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第117話 アヴァロン救済③ - 消え去った血の月 -
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血の滲んだ赤い月は消え去った。
本来の姿を取り戻したはず。あの悪夢はもう二度と起きないだろう。
――次の日。
俺は、俺たちは新たなる日を迎えた……らしい。
らしい、というのはまだ確信がないからだ。
【 アヴァロン - リース邸 】
リースの家はそりゃ~デカイ。広い。
パロの家もそれは豪邸だったが、こちらはその上をいっていた。
ひとりひと部屋。各々の部屋を振り分けられているし、豪華なホテルかと思うほどに快適だ。ずっと住み着いていたいほどだ。
俺も自分の部屋を貸してもらい、今はひとりで――いや、リースと共にベッドの上で過ごしていた。
「おはよ、リース」
「おはようございます。サトルさん。今日はとても気持ちの良い朝ですね♪」
「だな。……ところで俺たち、エルフの郷についたばかりだっけ?」
不安があったので、俺はリースにカマをかけてみた。
すると……
「なにをおっしゃっているのですか~。サトルさん、昨日はアヴァロンを救ったじゃありませんかぁ~」
「ほっ……。そうだよな、安心した」
俺は、傍で笑顔を向けてくれているリースの頭を撫でた。
リースは嬉しそうに目を細め――自身の下着を外そうとした。
「リース!? 朝から……そりゃ魅力的だけれど……」
「サトルさん……あたしではお嫌ですか?」
まるで『ぴえん』と言わんばかりの表情に……俺は……
「リース!!」
「はいっ♡」
もう興奮を抑えきれん!
「リース! 俺はキミの全部が欲しい」
「いいですよ。あたしのはじめて……サトルさんに捧げます」
イヤッホ~~~~~~~~~~ウ!!
俺は心の底から叫んだ。
お義父さんに交際も認めてもらったし、よ~し、俺がんばっちゃ――――…え?
真冬のような冷たい視線が俺に向けられていた。
「あー…メサイア。お前、いつの間に」
「あんた、ほぼ裸のリースと何やっていたのよ」
「小づくり」
「ふっざけんな!!」
アイアンクローをををををぉぉおおおっ!?
「ぎゃぁぁぁあああああああ、やめろ!!」
「……さあ、行くわよ。支度しなさい」
「……へ? 行くってどこへ?」
「我が家よ。アヴァロンは救ったし、また聖地巡礼に戻るの」
「随分と急ぐな。つーか、せっかくアヴァロンにいるんだ。もう一週間くらいいてもバチは当たらんだろう」
「だめよ。私たちがアヴァロンに留まれば、コンスタンティン軍が攻めてきちゃうでしょ。そうなる前に出ていくの」
――メサイアは正しい。
何一つ間違っちゃいない。でも俺は。
「リース、メサイアが頭固い。どうにかしてくれ」
「はい、分かりました!
メサイアさん。こう考えては如何でしょう。昨晩、コンスタンティン軍を見事撃退したサトルさんが一緒なんです。ですから、また襲われればみんなの力を合わせて何とかしましょう。それに、聖剣の話もありましたよね? このアヴァロンに眠っているんですよ。お宝探ししなくていいんですか?」
「……リ、リース。あんた、珍しく饒舌ね……。分かった。分かったってば……そこまで言われたら仕方ないわね。もう少し、アヴァロンにいましょう」
ほう、メサイアが折れた。
へぇ……あの頑固者のメサイアがね。
……あとで美味しいモン食わせてやるか。
――ということで、俺たちはもうしばらく、エルフの郷・アヴァロンに滞在する事となった。
◆
【 聖地・コンスタンティン - 王の間 】
………………。
「――で、ありまして、三百ほどの兵と『クローズド』様と『アルデバラン』様の両名は行方不明であります。おそらく、アヴァロンのエルフたちによって返り討ちにあったのではなかと推測致します」
『ほう。では、『聖剣・エクスカリバー』は破壊できなかったと……お主はそう申すのだな』
王の怒りに、臣下は恐れ戦く。
なんという威圧、殺気。少しでも王の琴線に触れれば、たちまち処刑される。場は、そんな空気に包まれていた。
しかし既に報告をした臣下は、体の崩壊を起こしていた。
「ひィぃぃぃぃぃぃいっぃいいい!!! コ、コンスタンティン様、どうか! どうかお慈悲をおぉおおぉぉぉぉ~~~~~~~…!!!」
臣下は一瞬で塵となり、絶命した。
『我が軍に無能は不要。
……よいか皆の者、相応の働きをするのだ。でなければ、あの愚者同様に粛清あるのみ……。使えぬ者は切り捨てる、それが我が理』
「…………」
王に絶対忠誠を誓う二人の騎士が跪く。
「我々にお任せください。王の期待には必ず応えましょう」
「プロキシマ! キミだけズルイぞ! 自分も王のお望みとあらば、如何様にも」
『お前たち二人には特に期待しておる。
……だが、アヴァロンは『聖者』が守護しているであろう。ならば、こちらも目には目を、聖者には聖者だ。お前たちは『聖地・モードレッド』へ向かうのだ。そこに、我がコンスタンティンの力になってくれる『聖者』がおる。二人ともそこへ向かうがよい』
「「はっ……!」」
この日――世界は再び、混沌へ向かおうとしていた。
本来の姿を取り戻したはず。あの悪夢はもう二度と起きないだろう。
――次の日。
俺は、俺たちは新たなる日を迎えた……らしい。
らしい、というのはまだ確信がないからだ。
【 アヴァロン - リース邸 】
リースの家はそりゃ~デカイ。広い。
パロの家もそれは豪邸だったが、こちらはその上をいっていた。
ひとりひと部屋。各々の部屋を振り分けられているし、豪華なホテルかと思うほどに快適だ。ずっと住み着いていたいほどだ。
俺も自分の部屋を貸してもらい、今はひとりで――いや、リースと共にベッドの上で過ごしていた。
「おはよ、リース」
「おはようございます。サトルさん。今日はとても気持ちの良い朝ですね♪」
「だな。……ところで俺たち、エルフの郷についたばかりだっけ?」
不安があったので、俺はリースにカマをかけてみた。
すると……
「なにをおっしゃっているのですか~。サトルさん、昨日はアヴァロンを救ったじゃありませんかぁ~」
「ほっ……。そうだよな、安心した」
俺は、傍で笑顔を向けてくれているリースの頭を撫でた。
リースは嬉しそうに目を細め――自身の下着を外そうとした。
「リース!? 朝から……そりゃ魅力的だけれど……」
「サトルさん……あたしではお嫌ですか?」
まるで『ぴえん』と言わんばかりの表情に……俺は……
「リース!!」
「はいっ♡」
もう興奮を抑えきれん!
