111 / 430
第111話 運命の女神
しおりを挟む
――ある日。
俺は、メサイアを呼び出した。
なぜか呼び出したくてたまらなかった。
なんでだろう? 分からん。
「メサイア、俺はどうかしちまったかもしれん」
「そうね、否定はしないわ。あんた、どこかおかしい」
「おい。そこは普通、心配するところだろうが!」
「正気とは思えないわね。もちろん、私もね……」
「なんだ、お前もどこか変なのか? また死神に戻りつつあるとかは勘弁してくれよ」
「それはないわ。ただ……」
「ただ……?」
メサイアはどこか遠くを見つめ、腕を組むと話を続けた。
「同じ時間をずっと過ごしているような……。最近、そんな違和感とかデジャヴとか感じるのね」
「マジか……お前もか。俺もだ。俺は、アレが夢ではないかと思っているが。けど、とてもリアルな夢でな。アヴァロンが必ず滅びるんだ。それも毎度、炎に包まれて――それで――」
「……滅び」
そう短くメサイアは反応を示した。
それから、俺を真っ直ぐ見た。かなり真剣に。
「私は違う」
「へ? 違うとは?」
「このアヴァロンを救う夢を見るの。でも、救うのは私じゃない。あんたよ、サトル。あんたが皆を導いていたの」
「……俺? つってもな、現状のアヴァロンで何が起こっているのかさえ分からんぞ。しかも、それは夢。朧げな、漠然としたものだぞ。そんな曖昧なものを信じていいものか……」
「確かなことは分からない。けどね、これだけは分かるの。私自身にも何か起きているような気がする……。サトル、私、こわい……」
――と、メサイアは、いつもの強気とは一転し、弱気だった。
それこそ、か弱い少女のように。あんなに小さくなられては、俺は。
「メサイア……」
俺は、メサイアを優しく抱きしめた。
――な~んてなァ!
そんな風に見せかけて……『女神専用』のスキルツリーを勝手に覗きこんだ!!
……やはり!!
コイツのスキル……何かがずっと発動しっぱなしだ。それを見ると――
【 インフィニティ・オーディール 】とあった。
効果は『一度発動すると、一定の範囲の時間で世界を永遠にループさせる。ループ時間はスキルレベルによる』とあった。――なんだよ、これ! ループだって? どうして、そんなもんが勝手に発動しているんだ……! 俺の【オートスキル】じゃあるまいし。
運命の悪戯か?
それとも、神の気まぐれか。
何にしても、このスキルを止めねば。俺たち――いや、この世界は永遠にループし続けることになる。つまり、未来は永遠に閉ざされており、似たような日常を過ごすだけで、バッドエンドを迎えるのだ。
ヤバすぎる……!
だがまてよ。思い出せ。
アヴァロンの運命はいつもどうなっていた!?
炎に焼かれ、滅びていた。
ああ……そうだ。それがアヴァロンの終焉だった。
俺は少しずつだが、夢が確信に変わっていたんだ。そのトリガーは、先ほどのメサイアのスキルだ。偶然か分からんが、発端はスキル。滅びゆく運命だった、あの何千回、何万回も見た夢はホンモノだった。
だが、スキルのおかげで何度も繰り返した。
そんな中でデジャヴとして蓄積された記憶が色濃くなってきて、どこかで『違和感』として覚えていたんだろうな。
つまりアレだ、これは今の俺に与えられた『最後のチャンス』という事に他ならない。……そう。俺は、あの悪夢……赤い月の運命を今なら変えられるのだ。――だったら、やるしかないだろう!
