あとでな。……そうにらむな、メサイア」
「睨んでないわよ。それより、サトル。そのままじゃ風邪ひくでしょ。こっち来なさい」

 手招きするメサイア。

 へ……まじ?


「なんだ、隣いいのか。遠慮なくいくぞ?」
「す、好きにすれば……」


「――そ、そか。じゃ、ご好意に甘えるとするか」


 俺は、メサイアの隣に入った……。


「…………」「…………」


 し~~~ん。

 なにを話せばいい?


 フォルの髪の洗う音だけが響く――。

 うーむ……。

 あ、そうだ。


「メサイア……。そろそろ、ベルと同じように『シア』って呼んでいいか? 短い方が呼びやすいし」


「ダメ。読んだらコロス」
「――――はい」


 俺は、メサイアを愛称で呼んではダメのようだ。


 なんでや!


「あ……あんたには、フルネームで呼んで欲しいの!」

 顔を赤くさせたメサイアが、肩をくっつけてくる。

「――――うお」


 どくんどくん……と、俺の鼓動が高鳴る。


 やべ……。かわいい……。


 そうか……そうだな。うん……。


「ひゃほ~~~~~~~~~~~~い!!」



 どぼーーーーん!!

 ――と、フォルが割って入って来た。狭い!

 いつの間に髪を洗い終えたんだか。


「つーか、おい!! フォル!! どこ触って……バカ!! 近すぎだ! うあ……おまっ! 抱きついてくるな!! うああああああああああああ――――――!!」


 俺は、ヘンタイ聖女の餌食となった。


 ◆


 早朝。なんとなく散歩したくなった俺は、ひとり出歩いていた。
 家から少し歩くと、ヒトの気配がふたつ。

 ……ん、アレは?


「……へ、へぇ、そうなんだ。面白そうね」


 ……あの声はもしかして。

「え……メサイア」

 俺はなんとなく木のカゲに隠れた。

 ウソ……こんな朝からメサイアが男と立ち話?
 しかも、なんかちょっと嫌そうな顔しているな、メサイア。


 俺は、聞き耳を立てる。


「――それでさ、『聖地・トリスタン』に行けば、たっくさん楽しいこと教えてあげるからさ~…」

 と、男はメサイアの腰に触れやがった。


 ヤロー、気安く触れやがって……メサイアに触れていいのは、俺だけだ!! ……コロス!!


 ブチギレ登場してやろうかと思ったが――


『奥義!! 覇王龍星拳――!!』


 男はフォルの奥義を食らい、


「ぶぅぇええええぇええええ!!」


 ぶっ飛ばされ、俺の横ギリギリをかすめて行った。


「ぶっね……! でも、ナイスだフォル!」


 俺は、もうしばらく木のカゲから様子を伺う。


「姉様、大丈夫です? ヘンな男に言い寄られていたようですけれど……」

「うん……。私ってホラ、押しに弱いから……助けてくれてありがと、フォル」
「いえいえ、おケガがなくて良かったです。姉様の身に万一があったら、兄様が暴走しますからね」


 ――フォルのヤツめ……まあ、その通りだけどな。


 ◆


 俺は、家に先回りして、リビングでくつろいでいた。
 すると、メサイアとフォルが帰ってきた。


「ただいまー」「ただいまです~」

「なんだ、ふたりとも姿が見えないと思ったら、出かけていたのか」

「え、ええ……ちょっとね。サトルその……。気を悪くしないでほしいんだけど、さっき変な男に絡まれたの。その時、チケットを貰ったんだけど、私はいらないって断った。突っ返そうと思ったら、フォルが男をぶっ飛ばしたから……」

 だから、チケットを持っていると。

「そうか、ケガがなくて良かったよ」

「うん、いきなり腰を触られるし……怖かった」

 と、メサイアは珍しく震えていた。
 ふぅむ、たまに乙女なところあるよな。


「安心しろ。次にそいつが現れたら地獄を見せてやる……フォルが」

「そうです、兄様ならあの男を……って、わたくし!? なぜ、他力本願なんですか、兄様! そこはカッコよく俺が守ってやる~! ってところでしょうに」


「俺のモットーは、一人はみんなのために、みんなは一人のためにだからな。だから、他力本願なんかじゃない。俺は最後に美味しいところを戴きたいんでね」


「うっ……。なんかズルイですね」
「おっさんはズルイくらいが丁度いいんだよ」

 そこで、なぜかフォルは瞳を輝かせると――

「わたくし、そんな兄様を尊敬しています。いえ、敬愛しております。お慕い申しております♡ ですから、結婚してくだいまし~♡」

「一億と二千年後くらいにな」

 俺は、フォルを無視して、メサイアに向き直る。


「そや、チケットだったか。……ふぅん? 【エクストラチケット】?」


「そうなの。これは、聖地・トリスタンにある『ナイツ・オブ・ラウンドテーブル』という今話題のレジェンドレアアイテムを入手できるガチャがあるらしいの。
 そのチケットは、レア以上確定みたいよ。引きに行ってみる?」


 メサイアは、俺に判断を委ねた。
 俺が決めろってか……てか、『聖地・トリスタン』ってどこだ……。また面倒なことにならなきゃいいが。が、コンスタンティン軍の動きも気になるところだ。

 情報収集のついでに行ってみるのもありか。


 何にしても、レジェンドレアっていうのは気になるよな。
 最近、お財布事情もよくないし、うん。金儲けにもなるかもな。


 よし、ガチャしに行ってみるか!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

[鑑定]スキルしかない俺を追放したのはいいが、貴様らにはもう関わるのはイヤだから、さがさないでくれ!

どら焼き
ファンタジー
ついに!第5章突入! 舐めた奴らに、真実が牙を剥く! 何も説明無く、いきなり異世界転移!らしいのだが、この王冠つけたオッサン何を言っているのだ? しかも、ステータスが文字化けしていて、スキルも「鑑定??」だけって酷くない? 訳のわからない言葉?を発声している王女?と、勇者らしい同級生達がオレを城から捨てやがったので、 なんとか、苦労して宿代とパン代を稼ぐ主人公カザト! そして…わかってくる、この異世界の異常性。 出会いを重ねて、なんとか元の世界に戻る方法を切り開いて行く物語。 主人公の直接復讐する要素は、あまりありません。 相手方の、あまりにも酷い自堕落さから出てくる、ざまぁ要素は、少しづつ出てくる予定です。 ハーレム要素は、不明とします。 復讐での強制ハーレム要素は、無しの予定です。 追記  2023/07/21 表紙絵を戦闘モードになったあるヤツの参考絵にしました。 8月近くでなにが、変形するのかわかる予定です。 2024/02/23 アルファポリスオンリーを解除しました。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

処理中です...