「リース! 俺はキミの全部が欲しい」
「いいですよ。あたしのはじめて……サトルさんに捧げます」
イヤッホ~~~~~~~~~~ウ!!
俺は心の底から叫んだ。
お義父さんに交際も認めてもらったし、よ~し、俺がんばっちゃ――――…え?
真冬のような冷たい視線が俺に向けられていた。
「あー…メサイア。お前、いつの間に」
「あんた、ほぼ裸のリースと何やっていたのよ」
「小づくり」
「ふっざけんな!!」
アイアンクローをををををぉぉおおおっ!?
「ぎゃぁぁぁあああああああ、やめろ!!」
「……さあ、行くわよ。支度しなさい」
「……へ? 行くってどこへ?」
「我が家よ。アヴァロンは救ったし、また聖地巡礼に戻るの」
「随分と急ぐな。つーか、せっかくアヴァロンにいるんだ。もう一週間くらいいてもバチは当たらんだろう」
「だめよ。私たちがアヴァロンに留まれば、コンスタンティン軍が攻めてきちゃうでしょ。そうなる前に出ていくの」
――メサイアは正しい。
何一つ間違っちゃいない。でも俺は。
「リース、メサイアが頭固い。どうにかしてくれ」
「はい、分かりました!
メサイアさん。こう考えては如何でしょう。昨晩、コンスタンティン軍を見事撃退したサトルさんが一緒なんです。ですから、また襲われればみんなの力を合わせて何とかしましょう。それに、聖剣の話もありましたよね? このアヴァロンに眠っているんですよ。お宝探ししなくていいんですか?」
「……リ、リース。あんた、珍しく饒舌ね……。分かった。分かったってば……そこまで言われたら仕方ないわね。もう少し、アヴァロンにいましょう」
ほう、メサイアが折れた。
へぇ……あの頑固者のメサイアがね。
……あとで美味しいモン食わせてやるか。
――ということで、俺たちはもうしばらく、エルフの郷・アヴァロンに滞在する事となった。
◆
【 聖地・コンスタンティン - 王の間 】
………………。
「――で、ありまして、三百ほどの兵と『クローズド』様と『アルデバラン』様の両名は行方不明であります。おそらく、アヴァロンのエルフたちによって返り討ちにあったのではなかと推測致します」
『ほう。では、『聖剣・エクスカリバー』は破壊できなかったと……お主はそう申すのだな』
王の怒りに、臣下は恐れ戦く。
なんという威圧、殺気。少しでも王の琴線に触れれば、たちまち処刑される。場は、そんな空気に包まれていた。
しかし既に報告をした臣下は、体の崩壊を起こしていた。
「ひィぃぃぃぃぃぃいっぃいいい!!! コ、コンスタンティン様、どうか! どうかお慈悲をおぉおおぉぉぉぉ~~~~~~~…!!!」
臣下は一瞬で塵となり、絶命した。
『我が軍に無能は不要。
……よいか皆の者、相応の働きをするのだ。でなければ、あの愚者同様に粛清あるのみ……。使えぬ者は切り捨てる、それが我が理』
「…………」
王に絶対忠誠を誓う二人の騎士が跪く。
「我々にお任せください。王の期待には必ず応えましょう」
「プロキシマ! キミだけズルイぞ! 自分も王のお望みとあらば、如何様にも」
『お前たち二人には特に期待しておる。
……だが、アヴァロンは『聖者』が守護しているであろう。ならば、こちらも目には目を、聖者には聖者だ。お前たちは『聖地・モードレッド』へ向かうのだ。そこに、我がコンスタンティンの力になってくれる『聖者』がおる。二人ともそこへ向かうがよい』
「「はっ……!」」
この日――世界は再び、混沌へ向かおうとしていた。
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