今日こそアヴァロンに希望を、活路を見出してやる。
「メサイア! 運命を変えられるぞ!!」
「運命? いきなり何のことよ。あんた、おかしくなっちゃったの?」
「違うよ。さっきお前が言っていたじゃないか、このエルフの郷・アヴァロンを救うんだよ! それと、軍も壊滅できるかもしれないぞ」
「え、コンスタンティン軍を?」
「ああ……それにはメサイア、お前が必要だ。いいな」
「……そ、そんな期待されたら仕方ないわね。いいわ。あんたと私の仲だものね。今回ばかりは運命の女神になってあげるわ」
ニヤリと笑うメサイア。
……なんかそれいいな。
運命の女神ね。……へえ、いいじゃないか!
最後に笑うのは、俺と女神というわけだ。
さあ……はじめよう。
アヴァロンの救済を!
俺は、メサイアを呼び出した。
なぜか呼び出したくてたまらなかった。
なんでだろう? 分からん。
「メサイア、俺はどうかしちまったかもしれん」
「そうね、否定はしないわ。あんた、どこかおかしい」
「おい。そこは普通、心配するところだろうが!」
「正気とは思えないわね。もちろん、私もね……」
「なんだ、お前もどこか変なのか? また死神に戻りつつあるとかは勘弁してくれよ」
「それはないわ。ただ……」
「ただ……?」
メサイアはどこか遠くを見つめ、腕を組むと話を続けた。
「同じ時間をずっと過ごしているような……。最近、そんな違和感とかデジャヴとか感じるのね」
「マジか……お前もか。俺もだ。俺は、アレが夢ではないかと思っているが。けど、とてもリアルな夢でな。アヴァロンが必ず滅びるんだ。それも毎度、炎に包まれて――それで――」
「……滅び」
そう短くメサイアは反応を示した。
それから、俺を真っ直ぐ見た。かなり真剣に。
「私は違う」
「へ? 違うとは?」
「このアヴァロンを救う夢を見るの。でも、救うのは私じゃない。あんたよ、サトル。あんたが皆を導いていたの」
「……俺? つってもな、現状のアヴァロンで何が起こっているのかさえ分からんぞ。しかも、それは夢。朧げな、漠然としたものだぞ。そんな曖昧なものを信じていいものか……」
「確かなことは分からない。けどね、これだけは分かるの。私自身にも何か起きているような気がする……。サトル、私、こわい……」
――と、メサイアは、いつもの強気とは一転し、弱気だった。
それこそ、か弱い少女のように。あんなに小さくなられては、俺は。
「メサイア……」
俺は、メサイアを優しく抱きしめた。
――な~んてなァ!
そんな風に見せかけて……『女神専用』のスキルツリーを勝手に覗きこんだ!!
……やはり!!
コイツのスキル……何かがずっと発動しっぱなしだ。それを見ると――
【 インフィニティ・オーディール 】とあった。
効果は『一度発動すると、一定の範囲の時間で世界を永遠にループさせる。ループ時間はスキルレベルによる』とあった。――なんだよ、これ! ループだって? どうして、そんなもんが勝手に発動しているんだ……! 俺の【オートスキル】じゃあるまいし。
運命の悪戯か?
それとも、神の気まぐれか。
何にしても、このスキルを止めねば。俺たち――いや、この世界は永遠にループし続けることになる。つまり、未来は永遠に閉ざされており、似たような日常を過ごすだけで、バッドエンドを迎えるのだ。
ヤバすぎる……!
だがまてよ。思い出せ。
アヴァロンの運命はいつもどうなっていた!?
炎に焼かれ、滅びていた。
ああ……そうだ。それがアヴァロンの終焉だった。
俺は少しずつだが、夢が確信に変わっていたんだ。そのトリガーは、先ほどのメサイアのスキルだ。偶然か分からんが、発端はスキル。滅びゆく運命だった、あの何千回、何万回も見た夢はホンモノだった。
だが、スキルのおかげで何度も繰り返した。
そんな中でデジャヴとして蓄積された記憶が色濃くなってきて、どこかで『違和感』として覚えていたんだろうな。
つまりアレだ、これは今の俺に与えられた『最後のチャンス』という事に他ならない。……そう。俺は、あの悪夢……赤い月の運命を今なら変えられるのだ。――だったら、やるしかないだろう!
今日こそアヴァロンに希望を、活路を見出してやる。
「メサイア! 運命を変えられるぞ!!」
「運命? いきなり何のことよ。あんた、おかしくなっちゃったの?」
「違うよ。さっきお前が言っていたじゃないか、このエルフの郷・アヴァロンを救うんだよ! それと、軍も壊滅できるかもしれないぞ」
「え、コンスタンティン軍を?」
「ああ……それにはメサイア、お前が必要だ。いいな」
「……そ、そんな期待されたら仕方ないわね。いいわ。あんたと私の仲だものね。今回ばかりは運命の女神になってあげるわ」
ニヤリと笑うメサイア。
……なんかそれいいな。
運命の女神ね。……へえ、いいじゃないか!
最後に笑うのは、俺と女神というわけだ。
さあ……はじめよう。
アヴァロンの救済を!
0
お気に入りに追加
1,251
あなたにおすすめの小説
無限初回ログインボーナスを貰い続けて三年 ~辺境伯となり辺境領地生活~
桜井正宗
ファンタジー
元恋人に騙され、捨てられたケイオス帝国出身の少年・アビスは絶望していた。資産を奪われ、何もかも失ったからだ。
仕方なく、冒険者を志すが道半ばで死にかける。そこで大聖女のローザと出会う。幼少の頃、彼女から『無限初回ログインボーナス』を授かっていた事実が発覚。アビスは、三年間もの間に多くのログインボーナスを受け取っていた。今まで気づかず生活を送っていたのだ。
気づけばSSS級の武具アイテムであふれかえっていた。最強となったアビスは、アイテムの受け取りを拒絶――!?
無人島Lv.9999 無人島開発スキルで最強の島国を作り上げてスローライフ
桜井正宗
ファンタジー
帝国の第三皇子・ラスティは“無能”を宣告されドヴォルザーク帝国を追放される。しかし皇子が消えた途端、帝国がなぜか不思議な力によって破滅の道へ進む。周辺国や全世界を巻き込み次々と崩壊していく。
ラスティは“謎の声”により無人島へ飛ばされ定住。これまた不思議な能力【無人島開発】で無人島のレベルをアップ。世界最強の国に変えていく。その噂が広がると世界の国々から同盟要請や援助が殺到するも、もう遅かった。ラスティは、信頼できる仲間を手に入れていたのだ。彼らと共にスローライフを送るのであった。
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
とあるオタが勇者召喚に巻き込まれた件~イレギュラーバグチートスキルで異世界漫遊~
剣伎 竜星
ファンタジー
仕事の修羅場を乗り越えて、徹夜明けもなんのその、年2回ある有○の戦場を駆けた夏。長期休暇を取得し、自宅に引きこもって戦利品を堪能すべく、帰宅の途上で食材を購入して後はただ帰るだけだった。しかし、学生4人組とすれ違ったと思ったら、俺はスマホの電波が届かない中世ヨーロッパと思しき建築物の複雑な幾何学模様の上にいた。学生4人組とともに。やってきた召喚者と思しき王女様達の魔族侵略の話を聞いて、俺は察した。これあかん系異世界勇者召喚だと。しかも、どうやら肝心の勇者は学生4人組みの方で俺は巻き込まれた一般人らしい。【鑑定】や【空間収納】といった鉄板スキルを保有して、とんでもないバグと思えるチートスキルいるが、違うらしい。そして、安定の「元の世界に帰る方法」は不明→絶望的な難易度。勇者系の称号がないとわかると王女達は掌返しをして俺を奴隷扱いするのは必至。1人を除いて学生共も俺を馬鹿にしだしたので俺は迷惑料を(強制的に)もらって早々に国を脱出し、この異世界をチートスキルを駆使して漫遊することにした。※10話前後までスタート地点の王城での話になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる